どういうことだ御幸。眉間にシワを寄せて問い詰めてくる倉持。その周りに高校時代の先輩たち。これほんとどういう状況なんだろな。なんて現実逃避をしてみたが、そうはいかなさそうだ。なにせこの人たちこういうこと根掘り葉掘り全部効くタイプだから。とりあえず先輩たちにはもなの説明からすることにした。名前、出会った経緯。それで今この家にいる理由を端折りながら話す。途中で倉持が部屋を飛び出してもなに怒鳴りに行ったのを慌てて小湊が回収しに行った。話を聞き終えれば先輩たちはそれぞれに考える素振りを見せてとりあえず彼女ではないんだな?と哲さんに聞かれたのでまぁ、今は違います。と答える。だけど、あれは誰にも渡しませんよ。とここで宣言するとそこにいた全員が俺を見てまたか。と呆れた顔をする。自信有りすぎだろ。と言われたがそりゃあるに決まってる。今一番あいつに近いのは俺だ。それに同居までしてるんだ。ここからは時間の問題だ。ただ俺が今気強く粘れるか、だ。そのことももちろん自信があるけどな。はっはっは。なにせ俺だからな。ご飯よ〜。と呼ばれ。おう。今行くと返事を返してもう一度今の状況を考える。なんで先輩たちいるんすか?今更ながらに聞けばまた呆れた顔をされる。はっはっは。最初聞こうと思ったけどすぐにもなのこと思い出しちまってっ聞きそびれてわすれてたんだよな。久々にみんなで集まろうという話になってな。一番多忙そうなお前にサプライズでもするか、という話になった。と実に丁寧にクリス先輩が教えてくれた。まさかこんな形でもなを紹介する羽目になるとは思っていなかったけど、まぁいいか。どうせいつかは会ってただろうし。リビングに戻ると沢村ともなが楽しそうに寄り添いながら飯の準備をしていた。その光景にイラっとしているともなが俺が来たことに気づいたのかにこっと笑って御幸のリクエストのデザートもあるよ。といった。あ、あれほんとに作ってくれてたのか。ただ単にあんまり今もなを家の外に出したくなかっただけなんだけどな。こんなこと言ったら絶対こいつ怒るだろうから言わねぇけど。倉持はまたもなのそばに行って説教を始める。もなは苦笑しながら倉持におかずをよそっていた。おい、それいつも俺の定位置。そんなことを考えていると沢村がもなさん!と叫んでぐいぐいと手を引っ張りクリス先輩のもとに連れて行く。この方が俺の師匠です!なんて自慢げにクリス先輩のカッコいいところを語りだすともなはふふ。と笑い、沢村の頭を撫でた。そしてクリス先輩に初めまして、もなです。と挨拶をする。クリス先輩も同じように挨拶をするとまた沢村が話し出す。今度はもなのことについて。なんとなくだけどクリス先輩ともなが沢村に向ける視線が同じ気がする。まるで我が子を見守るような目・・・。って、そしたらクリス先輩ともなが夫婦ってことになってるし。ダメダメ、あいつの夫が俺以外の誰かとか。もな、と俺が呼ぶともなは振り返ってどうしたの?と小首をかしげる。先輩たち紹介するから来い。なんて言い訳。俺のそばに来て欲しかっただけだ。そんなことも知らずにもなは嬉しそうに俺の隣に並んで全員に向かって自己紹介をする。きっちり俺とは付き合ってないといつものように言っていたが、今更そんなこと気にしない。今は確かに付き合ってないしな。先輩を準々に紹介していくと沢村からいくつか話を聞いていたらしくときおり目を輝かせていた。ああ、そういやこいつ青道のファンなんだっけ。
「これで全員紹介終わったな」
俺が一息つくともながせっかくだから乾杯しようといって冷蔵庫から冷えたビールを持ってくる。ひとりひとりにビールを配り、それぞれがプシュッと気持ちのいい音を立てて缶を開ける。それじゃ、乾杯だな。哲さんの声に合わせてみんなで一斉に乾杯と騒ぐ。それぞれ自分で皿を持って机の上にな食べられた料理をつまんで飲んで、立食会というほどおしゃれではない。なにせ野郎どもばっかだしな。ただそんな洒落たものじゃないけど、おれはこういう方が好きだと思った。
「ほらもなさん!すごいでしょう?!師匠すごいでしょう?!」
「ほ、ほんとだね!ホントにすごいね!」
騒いでいるもなの声が聞こえて視線を変えると思わずビールを吹き出しそうになる。なぜならあいつら馬鹿二人はクリス先輩の筋肉をモミモミと触っているからだ。ちょ、お前ら何やってんだよ!慌てて止めに入るともなは俺の腕をじっと見る。そしてはっ。と鼻で笑いやがった。このやろう。そう思ってもなの二の腕の肉をむにっと摘むと肉つまむな!と怒られる。堂々と肉って言うなよ。つかまた太った?なんて聞くと栄純くんと沢村に泣きつく(なくフリだけど)。って、まて。今なんつった?え、いじゅんくん?驚いて思わずその言葉を口にすると御幸が呼ぶと気持ちわりぃから呼ぶな!と沢村が怒るがそんなことどうでもいい。沢村の背中からかおをひょっこりと出してもなはにやりと笑う。栄純くんと私すっごい仲良しだもん。羨ましいでしょ?的外れな勘違いをして優越感に浸るもなにデコピンを食らわすまであと、0.1秒。


0. 1秒

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