今日は御幸が帰ってくる。そう思うと結構ウキウキした気持ちになる。ひとりじゃない家は久しぶりだからね。この時期は倉持も栄純君も春市くんも降谷くんも忙しいからあんまり遊べないし。ほかの友達だって仕事が忙しい。なんたって夏。イベント盛り沢山だからね。先輩。荷物をまとめていると後輩君から声をかけられる。どうしたの?と聞き返すと今日夕飯一緒にどうっすか。と聞かれたのでごめん。と謝る。今日はあの人帰ってくるから。というと後輩君は少しだけぶすっとした顔をする。そんなにその人のこと大事なんですか。なんて聞かれればまぁ大事だね。と即答する。なんだかんだで付き合い長いし、いざってとき助けてくれるし。それになにより、あの人見てると頑張れるんだよね。素直な気持ちを言うと先輩あの人のこと恋愛対象として好きなんですか。と聞かれた。随分はっきりと無粋な事を聞くんだね。私がそう言うと後輩君は驚いた顔をして一歩後ろに下がる。たぶん声で分かったんだと思う。私が少し怒ったことを。私ね、ずかずかと興味本位だけでそういうこと聞く人嫌いなの。女子とかでもよくあることだ。誰々ちゃんってあの人のこと好きなんだって。なんて他人のこと語るのは勝手だ。だけどそれを本人に言ったり、こういう風試すようにに聞く奴は嫌い。興味本位で、人の恋愛に鑑賞して欲しくない。噂話だけならまだいいよ。でも、これはそうじゃないでしょ。そのまま黙ってしまった後輩くんに背を向けてお疲れ様でした。といって仕事場を出る。駅のホームについて改札口を潜ろうかと思っていたときまた先輩。と呼び止められる。振り返るとそこにはまた後輩君がいた。
「興味本位なんかじゃない。興味本位で、茶化すような気持ちで聞いたわけじゃない!」
「ちょ、ここ公共の場だし。声小さくし」
「俺は先輩のことが好きです!だから、俺とのこと真剣に考えてくださいっ」
周りが一瞬静まってすぐに茶化すような声がいくつか上がる。私は素晴く後輩君の手を取って駅を出て人通りの少ない場所まで出てきた。少し走っただけでも息が荒れる。半分は運動不足。半分は、たぶん緊張のせい。どうして、あんな場所で言ったの。今言わないと、ダメだって思いました。だからって、公共の場よ。きっと先輩が嫌がるだろうって思いました。だけど、だけど今じゃないときっと先輩、本気で受け止めてくれないから。この間、先輩俺に予防線貼りましたよね。先輩のことどう思ってるって。そんなのずるいじゃないですか。あんなときに言えるわけないじゃないですか。ああ、そうか。後輩君だってずいぶんと無粋なことをしたけれど、その前に無粋なことをしたのは私だ。勝手に予防線貼って、ずるをした。あれこそ、最低な行為だったのに。逃げたんだ。怖かったから。もし、あの言葉の続きを聞いてしまっていたら、なんて考えると怖かったから。今の関係は随分と居心地が良かったものね。年上ぶってるくせに、肝心なところでいつまでも私って成長できないなぁ。ごめんね。そう謝った。それって脈なしってことですか。そうじゃない。ずるしてごめんね。先にそっちを謝らせて。私がそう言うと後輩君は驚いた顔をして私を見る。少し、少しでいいから。成長していかないと。怯えてばかりじゃ、何も変わらない
後輩君のこと、一度真剣に考えたい。答えがどうであっても。もし後輩君がそれでもいいって言うなら、少し待っていて欲しい。そうお願いをすると後輩君は少し照れたように笑って先輩の、そうやって自分の失敗をちゃんと見つめ直して。やり直そうってするところ。好きなんです。なんて言い出す。この子狙ってやってるのかな。流石に私まで恥ずかしくなって赤面してしまう。あ、先輩の赤面初めて見ました。うるさいな!慣れてないんだよ!俺も慣れてないっすよ。いつもコクられる側だったから。だから、すごく緊張してるですけど。ゆっくりと後輩君は私の手をとって自分の胸に当てる。どくん。どくん。大きく脈打つ心臓。強く、早く、荒れている。よく彼の言っている意味が分かるほどに。
待ってます。答えがどっちでも待ってます。だから、ちゃんと考えてくださいね。後輩君とはその言葉を最後にその日はそこで別れた。私の頭にはずっと駅での告白された場面ばかり浮かんでいた



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