自分に向けられる好意も悪意も俺は気づく。それは当たり前の話だ。それに興味があるかどうと聞かれれば、ないと言うだろう。知らねぇ奴らが俺のことをどう思おうと勝手だ。どう思われたいとかはない。まぁ、どう思わすっていうのはあるけどな。はっはっは。でも、身内は別だ。沢村とか、降谷とか、そういうバカにずっと俺は目を輝かされる相手でありたい。面白いことが好きだ。だから、ああいう面白い奴に好かれたいとは思う。人としてじゃなくて、野球選手として。それとも別に好意を持たれたいやつはひとりいる。本人はそんなこと知らずに、いつもヘラヘラと笑ってるような奴だけどな。
高校時代、俺はもなとあまり連絡を取らなかった。別に興味がずっとあったわけじゃねぇし。たま〜に、試合の結果のメールして。すぐに返事が返ってきたり、一週間後にメールが帰ってきたり。だから二回目会うとき、実際初めて合うようなものだった。言うならネットで知り合ったやつと合うような感覚。まぁ、俺男だし?相手一度は見てる人間だから危険はないだろう。そう思いあの日俺は待ち合わせの時計台の前にいた。5分前になって着きました。って連絡が入る。だけど全然わかんねぇ。どれがあの女だ。周りをキョロキョロと見渡すが全然見覚えのある顔はない。というかあの女がどんな顔だったかも正直覚えてない。どうすっかな。ここで勝手に帰るっていうのも自分が呼び出しておきながら悪いしな。つかそんなことしたら二度とメール帰ってこなさそうだし。なんとなく、コイツとメールを続けておきたいし。ほんとにどんな女だった。真剣に考えるが全然思い出せねぇ。どうするか悩んでいるともなからメールが来てどんな服装ですか?と聞かれる。まさかあっちも覚えてねぇの?いや、確かに結構前に一度あったきりだけど。俺結構覚えやすい顔してると思うんだけどなぁ。それにテレビとかでも出るし。まぁいいや。とりあえずサングラスかけてる。お前は?と返すと次のメールには写真がついてきた。自分の下半身の服が撮された写真。これで探せってことか。と納得し、とりあえず辺りを見渡しているとキョロキョロと辺りを見渡していると不自然な動きをしている女を見つけた。キョロキョロと辺りを見て不安げな顔をしてアタフタとしている。何気なく携帯に映る写真を見るともう一度女を見た。それはもなのメールについてきた写真と同じ服装だった。あいつか。もう一度もなを見ると本当に特徴がない。いや、ある意味ありまくりだけどな。外見じゃなくて、行動に。あんな挙動不審だったらわかるって、普通に。これなら俺があっちの服装聞く必要もなかったわ。まじで。ゆっくりと近づいてもな。と呼べば驚いた顔をして振り返られる。そして首をこてん。とかしげた。え?違うの?でも写真これもなと全く同じだけど?俺に送られてきたメールを見せるとあ!と声を上げて御幸くんか。と言われた。なんだと思ったんだよ、お前。本当にサングラスしてる。あはは。と笑うもなにちょっと不思議な感じがした。感想それかよ。もっと別にあるだろ。ちょっとイラッともする。だからさてどこ行こうかと悩むもなの腰を引き寄せて耳元でホテル。というともなは驚いた顔をして目を見開く。ほとんどの女はこれで態度を豹変させる。お前だってそうだろ?ニヤっと笑みを浮かべるともなは自分の腰から俺の手を引き剥がしすげぇ必死に笑を作りながらそんな高い料理は無理です。と言われる。ホテルってそっちのホテルじゃねぇんだけど。そう思ったけどなんとなく黙った。なにコイツ鈍感ってやつ?それとも作り物の天然?ご飯、早くどこかのお店に食べに行きましょう。さっきより冷たくなった声に少し驚きながらもああ。と返事を返す。苦手なものはあるかと聞かれて基本大丈夫だといえば。そうですか。では何もなければ適当に決めますがいいですか。と聞かれてああ。と返す。あれ?なんかかなり冷たくなってね?最初はもう少しなごやかだったはずの空気も今は重い。飯もほぼ無言で食べ、終わるとすぐにもなは店を出ようとする。慌てて止めて、怒ってる?と聞けば別に。と言われた。いや、怒ってんじゃねぇか。素直に言えよ。かわいくねぇな。なんてつい口にすると別にあなたに可愛いと思われたいと思わないので。ときっぱりと言われる。とうとう名前すら呼ばれなくなった。少しの沈黙のあと、ゆっくりともなは口を開く。もう、メールしません。返しません。まさかの言葉に俺はぽかんとなってしまう。そして財布から金を抜いてそのまま店を出ていってしまう。
一瞬あっけにとられたが慌てて俺は会計を済ませ。もなを追いかけた。待てよ。そういって肩をつかめば振り払われる。触らないで。そう言わんばかりに。その態度でなんとなくこいつの怒っている理由に察しがついた。最初の俺の言ったことの本当の意味わかってんだ。わかっててわざととぼけたんだ。もっと純粋なやつかと思った。俺がそういえばもなは奇遇ですね。私もそう思っていました。と返される。こんなことなら、本人になんか会いたくなかった!そう叫んでもなは俺を睨む。そのまま立ち去ろうとするもなの手を掴んで、さっきもなが置いてった金を握らせる。これ。驚くもなにさっきは悪かった。と謝る。そのお詫びに奢らせてよ。そういってそっともなの手を離すともなは慌ててもう一度俺にその金を渡そうとする。他人に奢られるのは嫌いなんだと言って。それを聞いた瞬間。賭けに出た。俺はそのままひょいひょいっともなを避けてそのまま帰りの電車の改札口を潜る。ちょっと!と怒るもなに次会った時なら受け取るわ。なんて言って背を向ける。次なんてない!そう叫ぶもなにだったらお前が持ってろ。といってひらひらと手を振る。これは賭けだった。もながここで俺に返すことを諦めれば二度と会えないし、連絡だって取れないだろう。だけどなんとなく俺には自信があった。あいつは必ずもう一度会いに来る。そういう自信があった



自信家ですとも

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