ただいま。そう声をかけて家に帰るとすでに御幸が帰っていたらしくおかえり。と声をかけられる。すぐに晩御飯作るね。といってエプロンをつけようとすると御幸に腕を掴まれた。何かあった?心配そうな顔をして私をまっすぐ見つめる。私は首と縦にこくりと頷かせた。俺に話せること?と聞かれたら首を横に振る。御幸は大きくため息をついて今日はゆっくり休んでていいよ。といって私からエプロンを外して自分に付ける。小さいのな。人のエプロンを勝手につけて文句を言うな。と小さな声で文句をいえばニカっと御幸は笑う。わかってる。これは御幸の優しさだって。甘えちゃいけないのもわかってる。けど、頭の中がパンパンでおかしくなりそうだ。はい、お待たせ。そう言って御幸が作ってくれたのはチャーハンだった。男料理だというのんに見た目もきれい。さすがは御幸というべきだ。倉持の料理とは大違いだね。なんて言うとお前食ったことあんの?!と驚かれる。まぁ、たまに栄純君と3人で倉持のところに泊まるとき朝ごはん作ってくれたりするんだよね。晩ご飯担当は私で。お昼は栄純君。そのよくわからない担当が出来てた。そういえば栄純君のご飯はいろんな意味で豪快だった。最初の頃はとてつもない味がした。あれは最終的に私が改良して食べたっけ。でも栄純君の頑張った感じがしてそれはそれで良かったって覚えてる。何があったのかさ、俺は知らねぇし。言いたくねぇなら聞かねぇよ。だけど考えても考えてもダメな時は、ちょっとは俺に甘えたってもいいんだぜ。少し、もたれかかるくらい。頑張ってる証拠なんだから。御幸はいつも私に逃げ道を用意してくれる。休憩場所を用意してくれる。いつもいつもそれに私は甘えていた。けど、今回はダメな気がする。だって、これは何時ものとは違うもん。終わってから、肩貸して。なんて言うと御幸は少しだけ驚いてまた豪快に笑う。はっはっは。まったく、お前ってやつは。そういって私の頭を優しくわしゃわしゃと撫でる。頑張れよ。その言葉が一番の励みになる。
ベッドに入っても朝起きてもずっとずっと考えた。それこそ知恵熱が出るくらい。どれだけ考えても分かることは、私は恋愛対象として後輩君のことを好きじゃないということ。そう見ていなかった。というのもあるけれど、もっと違う。根本的な何か。言うならば決定的な何かがかけているんだ。以前御幸に言われたことがある。Loveとlikeは違う。これから、そうやって彼を見れるかって考えてみても無理だった。すごくいい人だよ。私生まれて初めてちゃんとした人に告白された。ううん、すごくいい人に告白された。こんな機会二度とないかもしれない。だけど、だけどどうしてもそうじゃないんだ。理由なんてない。ただ彼が本気でぶつかってくれたのだから私も本気でぶつかりたい。だからお試しなんてこともしたくない。愛も恋もわからないおこちゃまな私だけど、そういうことだけはちゃんとしたい。
あの告白から三日後、私は後輩君をあの日逃げ込んだ人通りの少ない場所に連れてくる。話すならここがいいと思った。なんとなくだけど。私が何かを言おうと口を開こうとすると待って。と後輩君に止められる。俺、本当に先輩のこと好きなんです。だから付き合ってください。まっすぐ見つめられる。胸が痛い。息が苦しい。でも、ここで逃げるな。逃げていいところじゃない。私は、私はとても臆病で初めから逃げてしまった。本当にごめんなさい。好きになってくれてありがとう。本当に、本当に嬉しかった。けど、ごめんなさい。後輩君の気持ちには、こたえられない。はっきりそう告げると後輩君はわかっていたかのようにそうですか。といって穏やかな表情を浮かべる。振られるのは分かってました。だって先輩、ほんと俺のこと全然そういう目で見ないし、きっと見ても俺に対してそういう気持ちは抱かないだろうってどこかでわかってた。けど、けど・・・ちゃんと伝えたかった。ありがとうございます先輩。ちゃんと考えてくれて。そう言って笑ってくれた後輩君がどれだけの勇気を持ってそんな事を言ってくれたのだろうか。私はちゃんと、彼の気持ちに正直でいられただろうか。先輩。最後に抱きしめさせてください。え。えっと。嘘ですよ。というかそこでいいよなんて言ったら怒ってますよ。よ、よかった。言わなくて。はは。ほんと押しには弱い人ですよね。そ、そんなつもりはないんだけれど・・・。つい・・・。だめっすよ。先輩ほんと馬鹿なんだから、相手を押すような気持ちでいないと。むしろ押し倒す位がちょうどいいんじゃないですか。想像つかないですけど。そういって後輩君は勝手に笑う。先輩、先輩から先に帰ってくれないですか。わかった。ゆっくり、ゆっくり私は自分の足を後ろに下げる。5メートルくらいの距離ができてもう一度後輩君の顔を見ようとすると彼は顔を伏せてしまっていた。あのさ!思いっきりそう叫ぶと反射的に後輩君は顔を上げる。私が後悔するくらいいい男になってよ!俺が一番輝く星だぜなんて馬鹿な言えるくらい。私がそう言うと後輩君は驚いた顔をしてすぐに声を出して笑った。またね。そう言って今度こそ背を向けて走り出した



この世界で一番輝いた

prev next

 

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -