俺の予想通り、もなは俺の連絡を拒否しなかった。連絡先を変えることもなかった。まぁ、携帯の番号は教えてくれなかったけどな。それでも次に会う約束がなんとか取り付けられたことに、少し安易した。はいこれ。そう言ってしょっぱなに突き出されたのは前回の金。バカでもわかるだろ。これ受け取ったらこいつ帰るって。はっはっは。と笑ってんじゃ行くか。といって俺は歩き出す。ちょっと!と文句を言うもなは俺の後ろを慌てて追いかけてきた。受け取ってよ。やだ。約束じゃない。やーだ。早く!貰ったらその辺に捨てていいし!やだってば。もう、なんなのよ!怒ったもなは俺の前に立つ。何がしたいの。キッと睨まれても全く怖くない。はっはっは。俺がもう一度笑うともなは完全に怒った顔をする。大きく息を吸うと帰る。といって背を向けだした。慌ててもなの手をつかめば思いっきりまた振りほどかれる。でも今回はそれでも諦めずにもう一度手を握った。驚いた顔をしたもなにこの間はごめん。と謝る。それまた驚いているもなにさっきの質問だけど、と言葉を続ける。
「俺はこれからもお前と会いたい。メールとかもしたい。ホテルとかそういうの全然行かなくていいから、ただたまに飲みに行ったりしたいんだ」
「・・・・随分と、態度が変わるんですね」
「あの日さ、結構いろいろむしゃくしゃしてて。で、純粋な気持ちで会いに来たもなにちょっとイラついて。八つ当たりしたんだ」
俺がそう言うともなは少し考える素振りを見せて困った顔をしてもう一度俺を見る。そしてもう一度悩み、うんうんと唸る。そしてやっと自分の中で何かが解決したのかまた俺をまっすぐ見つめる。私は、ホテルに行く気はありません。はっきりと最初にそう言われた。楽しいお話もできません。美人な友達を紹介することもできません。得することは何もありません。損することばかりだと思います。自虐的な言い方だな。なんて思ったけど口にはしなかった。それはもな自身がよくわかってそうだったから。そんなのでよければ、たまにこうやってあったり、メールしたりしてもいいです。何がもなの考えを変えたのかさっぱりわからない。だけど俺はそれでいいと即答していた。自然に笑みがこぼれる。思わずガッツポーズをとりそうなくらい。もう一度、一から友達やり直そう。そう言って差し出されたもなの手に俺は自分の手を重ねる。そしたらよろしくね、御幸くん。とやっとまた俺の名前を呼んでくれた。そのことがひどく嬉しいと思った。それからちょこちょこともなにメールして、飯くいに行って。でもおごりはダメ。割り勘方式。そこから沢村とか倉持ももなに会うようになって、今になった。
おはよう。毎朝起きたらこの声が聞こえる。そんな幸せな時間が、今だ。これがどれほどスゲェことなのか。それは自分の最初の経験で分かってるつもりだ。なにせ敬語とあなたよびされたからな。はっはっは。後ろからギュッともなを抱きしめても、振りほどかれることはない。ただ邪魔だとは言われっけど。でもそれも別にいい。こういう時間が続くなら。いやもっと、もっとこの関係を前に進めれるなら。
俺はあいにくこんなところで満足するほど欲のない人間じゃない。いつになったら満足するかなんてわからないほど、もなに対して欲がある。でもゆっくりでいい。ゆっくり、ゆっくり一緒に歩んでいけるなら、それでいい。
「御幸の目玉焼き焦げるよ」
「毎日俺の味噌汁作って」
「は?御幸って和食派だっけ?」



この時間より先の希望

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