あんまり頼りたくなかったんだけどな。と思いながらも高い請求よりも大事なあいつの笑顔のために建物に背を靠れさせながら一人の女を待つ。こんな風に女を待つなんてもな以外初めてかもしれない。なんてへんな感動をした。
いた。そうつぶやいて歩き出す。目的の人物の前にたどり着くとどうも。といって会釈する。向こうも俺がだれか分かったらしく無表情のまま会釈をした。おお、こわ。あの日最初に入ってきた顔とは大違いだ。少し話せないかな。というと仏頂面のままわかりました。といって一緒にカフェに入った。あったかいカフェの中で彼女はコートを脱ぎ、紅茶を注文する。俺はコーヒーを頼んでメニューを閉じた。
「葉菜さん、と呼んでも大丈夫ですか」
「どうぞ。」
もなの知り合いとは思えないほど表情のない子だなぁ。一応俺これでもイケメンで通ってるのにこの対応。いや、これはもなの友達だからか。あいつも俺への対応対外だったわ。なんか俺が勘違いしてたんだな。
「率直に言わせてもらうけどさ、どうしたら俺とあいつのこと認めてくれる?」
「大事な友達がだまされてるかもしれないっていうのに認めるなんてできるわけないですよ。私は認めるつもりはありません。それでも好きにすればいいと思いますよ」
「怖い言い方だな。そんな言い方されてあいつがすきにできるわけないのに。知っててやってるんだったら結構良い性格してるね」
俺がそういうと彼女は顔をしかめてあなたに言われたくないです。という。まぁ、確かに。俺も始まりはあいつをうまく丸め込んで、囲い込んだ。あいつのやさしさに付け込んだ。でもそんな始まりで何が悪い。結果、どうだ。あいつはあいつの意思で俺を見てくれた。過程がどうであれ結果がすべてだ。御幸さん、あの子から私たちの話今までに聞いたことありましたか?家族の話とか、父親の話とか、自分の生まれてきた環境とか。あの子が話したことありましたか。わたしはずっとあの子が悩んでるときを知ってます。苦しんできた時を知ってます。だからこそ幸せになってほしい。そう願うことはおかしいですか?今までたいへんだったぶん、幸せな家庭を気付いてほしい。そうきっと誰よりも思ってます。
「有名人と一般人の結婚がどれだけ不安定かあなたは考えてますか。一般人とあなたたちの感覚は違う。浮気なんて絶対あの子が許したって周りは許さないですからね」
「しないよ。俺はあいつ以外に興味はない」
「一年ちょっと前まで週刊誌によく撮られてましたけど」
調べました。といって鞄の中から数枚の紙を出す。ネットで検索して印刷されたであろう俺の記事をみて調べたんだ。意外だった。と素直な感想を述べる。反対していたわりに俺のことを、あいつの婚約者のことをちゃんと調べてどんな人間か知ろうとする。これだけでわかる。彼女がどれだけあいつのことを大切に思っているのか。だからこそ反対しているってことだって理解してる。だけど俺だって譲れない。譲りたくないからここまで来たんだ。
「それはあいつと同棲する前の話。同棲してからは一切ほかの女に手出ししてねぇよ」
「そんなのどうだか知りません。」
「ぶれないな」
「あの子みたいに簡単に信じると思わないでください。」
確かにあいつみたいになんでも信じるようなタイプじゃなさそうだ。むしろもっと疑うタイプか。どうりであいつが今まで詐欺にあったりしなかったわけだ。こうやって彼女が守ってきたんだろう。そんだけ過保護にされたらあんな純産物に育つな。
どうしても認めてほしいっていうならかけをしませんか。そういって彼女は携帯をいじり画面を俺に見せた。ここまで調べたのか。さすがにこれには驚きを隠せない。一応聞いとくけど、野球ファン?テレビでついてたら見ますけど個人的なファンとかじゃないです。それでこの試合を見つけるのかよ。その画面に映ってるのは俺の球団と鳴の球団の試合。俺の球団にとっては鳴のとこは正直天敵。勝つ確率のほうが正直低い。今の状態じゃ
「この試合で、3点差でいいです。3点差以上で勝ってください。そしたら二人の関係を認めますよ」
「簡単に言ってくれるな・・・」
「同じことですよ。あの子とのこと私が認めるっていうのは。簡単に認めてほしいなんて言わないでください」
「なるほどな。同じ気持ちになれってことか」
無言の肯定。よく理解した。彼女が俺のことを認めるのがどれだけ難しいってことか。それでもあきらめれない。かけに乗るって言ったら?いいですけど、もし負けたときは二度と認めてほしいなんて言わないでくださいね。と迷わずに言い切られた。気の強い女なのか、あいつをおもってこの態度なのか。たぶん後者だろう。そうでなければ今このとき、俺と一緒にいない。突然現れた嫌いな男の話を真剣に聞こうとなんてしなかっただろう。
「それでもいい。その賭けに俺はのる」
「・・・正気ですか」
「ああ。いたって正気だ」
「やっぱり認める気にはなれないですよ。こんな大事なことを賭ける人」
「勘違いしないでほしいんだけどさ、負ける気はねぇよ。」
試合で最初から負ける気なんてない。それに今回あいつとの未来がかかってるならなおさらだ。負けない。3点差だろうが何だろうがほしいもんつかむためならなりふり構うタイプじゃないんだよ俺は。もなのことを確かにこいつは俺以上に理解してるかもしれない。俺はまだまだあいつのこと知らない部分が多い。でもそんなの今から知っていけばいい。あいつの家族のことも、育った環境もなにもかも。
「当日どうせなら球場で見てればいい。絶対に勝つ。3点差で。チケットはこっちで用意するからもなと二人でこいよ。事情を先に俺が話しておく」
その言葉、忘れないでくださいね。彼女は最後にそう言って俺の前から姿を消した。我ながらむちゃくちゃなかけをしたと思う。けどどうしようもないものなんだとあっさり認めてさっそくあいつのお兄ちゃんにこのことを報告するとそれはそれは怒られた。そんな大事なこと賭け事すんじゃねぇとかなんとか。ごめりんこ。と謝って過ぎたものはしゃーないじゃん?てことで協力頼むわ。かわいい俺の恋人のために。というと負けて振られちまえ!という怒鳴り声で通話が切れる。最終味方になってくれるのはわかってるのでこれはよしとする。球団のほうにも電話をかけ、事情を話すと結婚のことはすでに認めているし、大いに盛り上がるだろうからということで了承をもらう。
球団の先輩たちにも話はとおり、打倒成宮!と団結力を深めることもできた。もなにはすぐに話した。最後まで話を聞くともなは不安そうな顔をして俺を見る。正直、鳴はほんとに強敵だ。だけど今回ばっかりは譲れないんだ。どうしても手に入れたいものがここにあるんだ。絶対勝つから、俺を信じてて。そういってだいぶ先の試合のチケットを渡し、額にキスを落とした。
それからは沢村やほかの投手ともサインの確認や投球のことについてしっかり話したり、投手の状態をこまめに確認した。絶対に負けない。その思いを胸に、今日、試合に臨む。
「無理はしないでね。試合、応援してるから」
「おう。絶対勝つから。信じて待ってろ」
そういって唇にキスをして、家を出る。今日の結果がすべて。今までの努力が報われるか否か、そんなものはわからない。時に神様とやらは非情なことを平気でする。けど、そんなものに負けてられない。だって俺は、あいつが好きだから。負けられない。ポケットに忍ばせた小さな箱を服の上からやさしくなでた。


この中に入っている僕の夢


prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -