出会って初めて、もなの実家というものに行くことになった。さすがにこればかりは緊張して俺が固まっていると嫌な思いさせるかもしれないけど笑って流してほしいと困った顔をもなにされればそんな不安よりも悲しい思いをさせない最善の努力を考える。家族構成を聞くと母親と姉がいる。数年前にずっと一緒に暮らしてきた犬は死んでしまった。金魚が大量。小さな一軒家。そんな話を聞きながら家の前につくと一応深呼吸。
「あのね、一応言っておくけどうちの母親私が婚約したなんて思ってないと思うよ?」
「へ?テレビであんな大々的に言ったんだけど俺」
「うちの母親も姉もまさかわたしに彼氏がいて、しかも婚約したなんて思わないし。それに芸能人なんて縁がないって思ってるからね」
一応大事な話があるとは言っておいたけど。まぁ、なるようになるかな。姉がいなければいいな。なんていいながらもなは持ってきたこの家に鍵を鍵穴に差し込んだ。ガチャっとまわすと同時にお帰りー!と元気な声に出迎えられる。驚いているとそこにはもなの母親らしき人がうれしそうな顔をしてたっていた。待っていました。まさにそんな感じで。もなももなで久々の母親に会えるのはやっぱりうれしいのかただいま。とはにかむ。ああその顔かわい。ぱちりと視線が合うとどうも。と会釈する。すると向こうも驚いた顔のまま会釈してくれる。もなは俺の腕を引いて話したいことがあるの。という。母親は混乱状態のまま俺らを家の中に招き、居間に3人で座って、はい、沈黙。
「こちらはわたしの婚約者の御幸一也くん。こっちは私の母。それで」
「いや、待て待て。その先は俺に言わせてくれないの?」
「え、あ。あ!そうだね、うん。お願いします」
改めて言い直そうとするとただいまー。という声が聞こえる。うわ、いやな奴が帰ってきた。と大きくため息をついた。姉です。声を聞いただけでわかる。何も考えずもな帰ったんだ。とかいって居間に入って目を見開いていた。え。だれ?と言われ初めまして御幸一也です。と名乗る。その名前は知っていたらしくえぇ?!と大きな声を上げられる。
「御幸一也って最近ヒーローインタビューでプロポーズして一般人と結婚宣言した?!本物?!」
騒ぎ出した姉にもなはつむじを抑えていいから黙ってくれないかな。といって怒りをあらわにしていた。なんでそんな人がここに?え。まって。一般人と結婚って・・・・。もなと?!せっかく俺らが今言おうとしたことすべてを勝手に話してくれちゃったお姉さんにはさすがに呆れた。空気読めないどころか空気壊してるよ。俺以上につわものだわ。
「お願いだからちょっとあっち行ってて。今大事な話をお母さんに話にきたの」
「こっちも聞くって」
「いやいい!もうほんとにあとで紹介するからどいてて!ほんとに!」
なんとかもなが部屋の外に追いやって絶対SNSとか知り合いとかに言わないでよ!と口約束させてから戻ってきた。もなが来る前に不快な思いをさせるかもしれないっていうのはこういうことだったのかもしれない。と勝手に一人納得する。もう一度お義母さんのほうを向いて先に言われてしまいましたが、と言って正座してしっかりと向き合う。
「順番をたがえたことも承知で言わせていただきます。娘さんと、結婚させてください。」
そういって深く頭を下げる。ストレート一つなんて野球だったら絶対に勝てない。いや、その前に姉という変化球が投げ込まれたか。なんてこんな時でも野球に例えてしまうなんて俺はほんとにバカだな。混乱してバッド振り回すバカみたいだ。
「まさか、もながこんなに早くこんなことを言いに来るとは思ってなかった」
「へ?」
「こんな娘でよければ、もらってあげてください。どうか、幸せにしてあげてください」
顔を上げるとお義母さんは目を潤ませて同じように頭を下げていた。もなが慌てて傍により、お母さん。と呼ぶ。よかった。そう何度も繰り返される言葉に胸が締め付けられた。


ごめんなさいママ
(いっぱい傷つけた後なんだよ)


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