倉持が来たときは友夢ちゃんもきて一緒にご飯を食べていろいろ話した。倉持の中学時代の話とかも聞いて私と一也さんはけらけらと笑う。私の話も全てじゃないけど少しする。家族の話、学生時代の話。あまり明るい話でないことはたくさんあった。それでもみんな真剣に聞いてくれた。父親が今現在どうしているか知らないということも伝えた。
一也さんの同級生たちが来て一也さんに日々の不満とか過去のいざこざの話を出したりケンカしているのか仲がいいのかわからないようなにぎやかな日もあった。ノリくんとはよく話すようになった。白洲くんもノリくんの紹介で話すと昔の一也さんについて二人そろって語ってくれてあまりにもかっこつけている過去の御幸に３人で笑う。
栄純くんの後輩もやってきた。一也さんたちが３年の時に一年生だった子たち。哲さんの弟君や一也さんとポジション争いをしたっていう光舟くん。にぎやかな瀬戸くん。毎回ながら一也さんに対しての文句が出て、ケンカみたいになるのは恒例となりつつあり、私はその光景がなんだか見ていてほほえましかった。
そして二週間がたって、私は一也さんのことを一也くんと呼ぶようになった。栄純君たち一年生５人がやってきてみんなでお菓子と料理教室をしたとき帰ってきた一也くんにわたしがお帰りなさい一也くん。というとそこにいた全員が大きな声で驚いていた。一也くんはそれに気を良くしてただいまもなー。とかいって抱き着いてこようとして手出し禁止だととなんとかで栄純くんたちともんちゃく。なんとかご飯が作り終わったので一安心だった。
かずくん。そうクリス先輩の前で呼ぶとクリス先輩は驚いた顔をして私を見る。そして何か納得したのか仲好さそうで何よりだ。と静かに言われ恥ずかしくなった。しばらくかずくんの前で無言でいることにした。鳴くんも家に突然の訪問で訪れた。今回のこと一応は心配したらしく相談すればいいのに。なんて言っていたが御幸は借りを作りたくなかったんだろうなぁ。と勝手に予想していた。ずうずうしくご飯をたかって家に泊まっていくところはさすがは王様と呼ばれるだけあるな。
かずちゃんと呼ぶ４週目にはいると家に亮さんと春市くんのお迎えが来る。三日間小湊家本家（ご実家）にお泊りすることになった。御幸は置いてきぼりのお泊りだ。どんなご両親なんだろうか。生きて帰れるだろうか。すごく不安でカチコチに硬くなっていると春市くんが大丈夫だよ。と励ましてくれたので何とか家にお邪魔させていただいた。結果からいうとすごく幸せだった。お母さんすごくかわいいし、お父さんすごく優しい。もう絵にかいたような幸せ家族。打ち解けると亮ちゃんが連れてくるっていうから亮ちゃんの彼女かと思ったのに。残念。でももなちゃんかわいいし、いい子だから会えてうれしいわ。春ちゃんからも話聞いてるのよ。明日よかったら一緒にご飯作りましょう。なんて誘われてうはうはだった。エプロンをお借りして一緒にキッチンに並んでご飯を作っていろいろな話を聞いた。昔の亮さんや春市君の話。とてもとても幸せいっぱいのこの家がひどくうらやましかった。亮さんは二日目の夜酎ハイを持って隣に座り、私に一つくれた。どう？と聞かれ楽しいです。と率直な感想を返す。俺も、自分ちって幸せな環境なんだなって思うよ。理想の家庭、ってやつかな？ほんと、うらやましいです。大きな我が家にやさしいご両親。おいしいごはんにかわいい弟。私にはないものばかり。小さな我が家。やさしいというよりは幼かった母。消えた父。おいしいご飯はあった。私の母は身内贔屓とかなしでほんとうに上手で、だからこそ私は料理に興味をもったのだから。かわいい弟はいない、憎まれ口ばっかりの姉くらい。でも、それでも私にとってはそれが家族だった。
「お前は御幸とこんなにぎやかな家族になりなよ」
子供はそうだな、３人くらい。男も女もいて、お前に似た馬鹿なやつとか御幸に似た良い性格してる糞生意気な子供。ダメダメな親を見て育った真面目な奴。なんでもいいけどにぎやかそうだろ？俺らが遊びに行くとお前と子供が出迎えてさ。子供は無邪気に飛びついてきてお前は怒られるからやめなさいとか言って焦るんだよ。それで俺がいじわるする。
「お前がそういう想像をあいつとできないなら結婚はやめたほうがいい。恋人としてだってまだやっていけるんだから」
「亮さん・・・」
「だけど逆に、そういう家庭を築きたいって思うなら。もう飛び込むしかないんじゃない？」
結局亮さんは最後まで意地悪だけど真剣に私たちのことを考えてくれていたのだ。それがうれしくて亮さんだいすき！と言いながら飛びつくとばーか。と言いながら頭をなでてくれた。幸せ真っ只中の私はこの時の写真を亮さんママがこっそり撮っており、それが亮さんから御幸にわたり拗ねらせてしまうなんて思ってもいなかった。
写真に写るはてんしのえがお。
▼ ◎