仕事に来たら明らかに後輩君は怒っていた。騙されたと言わんばかりに。確かに同居人が女の子って感じに思わせたのは私だけど・・・。まぁ、でも騙されていい気分はしないよね。素直にごめんね。と謝っても彼の機嫌は取れない。さて、どうしようか。
もなさん!無邪気な笑顔でわたしを呼ぶ声に一瞬で癒される。ああ、こういう時はやっぱり彼に会うのが一番!沢村君。私の大好きなその名を呼べば彼はにこにこと嬉しそうに笑う。ああ、もう。本当に可愛いな!そしてその隣で控えめにこんばんは。と言ってくれる春市くん可愛い!お待たせしてごめんね。というと今きたばっかりです。と春市くんが優しい言葉を言ってくれた。もう本当にできた子だよ。
適当にご飯を注文していつものようにくだらないことを話しているといきなり沢村君がもなさんなにか悩み事でもあるんですか?と聞いてきた。なんで?と聞くといつもと違って空元気。と言われる。直球だね。相変わらず。自分たちでよければ話を聞くと言ってくれるのでお言葉に甘えて少しだけ愚痴らせてもらった。仕事の後輩に御幸のこと仲良しの友達、みたいなふうに説明して。女の子のイメージになるように話したの。でもこの間本人に直接会っちゃって、男だってわかって、嘘ついた感じになっちゃって、それからすごい怒ってるんだよね。どうしたらいいのだろうか。本気の悩みをぶつけるのってちょっと怖いな。きっと沢村君は自分の本音を直球でぶつけてくるだろう。誰がどうとか考えないで、自分の意見を。だからこそ彼に話したのだけれど、それでも怖い。その答えしだいで泣いてしまいそうで。弱いところを見せてしまいそうで。そんなの簡単じゃないっすか。きょとんとした顔で謝ればいいんすよ。と言われる。いや、だから謝っても無駄だったんだけどな。
「謝っても許してもらえないならまた謝って、それでも無理なら謝る。何度も何度も許してもらえるまで謝ればいいんすよ」
それだけじゃないすか?不思議そうに首をかしげる沢村君。本当に君に話してよかったよ。そうだね、謝ればいいんだよね。それしか、できないもの。ううん、それ以外必要ないもんね。ありがとう。とお礼を言うと沢村君は何もしてないっすよ?と困惑した顔をする。ううん、十分してもらったんだよ。ね?と春市くんに振ると春市くんもこくりと頷く。こんな彼の純粋さが、本当にどれだけ大切なものか、いま身にしみてわかったよ。お礼に今度なにか美味しいお土産探してくるね、沢村君。というとお土産いらないんでそれやめてください。と言われた。なんのことだろう?と首をかしげると栄純でいいですよ。と言われた。名前で呼べってことかな?とりあえず栄純くん?とよんでみるとはい。と嬉しそうに笑ってくれた。なんだかそんな顔を見ると私まで嬉しくなってしまう。
「前から思ってたんすけど、春っちだけ名前呼びだったじゃないっすか」
「それは最初に春市くんの苗字を誰も教えてくれなかったからね。」
「今はわかりますか?」と春市くんに聞かれたのでちゃんと「小湊くんでしょ?」というとあたりです。といって嬉しそうに笑う。そうだね、最初ひどいこと言ったよね。苗字わからないってかなり失礼だよね。
そういえばもなさんは御幸とはよく会うんですか?多分彼は何も考えずに聞いたんだろう。だけどあまりこの質問は答えたくないものだった。何しろ同居中だしね。言えるわけがない。言ってしまえば経緯を話さなければならないのだから。こんなこと言えるような話じゃないよ。普通に。だからぼちぼちってところかな。なんて適当に答えると栄純くんは素直に受け止めてくれた。よかった。でもチクリ。と胸が痛い。騙してしまった。こんなにいい子なのに。ひどいなぁ、私って。こんな純粋な子に嘘ついちゃうんだから。そう考えたらまたショボンとなる。いけないいけない。こんな顔、今しちゃダメだ。にこっと笑みを浮かべてそういえばこの前倉持にあったの。と話題をそらす。そんな自分が果てしなく嫌いだった


きらいきらい、大嫌い

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