涙を流す幼馴染を見ながらほっと息を吐いた。いままでずっと守ってきた大事な娘が巣立っていくとき、父親というのはこういう気持ちなのかもしれない。幸せになってほしいと思っている。たとえプロポーズを受けたこの場所が一昔のお嬢様がお花を摘みに行ってきますといっていくような場所だとしても。これはいつかネタにして笑ってやろう。そう思いながら報道陣や一般人に婚約者とこの子がばれないようにそっと帽子をかぶせて球場を出ていく。駅まで着くとしらないピンク色の髪の男の人がもなを迎えに来ていた。もなはその人を亮さん、と呼び。その人も困ったようなうれしいような複雑そうな顔でもなの頭をなでて車に乗るように言う。
私は遠慮するといっても男の人はひかず、無理やり押し込められて車が動き出す。となりのもなは泣きつかれたのか眠ってしまっていた。私を置いてこの状況で寝るって、薄情というか、なんというか。
「寝たかな、そいつ」
「は、い。疲れてたみたいで」
「ま。いきなりあんなことされたら驚くよね」
くすっとその人は笑う。この人も御幸さんの知り合いなのだろうか。やっぱり寂しい?へ?手のかかる子供みたいだったんじゃないかなって。君にとってもなはさ。あー・・・。そうですね。手もかかって、馬鹿で、お人好しで。いつか悪い男にだまされるんじゃってほんとに気が気じゃなかったのにいつのまにか、好きな人ができてて、何の相談もなく結婚の話まで出てて、なんだかむかついちゃって意地悪なこと言ってしまいました。そういうもの、なんですけどね。友達って。もな、御幸の一度目のプロポーズ断ったんだ。え?えぇ?!なんでですか?!御幸とのこと、言えてない人がいるって。半分くらい最初は御幸の泣き落としに近かったから言い出せなかったんだろうけどね。約束破って、大事な人を裏切ってる。これ以上裏切りたくないって。そういって逃げ出したんだ。身に覚えあるんじゃない。そういわれて思い出すのはまだ私たちが義務教育などを受けていたころ。口を酸っぱくさせるほど交際についていろいろ言った。それ以外にも言ったけどだまされやすいこの子が心配でいろいろ約束をさせた。まだ、そんなことも覚えていてくれたんだ。
「御幸さんに、伝えといていただけませんか?」
「何を?」
私が泣きそうなのを我慢して震える声で言った言葉に男の人はクスリと笑ってそれは一言一句逃さずに伝えておくよ。といって笑った。ぼろぼろと零れ落ちる涙をぬぐうこともせずにじっともなを見つめる。幸せになってね。誰よりも。あんたがさ、苦しんだときをずっと知ってるから。何度も一人で泣いてたの知ってるから。お父さんのことや、他にもいっぱい、家のことで苦労してた。きっとこれからも苦労するんだろうけど、どうか。どうかさ。それ以上に幸せを感じてほしいな。おなかを痛めて子供を産んだことなんてないけど、でもさ、わたしにとってあんたは自分の子供みたいな、妹みたいな、ときには頼りになるお姉ちゃんみたいな存在だったから。おこがましいかもしれないけど、そんなことを願うよ。
「おめでとう。おめでとうもな」
まだまだ不安しかないけどそれでもきっと幸せになれるよ。あんたほどやさしい子、雑に扱ったらたとえどんなイケメンでもきっと罰が当たるんだから。だから・・・だから・・・・。
もなにはたくさんの家族に囲まれてほしい。子供が3人くらいいて、旦那さんがいて、毎日にぎやかな家庭を気付くんだ。たぶんさ、まだ御幸さんのこと認めきれないけどそのころには認めてるだろうから、そしたら・・・・その中にわたしも混ぜてほしいな。



世界中の幸福が君に落ちて


prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -