それから姉にも紹介され、家族の前にお義母さんの実家のほうにも連絡を入れることになった。おじさんやおばさんが祖母夫婦と一緒に暮らしてるらしくそれは電話越しに、にぎやかなお祝いの言葉が聞こえてきた。子供もいるのか、結婚式はいつすっと?!というこえに二人して苦笑した。式についてはまだ未定だ。式を挙げるにもオフシーズンはそんなに長くない。今からでは間に合わないだろ。そのことは球団と話し合って来年か、それとも本格的に忙しくなる前に行うかを決めなければならない。祖父母にも電話であいさつをすると祖母のほうには号泣された。そのときはもなも困った顔をしながらそれでも嬉しそうに笑っていた。
俺の実家に来るときもなはがちがちに緊張していた。親父と会って少し話をしていつのまにか工場のおやじたちとも仲良くなっていたのは驚いた。母親の墓参りに一緒に行って息子さんもらいます。なんていったのには笑った。帰るときにいろんな人に寂しがられるほどなじんだのはやっぱりこいつの仁徳だろうな。親父もいい人に出会えたな。とどこか嬉しそうだった。
先輩たちほぼ全員が家にきて俺は突然外で顔面にパイ投げされ続けた。同輩にも後輩にもだ。おめでとうの言葉と一緒にもらうパイは全くうれしくない。とくに投手の二人。あいつら加減ってものを知らねぇのか。普通に痛かったからな。全身真っ白になった最後に倉持からとどめの一発をもらいなんとかパイ投げは終わった。風呂で全身についたべたべたしたクリームを必死にもなが落としてくれたのでまぁ、よしとする。
球団ともなを引き合わせて今後のスケジュールについて話し合う。挙式は年を越して6月に行うことになった。今から7か月ちょっと。 会見も開き、大々的に俺の結婚を発表される。いろんな人から祝いの言葉をもらい、俺もくすぐったく感じて思わずはにかむとにやけすぎだと先輩たちに絞められた。理不尽。
もなの周りにも俺との結婚を知ってもらうことになり、今度年末に中学の忘年会を兼ねた同窓会が開かれるその帰りに引き合わせる手筈だ。素人の親しい友達と。もちろんそこには俺が何かしでかしそうだからと倉持まで来てるがなんとなく二人そろってあいつに悪戯を仕掛けたくなり約束の時間よりも一時間はやめにつく。早く着いちまった。なんてわざとらしく言うと中にいるもなは慌てているのが電話越しにわかる。お店の中はいるわ。といってお店の中に入るとドア前まで来ていたもなとばったり。お店のほうにはSNSとかには載せないでくださいね。といって中に入る。一つの大部屋からもなが数人だけを呼び出そうとするがなんだなんだと違うやつらが集まってきて結局俺らのことがばれた。
中に混ぜてもらうことになって席を開けてもらうと俺と倉持は自然を装ってもなを真ん中に挟む。男も多い。もし俺の知らない男がこいつに触れようものなら。みたいな俺の気持ちを理解してるからか、倉持も何も言わずサンドしてくれた。
近くにはもなの親しいという友達がとりあえず集まり(そのなかにはもちろん葉菜ちゃんもいた)、もながまず倉持を友人として紹介し、そのあと恋人として俺が紹介される。そして、俺たちが婚約したことも恥ずかしがりながら告げた。その瞬間大きな驚きの声が響く。そしてすぐにおめでとう!と祝われた。なんで教えてくれなかったの?というの遅い!とか怒られているけどそれでも周りもやさしい顔をしてるし、もなも恥ずかしそうではあるが嬉しそうに笑ってる。うん。やっぱりちゃんと報告できてよかった。
「久留野!ちょっといいか」
「今行く」
違う男に呼ばれて俺と友達にことわりのひと声をかけてもなは立ち上がりそっちに小走りで駆け寄っていく。そしてなにやら話をしているようだった。俺おいて違う男のところに行くって、なにそれ。思わず顔をしかめてしまうと倉持に肘でつつかれる。わかってる。ここで何か問題起こしたりしねぇって。それでもいつまでも楽しそうに話してるあいつ見たらちょっとくらい機嫌悪くなるのくらい仕方ねぇじゃん。仕方ねぇな。といって倉持は立ち上がりもなのところにいく。
「御幸さん、意外と顔に出やすいんですね」
「え」
「あれ中2のときのもなの同じクラスだった人ですよ。席隣だったみたいでそれなりに仲良くなったらしいですよ」
「・・・・教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
葉菜ちゃんがまさかそんなことを教えてくれるとは思ってなくて驚いた。周りの彼女の友達が(彼女ともなの友達というべきか)どういうこと?と首をかしげる。だから俺は素直に嫉妬しちゃったんだよ。なんていうと驚いた顔をされた。あ、ごめんなさい。すごい愛されてるなって思って。いいえいいえ。でもまぁ、俺がどうしようもなく愛してるのだけは知っててもらえるとうれしいです。そういうと友達もぽかんとした顔をする。そしてちらりともなを見ると難しそうな顔をして俺を見る。どこが、好きなんですか?正直、あの子に特別なところってないですよ。たぶんこの子も遊びじゃないかと疑ってるんだろう。けど、そんなの疑うだけ無駄だ。だって俺は、こんなにも久留野もなを愛してるんだから。
「俺以外にも優しすぎるところが嫌で、俺のことを一生懸命愛してくれるところとかいとおしいって思うよ」
くるくると変わる表情。無邪気で馬鹿なのに、変なとこまっすぐで頑固。泣き虫で強がり。だいたいは笑顔で受け答えする癖に褒められると困る。恥ずかしくなったらすぐに赤面する。どれもかわいくて仕方ない。って感じかな。自分の思ってることを素直に言うと周りにいた女の子たちが顔を赤くしてすごい惚気。といって笑った。


あかいもやもや


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