興味はなかった。春市との会話にたまに出てくるたまに出てくる女。誰かと聞けばとても恩のある相手だと言われた。でもそれ以上深く聞こうとは思わなかった。聞く必要も感じなかった。一生会うこともないだろう相手を知る必要もない。倉持との会話にもその女の名前が出てくることはあった。素直に倉持がいうことはないけど倉持にとって大切な友達だってことは聞いていればわかった。珍しい。そう思った。沢村の口からも聞いたことがあった。クリスに話してるのを。あの女の名前を連呼し、よくわからないことを話していた。理解したのは餌付けされているということ。そこまでの印象は面倒そうな女。別にいい意味でも悪い意味でもない。ひとつの感想みたいなもんだ
初めてその女、久留野もなに会った時は驚いた。俺に嘘つくなんていい度胸だ。まさか話に聞いていた女があの御幸の女だとは思ってなかった。そうとわかれば興味はわく。あの御幸をどうやって落としたのかぜひ聞きたいね。というか、御幸もなんも報告しないなんて先輩なめてるね。後でいじめてやるか。
御幸の話を聞いたあと、久留野は改めて俺たち全員に紹介された。満面の笑みを浮かべるその顔は御幸が帰る前までとは違う。なんだ。やっぱ両思いなのか。つまんないなぁ。それから余計に久留野の話を倉持がするようになった。お前が好きなの。って聴きたくなるくらいに。でも違うことはよくわかっていたね。嬉しそうに話してる目は俺たちに向けるものに近かった。つまり倉持にとっては仲間みたいなものなんだと思う。でも久留野はあんまり倉持に深い話をしなさそうだ。この間の御幸の家に住んでることも知らなかったみたいだし。信頼関係が薄いのだろうか。でもその割にはよく飯に行って倉持のところに泊まったりもしてる。そういうことを聞けば信頼関係はあるように思えたんだけどね。俺の思い違いだったかな?
仕事帰りに道を歩いていると夜に出歩くにはふさわしくない格好をした女を見つけた。しかも裸足だし。逃げ出してきたって感じ丸出し。興味本位でその女の顔を見ると忘れるはずもない、あいつだった。あれ。お前この間の・・・。俺がそう声をかけるとわかりやすいくらい困った顔をしてどうやって俺から逃れるかを考えている。それが気に食わなかったから無理やり家にまで連れてきてみれば倉持と喧嘩したって。子供じゃあるまいし、そんなことで飛び出したりするな。と言いたいところだったけど今回ばかりは黙っておいた。何を聞いても自分のせい自分のせい、うっとおしい。そういう自虐的なタイプとか俺嫌いなんだよ。イライラしてすでに追い出すかどうか悩んでいたらふと前に倉持が言っていたことを思い出す。

「あいつすんげぇ素直つうか純粋っていうか、馬鹿なのに大事なところでそうじゃないんすよ」
「なにそれ。意味わからないんだけど」
「いや、俺にもよくわからないんすけど・・・。いつも無駄に元気なくせにたまに自虐的で」
「俺そういうタイプ嫌いだな」
「俺もっすよ。でも、あいつのは何か違うんですよ。まぁ面倒なのは変わらないんっすけど、それは違うって、あいつに教えてやりたくなるんすよ」
「へぇ。俺はならないね」
「まぁ、なんっつうか。俺好きなんすよ。あいつが笑ってんの。結構癒されますよ?悩んでることも馬鹿に思えるくらい。一度見てみればわかりますって」

別に倉持の言ったことを信じているわけでも見たいと思ったわけでもないけど、一応可愛い後輩も困ってるわけだし。そうおもって俺は我慢して久留野の話を聞いた。それで。それで。何度も俺がそう言い続ければ久留野はだんだんと困った顔をする。面倒になってチョップをすれば痛かったのか涙目になっていた。いじめがいがあるね。それからしばらく話してみたけど久留野はちっとも笑わない。これ以上は無駄か。と思い無理やり担いでベッドに放り投げた。非難の声も上がる前に部屋を出てすぐに御幸に連絡をして事情を説明する。最初こそ迎えに行くと譲らなかったが俺が先輩の権限を使って強く言えば御幸はしぶしぶ退いた。それからすぐに倉持に電話をして一方的な約束を取り付けて電話を切って。もう一度久留野の様子を見に行く。すると以外にも久留野はすんなりと眠っていた。まだ暴れるかと思ったのに。そう思いながら顔を覗き込むとすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。その顔を見てるとなんとなく体の奥でふわっとした何かを感じた。間抜けな顔。思いっきり鼻を摘めば眉間にシワがよる。だんだんとうなされ出すをのを
みて俺は機嫌をよくして部屋を出ていった



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