ボンボンに仲間が欲しいよな!なんて純さんが言い出してボンボンにはぴちこよとアホ丸出しな名前のついたひよこが仲間に加わった。それ以来もなと純さんはメル友になったらしいのだが・・・。きゃー。ボンボン天使!きゃっきゃ嬉しそうに携帯を見つめることすでに30分。晩飯の後、俺の独占時間はすべてボンボンとぴちこよに奪われていた。もとい、純さんに奪われていたのだ。うはは。うはは。可愛すぎ。もうなんだこいつぅ。なんて画面に向かって言うなんて相当やばい。お前今最高にキモいことなってんぞ。と俺が優しさで忠告してやるけどもなは一切反応しない。つまんねぇ。前なら俺がなにかちょっと言えば直ぐにガミガミ怒ったり喜んだりしたのに。
半分やけになって構え。ともなの膝に頭を倒れ込ませると頭にぽんぽんと優しく手が乗る。ちらりともなを見ればまだ目は画面に奪われているものの片手は奪い返すことに成功した。こっちを見るように腹をつついたりつまんだりすれば目を向けられずにオデコをぺしっと軽く叩かれる。これじゃ反応薄いな。んじゃ、こっちだったらどうだ。ペロリともなの太ももを舐めるとえも言えぬ感触にもなはひっ。と短い悲鳴を上げる。
そしてやっとその目は俺に向けられた。奪還成功。なにやってんのよ。と不機嫌な顔をして言われたらもなをひよこから奪い返してんの。と答える。そしたらもなはきょとんとした顔をして次にはくすくすと笑っていた。そんなに寂しかったの。完全に子供扱い。
でもいい。それでもながちゃんと俺を見てくれるなら。ひよこに奪われないならな。
よしよしと頭を撫でられれば少しはむっとなるものの案外気持ちのいいもので身を任せる。耳掃除でもしようか。ぐさっと。おい、今の単語おかしいだろ。私人の耳掃除して鼓膜破ったことあるの。え?それまじ?冗談?さて、どっちでしょう。それは御幸の耳で答えを明かしましょう。やめて。なんか怖い。怖いからやめよう。あら。構って欲しかったんじゃないの?普通に構うだけでいいんだよ。そんな危ないことしなくていいから。な?な?!えへへ。そんな頼まれちゃ仕方ないなぁ。さ。耳を出しなさい。ちょ、まじで怖いからやめようよそれは。
慌てて両手で耳をガードするともなはニンマリと笑って俺の脇に手を差し込んでこしょばしてくる。だが残念。俺にはきかねぇんだな。これが。それがわかったのかもなはつまらなそうな顔をしてむすっと口を尖らした。つまんない。ついにはそんな言葉まで言われた。そういうお前だってきかねーじゃん。こしょばしのプロの人のだったら聞くよ。どんなプロだよ。ほんとにすごい人はすごいよ。手がこう、うにゃぐにゃふにゃみたいに気持ちわるいくらいに動くの。どんな手だよ。神がかってるの。なんて意味のない話。だけどそんな話をするのが俺は案外好きだった。
そういえば純さんから聞いたの。何を?青道のときの話。ああ。お前好きだな、それ。うん、好きだよ。・・・。なんでそんな好きなわけ?そこまで興味を持つ理由が俺にはわからなかった。野球が特別好きなわけでもない。青道に特に思い入れがあるわけでもない。それなのにもなはとにかく青道が好きだった。これを不思議に思わずにいられるわけがない。羨ましいなぁ。って思うの。は?何かに一直線になれる人が。高校生のうちにそんなものを見つけれて、それだけに打ち込んできた人たちのことかっこいいなぁ。って思う。あまり俺には考えつかない考えだった。だって、俺にとってそれは当たり前のようなものだったからだ。
私の同期の人は、みんな何か一つを続けることもなくて。ちょっとおしゃれに走ってみたり。部活サボってみたり。ある意味高校生らしい高校生だけど、すごく残念でさ。だから、それが出来た青道の人達のこと、すごく尊敬する。そんな風に、私もなりたいなぁ。って思える。
考えてみたこともなかった。そんなこと。
すごく尊敬できる先輩たちで羨ましい。その言葉だけは俺にもよく理解できた。



あんな人になりたい

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