仕事を終わって、携帯を見ると最近あまり会うことのなかった人からメールが来ていた
明日仕事ある?ないなら今晩一緒に飲もうよ。という飲みのお誘い
私は二つ返事で承諾したけど、彼が今どこにいるのかと悩んで返事に迷う
どこで?とメールを返すと俺んち。と短い返事が来る
それはちょっとばかし遠いけどせっかく明日も休みだし、お泊りさせてもらえるなら行ってもいいか。と自己完結してお泊まりセット持っていくと返すと駅に着いたら連絡して。と帰ってきた
とりあえずすぐに家に帰ろう。着替えを詰め込んで、お財布を持って、電車乗って
彼の家の最寄駅まで来るとすぐにメールを送る
ここで気を使わせないために後5分で付きます。と送った
「あと5分にしては早いなぁ」と声が聞こえて私は慌てて振り返れば待ち合わせしていた彼が既にそこにいた
嘘でしょ。私いま送信したばかりなんだけど
なんで、と言わんばかりの顔をしていると待ち伏せドッキリ作戦と言ってニヤニヤと笑った
ああ、やられた。彼のほうが一枚上手だったか
「てか、いつになってももなちゃんは気を使いすぎるよね。いい加減やめない?」
「ご、ごめんね。よく電車って時刻がずれたりするから着いてから連絡しようと思って」
「なら付いたって言ってくれていいのに。もう長い付き合いのにさみしーなー、俺」
全くそんな顔してないよ。ニヤニヤと笑ってるし
でももし本当に傷つけたならと思って「ごめん。次から気をつけます」と言うと彼は嬉しそうに笑った
そしてひょいっと私からカバンを奪うと歩き出す。慌てて追いかければ手を握られてまるで子供扱いだ。これでも私、同い年だし。結構しっかりもので通ってるんだけどな
何度そう言ったって彼はそうなんだ。と適当に返し私を子供扱いする
車に乗り込むとシートベルトを締めて彼の方を見る。やっぱりこの人はかっこいい。それもその筈。彼はイケメンと称される部類でも上位にいるような人だ。それに何を隠そうプロの野球選手。本当だったら私に縁もゆかりもない人
そんな人と出会ったのは高校時代していたバイトのおかげだったなぁ。と思い出す
動かすよ。と声をかけられてはっと我に返りうん。と返す
「もな最近仕事順調?」と聞かれたので「普通」と返す。だって本当にそうなんだもん
私には特別な才能なんてないし、それでも必死の努力で補っているだけ
だからといって才能にあふれる彼を妬んだりはしない。むしろ尊敬する
あれだけの才能がありながら努力を惜しまない。そんな人を僻むのは馬鹿げていると思う
そんな奴がいるなら一度自分を見つめ直せと言ってやりたいくらいだ
「じゃぁ、彼氏できた」と平然と聞いてくる彼に私は大きくため息をついて「出来てたら苦労しないよ」と返した
別に今まで恋をしたことがないわけでも、告白されたことがないわけでもない
こんな外見だろうと物好きな人に告白されることはある。そんな時友達は茶化すようにお試しで付き合えば?とか言うけど私はそういったことが苦手だった
なんで好きでもない人と付き合うのだろうか。全くの謎である
そんなことしたら気疲れで倒れるって。私これでもなれない人には気を使うし、人見知りだって激しいんだから。慣れた人でも気を使うときは気を遣う。親しき中にも礼儀有り。とはそういうことだ。
だからと言っても好きな人ができても告白する勇気なんてない。あったら今頃・・・というのはないな。うん。
可愛い子はぐいぐいいけるかもしれないが、所詮私は中の下だ。もしかしたら下の上かもしれない。そんな凡人が告白する勇気なんて持てるわけない
彼はくすりと笑って「俺も」というけどそれは作る気がないからじゃないですか?と言いたくなる。実際にモテモテなのを知っているのだ
よくネットやテレビなんかでも話題に上がっているのに、なぜこの人はそういう人を作らないのだろうか。いや、そういう人ができたら会うことが出来ないので寂しいのだけれど
彼女持ちの男の家にずかずか上がり込むほど私の神経は図太くないもん
でもいい加減そろそろ自分の幸せも考えたらいいのに。
いくら野球が好きでも、野球は恋人になれないのだから。癒してくれる、一緒に居たい。そんな人を見つけてはどうだろうか。と言えるような立場ではないので黙っておく
「行き遅れ決定かな。私」
「何言ってんの。まだ20代じゃん。しかも前半」
「だって、20代になっても彼氏ができてないんだよ?今まで一人も」
これでも知り合いとかには家庭的だし、直ぐに嫁ぐねって言われてたんだけどなぁ。なんてぼやくと彼はまたくすくすと笑う。ちょっとだけ恥ずかしくなった


無縁なものだと思います


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