まさかだった。まさかの衝撃的出来事が起きた。なんでだ。みんなそういいたくなる出来事だ。あの沢村が、あのバント専門職みたいな沢村が、ヒットを打った。本人も驚いて固まっていて監督が馬鹿走れ!といってやっと走り出すくらいだ。長打のヒットをあの沢村が打ったのだ。これには鳴も一瞬呆気にとられていた。そりゃそうだ。相手がだれであろうと手加減しないのが鳴。その球を、あの沢村、が、だ。ありえない。だが、現実だ。
会場が一気に盛り上がり歓喜の声が鳴り響く。おーしおしおし!なんて2塁にでて吠えている沢村に仲間たちからヤジが飛ぶ。調子に乗るなとか、打ったらちゃんと最初っから走れとか。沢村のおかげでホームインした選手はあいつに帰される日が来るとは思わなかった。と本気で驚いていた。なんて奴だ。この今日もあきらめムードになりかけていた観客たちに一気に希望を見せた。
それをみてチームの選手たちが思ったことはたぶんみんな最初はうれしかった。純粋に。ただ、ただ、だ。あの沢村が自分たちの打てなかったボールを打ったとなれば面白いはずもない。むしろメラメラと燃えているものが見えるくらいだ。あいつに負けてたまるかー!!そう一人が叫ぶと全員がそうだそうだ!と言いだし先ほどとは違う気合が入り、相手を驚かせる。絶対打つ!そういい切った先輩により、残り1イングまでの点数差は1点となっていた。ツーアウト1・2塁。俺たち最後の攻撃、そして試合の最終局面。2塁にいるのは倉持だ。そしてバッターはあの女優との騒ぎになるきっかけにもなった先輩。先輩は俺のところに来てこれで借りを返せるとは思っていないがお前の大事な奴との関係こじらせた責任として、必ず打つ。と試合前に言われたのを思い出す。塁に出てるのは倉持だ。あいつが帰れるくらいにはやるからな。そう気合を入れバッターボックスに出ていっていた。俺は先輩のあとのバッターとして準備して祈るように見ていた。そして先輩は宣言通りヒットを打つ。それでも2塁からホームに帰るのは至難の業くらいだったのに倉持は迷うことなく飛び込んだ。まるで迷いのない滑り込みにまたチームに活気があふれる。倉持は俺のほうを見て俺はちゃんとやったぞ。あとはお前でどうにかしろ。と目で訴えてくる。そうだよな。ここまで来て、他人任せにしてらんない。これは俺のことだから。
バットにキスをしてセンター上空にバットを向ける。予告ホームラン。これには会場中が盛り上がる。あんまりこういうのするタイプじゃねぇんだけどな。俺。でも今回勝ったとしてもヒーローインタビューに呼ばれなければ意味がない。だからこんな催し物みたいな真似をする。それにこれは鳴の性格を知っていてのやり方でもあった。しっかりボールを見てバットを振り抜くがやはりそう簡単には打たせない。そういうボールだ。ツーストライクツーボール。やべ。追い込まれた。監督からは無言の圧力がかかってくる。すんません。もう一度見て、ゆっくりと息を吸う。そして次の球が飛んでくるバットを握り手に力が入る。やべ。これじゃうまく打てない。それにこのボール・・・・!振りそうになった腕を何とか止める。審判からボールという判断が下された。あぶね。やってくれる。さて、これでほんとに最後の球となった。押し出しの可能性は、あんまりないだろうな。けどないとは言い切れない。まだ3塁があいてるから。でもこの場面で、鳴がそんなことするはずない。信頼してるんだぜ、これでも。そしてここで来るとしたら・・・。
「狙い撃ち〜っと」
次に来たボールに全神経を集中させ、思いっきりバッドを振り上げる。ボールは。綺麗な弧を描いで外へと飛んだ。思わずガッツポーズがでる。一周走りきるとチームにもみくちゃにされてこの野郎と言われながら頭をべしべしとたたかれた。試合が終わり、ヒーローインタビューに俺と沢村が呼ばれた。奇跡のヒット。そういわれ、沢村が先にインタビューを受ける。なにやら記者とわいわいにぎわっていて、次に俺のインタビューが始まる。いつものありきたりな質問に答えながら最後にこのホームランを誰にささげたいですか。という質問に待ってましたと言わんばかりに頬が緩んだ。
「えー、もちろん応援してくれるすべてのファンのみなさま。と言いたいところですが、どうか、この球だけはたった一人にささげさせてください。」
「え・・・えぇ?!ま、まさかそれって・・・」
「はい。あ、すいません。マイク借りてもいいですか?」
マイクを受け取り俺が渡した席のほうを向いて約束果たしたんで、そいつもらいます。といって深く頭を下げた。これはもなのことをひどく大切に思い、守ってくれようとしたもなの友人に向けての言葉だ。そして、これはもなに向けての言葉だ
「いっぱい傷つけると思う。いっぱい泣かせると思う。でも、どうしても俺にはお前が必要なんだ。お前じゃなきゃ嫌だから。お前だから、なりたいって思った。こんなどうしようもない男だけど、世界で一番お前のこと愛してるから、だから俺と結婚してください!」


君に今日、報われたかった


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