「僕の彼女なんだからボクと休日を過ごすのが当たり前じゃないか!」
誰だコイツ。知らねぇよ、俺はこんな奴。つか、こいつ今なんて言った。隣にいるもなを見る。その行為がこんなにも恐ろしいと思ったのは初めてだ。そして見たものはもっと恐ろしいと思った。今までにないほど冷め切った目。あのさ。ゆっくりともなが口を開く。その先を聞くのが恐ろしいとさえ俺は思った。恋人だからってどうして優先されるの?今日私が約束していたのは彼なの。あなたじゃない。恋人とかそういうのどうだっていいけど、私生活まで干渉して来るって言うなら今すぐ恋人なんて解消する。もながそういうと男は慌てて謝り始める。もう二度としないから。というともなは大きくため息をついて。わかった。だからかえって。そう短くいう。男はその言葉に従い素直に姿を消した。
「なぁ、今の誰?恋人ってどういうことだよ?」
俺がそう聞くともなは困った顔をする。その顔が何を意味しているのかながいつきあいだからわかるさ。聞いて欲しくないんだろ。でも今回はそういうわけにはいかねぇだろ。恋人って、お前、今まで一度だって言わなかったじゃねぇかよ。できたなんて。好きな奴だって、出来たなんて聞いてねぇ。お前いつだって俺に言えって言っただろ。それなら自分もできたら言うのが当たり前だろ?
「恋人、なんだよ。あの人。私の」
「今ままでそんなこと一言も言ってねーだろ。お前、散々俺には恋人ができたら言えって言っといてなんだよそれ」
「そうだよね。恋人のいる人がほかの異性といるのはよくないよね。ごめん、黙ってて。すぐに荷物まとめて出てくよ」
ほんとにごめんね。もなはそう謝ると今来た道をもどろうとする。待てよ。慌てて手を掴むともなは困った顔をして俺を見る。その顔が少し泣きそうに見えた。この顔はなにか罪悪感があるとき。怒られる。そう思って泣きそうな顔。つまり怒られるようなことをしたってことだ。俺に黙ってたことがその顔をさせたのか。それともほかのなにかか。出てかなくていいから。俺がそう言うともなは驚いた顔をして目を開く。話さなくていい。俺もこれ以上お前に聞かない。その代わり家を出てくな。俺がはっきりそう言うともなは困った顔をして目をそらす。俺は無理やり視線を合わせてもう一度出て行くな。と強く言う。そしたらもなは泣きそうな顔をしてありがとう。なんて言った。
聞きたいことなんて山とある。恋人ってどういうことだよ、とかほんとそういうこと。でも今俺にとって重要なのはもなが俺のそばを離れないこと。あんなボッとでの男なんかに渡せるかよ。そうじゃなくても、誰であろうとも渡せるわけねぇだろ。だから今は別にいい。お前に聞かなくたって、自分で調べることはできる。記憶力には自信があんだよ。あの顔、必ずどこのどいつか見つけ出してやる。少し冷静になれば聞かなくたってわかることがある。もなは本当に好きな相手にあんな対応をしない。今までひとつも話に出てこなかったような奴。急に現れたやつをいきなり好きになるような奴でもない。なにか必ずある。とにかく、あの男はもなの恋愛対象じゃねぇ。好きな相手じゃねぇよ。絶対。なにか事情があるんだ。ちゃんと冷静になれ俺。焦るな。焦ったら、何もうまくいかねぇ
ぎゅっと公衆の面前ということも気にせずもなを抱きしめた
「御幸がもっと馬鹿だったらよかったのに」
そう小さくもながつぶやいた


聞こえないで

prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -