結局家に戻ってきて不満げな倉持が逃がさんと言わんばかりに調理中ずっと隣に立っていた。確かにただの友人が家主留守の時に遊びに来てるとか説明つかないよね。家政婦してます。とか私を知ってる人たちにいっても通じるような嘘じゃない。ちらりとリビングを見るとそれぞれが好き勝手にやっていた。栄純くんはひたすら一人の男の人にくっついていた。可愛いな。羨ましいよ、あの人。あんなになつかれちゃって。途中で春市くんが手伝います。と言ってくれたけどこれは私の仕事だから。といって断ると洗い物くらいはします。といって結局手伝ってもらうことに。そのおかげで料理は案外スムーズに作れた。盛り付けを春市くんと楽しんでいる最中に家の鍵がガチャガチャと動く音がする。その音を聞いた瞬間最初に来た人達のほとんどの人と倉持が玄関に走っていく。そしてすぐにどういうことだ御幸?!と叫ぶ声が聞こえた。え?!なんで先輩たちがいるんすか?!と驚いた声を上げている。かと思えばすんません!と叫んで御幸は急いで家の中に入ってきた。お帰りなさい。と声をかけるのと同時に両方を掴まれて大丈夫か?!と聞かれる。意味がよくわからなかったけどとりあえずこくりと頷くと御幸はほっと胸をなでおろした。怖かっただろ。ごめんな。そう言ってぽんぽんと頭を撫でられる。子供じゃないんですけど。でもそのおかげでちょっとだけ安心したのは秘密だ。お前、先輩を差し置いて女のところに一直線とはいい度胸してんな。なんてヒゲの人から御幸は怒られるがいつものように上手くかわそうとしていた。これが、御幸の先輩たちか。御幸はちらっと私の方を見ると既にとなりに来ている倉持を見つけてすぐに私のそばから引き離す。何すんだよ。と怒る倉持に今こいつに近づくな。と御幸は少し低めの声で言う。まさか、御幸この前の変質者のせいで私が少しだけ男の人が苦手になっていることに気づいたのだろうか。でもそれは知らない人だけで、知ってる人は大丈夫なのに。自分の後ろに私を隠して先輩たちからも守ってくれている。なんとなくその背中がとても大きく見えた。くいくいっと御幸の服の裾を引っ張って大丈夫だよ。というと御幸はまだ不安そうな顔をする。だけど本当に大丈夫。確かにさっきまで少しだけ怖かったけど、もう、大丈夫。御幸がいるもん。怖くないよ。その証拠と言わんばかりに春市くんと倉持の手を握って見せるとまた少しだけ困ったように笑い、頭をやさしくなでられた。そこで空気の読めない栄純くんがもなさんなにかあったんすか?と聞くので一瞬周りが静かになる。その話はまた今度ね。そう言ってにこっと笑えば栄純くんは素直に頷いた。けどほかの人がそれで許すはずもない。御幸を捕まえて奥の部屋へと消えていった。取り残された私と栄純くんは二人でとりあえず晩ご飯の盛りつけの続きをすることにした。これはどうするんすか?それはこうしたらいいの。へー。いろいろ考えてあるんすね。まぁ、一応これが仕事ですから。なんて和やかな空気でいるとスパーンと扉の音が聞こえて何事だと顔を上げれば怒った顔をした倉持がいた。そして私の前に来るとだから言ってんだろ!と怒り出す。どうやらある程度御幸から話を聞いているようだ。警戒心が薄いやらなんやら。とにかく怒鳴られる。思わずお父さん。とつぶやくと思いっきりお尻を蹴られた。いたい・・・。私女の子なのに・・・。だいたいここだって獣が住んでんだぞ?!と言われるがここ以外あてもないし。それにその獣も餌をあげていれば大人しいものだ。たぶん。まだまだ文句を言おうとする倉持を慌てて春市くんが止めに入ってくれた。そのまままた奥の部屋にズルズルと連れ込まれる。なんだろう。笑っちゃいけないところなんだけどなんだかついつい笑ってしまいそうになる。倉持先輩なんか犬みたいっすね。なんて栄純くんの言葉のせいでせっかく耐えていた笑いも漏れてしまうのであった



ガウガウ吠えないで


prev next

 

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -