よくよく考えればいろいろ間違っている。けれどそれに気づいたときには遅かった。役所に住所変更のお願いをしに行き、カードなども変更、会社にも連絡。親には友人とルームシェアすることになったと報告。なんだかんだで過保護なのでかなり反対されたが絶対に大丈夫だし迷惑はかけないと言い切って半分飛び出すような形で出てきた。相手が相手なだけに公にはできないんだよ。ごめんね、お母さん。ちょっと罪悪感があったので後日手紙にて詳細を書いて(御幸の事はいっていない)実家に送った。その後電話がかかってきていろいろ言われたけどなんとか認めてもらうことができたことに安心。そのうち一緒に住む人を紹介しなさいと言われたけど相手が多忙だからいつになるかわからないと答えた。仕方がないじゃないか。本当に多忙な人なんだ。それにあまり身内に紹介できるような人じゃない、というか男の人と一緒に暮らすとか言ったらあらぬ誤解を受けるからやだ。変なこと御幸に吹き込まれても困るしね。友達にも簡単に事情を話し、家を新しくすることを伝えた。だけどうまくかわして住所だけは教えなかった。検索されて住んでる場所バレたら問い詰められるのは間違いなかったからね。御幸の言うとおり私は毎日ご飯を作った。お昼はお互い仕事なのでお弁当を作った。洗濯物は手の空いてる方がした。夜干しとかが結構多かった。個人的な部屋が欲しいかと聞かれたのはしっかりと断った。本当に住むような感覚になると困る。あくまで住み込み家政婦のようなものだ。ここの家の住人ではない。そう一戦引きしておかないといつか本当にこの家に住んでいるように誤認してしまいそうで怖かった。御幸は変わらずいつものまま。ああ、少しばかり機嫌がいい。それがちょっと不気味で怖い。というか気持ち悪い。なんて言ったら怒られるだろうから言わない。
あの事件は友達と後輩にすごく心配された。でももう大丈夫だと告げれば泣きながら良かったと言ってくれた。こんなに心配をかけていたのだとその時やっと認識してすごく申し訳ない気持ちになった。御幸との関係はあまり変わらない。変わったのは毎日顔を合わせることだけだった。まぁ、お泊まりなんてよくしてたしね。少し変わったのは連絡することが増えたこと。例えば今から帰ります。とか遅くなります。とかそういう連絡。お互いにそこはちゃんと気遣いあった。もちろん御幸に彼女ができればすぐ出て行くつもりだ。御幸がどういってもそれは彼女に悪いから。でも今のところ彼女がいる様子はないし、家に女の人が来たことはない。というか全然こない。人が。御幸ってやっぱり友達いないのかな?
「御幸ってともだちいないの?」
「お前直球だな」
倉持くんにご飯に誘われ、今日も居酒屋にやってきた。女ひとりじゃ入りづらいからこうやって居酒屋に一緒に行ってくれる倉持くんには感謝している。お洒落なお店もいいけどこういうのも好きなんだよね。なんかすごい楽しい気分になれるし
今日は嬉しいことに春市くんも一緒だ。沢村君は遅れてくるとの連絡が。待っているのもアレなので先に食べようということになったのだ。沢村君がいないぶん少しばかり静かだがこういうのもたまにはいいかもしれない。もちろん沢村君がいたほうが癒されるから好きだけど。春市くんは今日も今日とて可愛いなぁ。なんて思いながらお酒をぐいっと飲む。ああ、仕事終わりのお酒はたまらない。
「俺の知る限りいないな。ああいう性格だしな」
確かに御幸の性格は褒められたものじゃないときが多々ある。意外と優しいところもあるが結構意地悪だ。比率で行けば8:2くらいだろうか。じゃぁ、友達は倉持くんとか野球仲間だけなんだ。というと素直じゃない彼は俺はチゲぇ!と叫ぶ。こんなので結構心配性なんだよね、倉持って。ツンデレってこういう人のことを言うんだろうな。素直になったら彼女のひとりやふたり、あっという間にできるだろうに。かっこつけないところが彼らしい。そういってけらけらと笑うとそういうお前はどうなんだよ。と言われたので話を変えることにした。出来るわけないじゃん。出来てたらもっと幸せオーラ出てるよ、きっと。
「でも、もなさんと御幸先輩って付き合ってるんですよね?」
またそれか。なんでみんなそう誤解するかな。もう一度春市くんにもしっかりとここで宣言しておくべきかも知れない。ニヤニヤしている倉持はほっといて
「御幸はいいお友達。親友以上恋人未満。これ以上以下の関係にはなれないの!」
「だってよ」
倉持がいきなり私の後ろに視線をやってニヤニヤ笑うものだからまさかの展開を考えて硬直した。え、いや、だって・・・。今日のお約束のメンバーじゃないよね?違うよね?私が振り返れずにいるとそれを気にせず倉持が降谷も久しぶりじゃん。と声をかける。降谷くん!?驚いて振り返ればそこには不機嫌な顔をした御幸と降谷くんがいた。や、やばい!!お土産足りない!!とりあえず降谷くんを引っ張って隣に座らせ御幸がとなりに座ろうとしたのを追いやって春市にくんをとなりに連れてきた。ああ、幸せサンド。私今なら死んでもいい。すごく幸せな気分に浸っていると倉持くんがけらけらと笑いヒャッハ。幸せそうだな。と言ってきた。当たり前じゃない!こんな可愛い子に挟まれるなんて最高の癒しだ。ああ、でも沢村君も来るのにどうしよう・・・。どうしたらいいの???本気でそんなことを悩むと御幸がいい笑顔で普通に俺の隣に来たら万事解決。3人ともの顔が見えるぜ。と言われたがそれは心からご遠慮した。なんか機嫌悪いのわかるもん。わざわざ自分から危ないところに行くようなバカじゃないし。それにしても降谷くん久しぶりだねぇ。元気してた?はい。よく話聞くよー。すごい速いストレート!なにお前はじまんげな顔してるんだよ。いいじゃない御幸。かわいいんだから。ヒャッハ!流石もな。考え方が人とは違うぜ。ちょっとどういう意味よ。ま、まぁまぁもなさん。あ、これ食べますか?美味しいですよ。食べる食べる!すっごく食べたい!そんなに食いたきゃ俺が食わしてやるよ。え、御幸のはいらない。春市くんから貰う。あー、もな。じゃぁ、御幸にそれやれよ。お前の皿に乗ってるやつ。いいけど?ほい、御幸。特別に私が食べさせてしんぜよう!何様だ。と聞かれたら、答えてやるのが世の情け。懐かしいなそのセリフ。だよね〜。もうあれやってないのかな?モンスターなんちゃら。昔あのゲーム好きだったな。野球よりも?や〜ん。倉持浮気者。おまえ笑いすぎだ。お前もう酒かなり飲んでんだろ。お母さんか!それにいいもーん。潰れたら春市くんか降谷くんにお世話になるから。お前に構うほど二人は暇じゃねぇよ。なによその言い方!春市くん降谷くん聞いてよ〜。御幸が意地悪ばっかり言う。
なんてそんなくだらないいつもの会話を繰り返し、途中で沢村君とも合流して最後は倉持の家に行こうという話になる。いつの間にか私は気を失い、目が覚めればあたりはすごい有様だった。うわぁ。それが起きてすぐに出た言葉だ。当たり前じゃないか。これは汚いっていうあれじゃない。何があった?!状態だ。でもなぜか私の周り安全圏なんだけど・・・
ふと隣に温もりを感じて振り返る。横には気持ちよさそうな顔をしてすやすやと眠る御幸がいた



眠る王子様

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