いやというほどわかった。この一ヵ月あいつら全員俺にケンカ売ってるんだ。亮さんのしたことは完全にとはいかないがほぼもなに害はない。ちょっと恥ずかしいコスプレをさせられ、かわいがられただけだ。普段意地悪な人にやさしくされた感動であいつはいつも以上に懐いた。好き放題撫でまわされ、あまつさえ抱きしめられたりもしていた。俺はこの一ヵ月自分からの手出しが禁止だっていうのにだ。俺があんなかわいい姿のもなに手出しをできないのをいいことに亮さんは好き放題目の前でかわいがって見せたのだ。ああ、くそう!俺だって撫でまわしてかわいがって最後にはかわいく啼かせてやりたかった。規制が入るようなことをしたかった!!
そんなことも知らずにもなはこの一週間次々代る代るやってくる人間にそれはそれは懐き、楽しそうに毎日を過ごしている。クリス先輩が来たときはイケメンすぎて眩しいと言いながらもしっかりと隣をキープしていた。丹波さんと二人の間に挟まれてそれは楽しそうに過ごしてた。完全に拗ねた俺はやっと誰も来ない久々の二人っきりの時間も全然楽しめない。イライラがたまりすぎて八つ当たりしないようにするのが精いっぱいだ。ソファーに座って大きくため息をつくとひょっこりともなが顔を出す。そして傍までやってきてちょこんと俺の膝の上に乗る。
「手出し禁止なんだろ」
「うん。御幸からの手出しは禁止なんだよ。」
「は?」
「つまり私から何をしても自由!オーケイ?」
にやにやと楽しそうに笑うもなに一か月後覚えてろ。というともう忘れたといって抱き着いてくる。ああ、くそ。こんなので機嫌治りそうな自分がやだ。ちゅ。ちゅ。と瞼の上や頬にキスされて自分は手出し禁止って。つらすぎる。俺の男の部分が。ちょっと主張し始めてるんですけど。禁欲一週間してるんだからさこれでもつらいんだよ。
「一也さんだいすき」
耳元でささやかれた言葉で一気に下半身にきた。狙ってやってたんだろう。もなはにやにやと笑っている。手出し禁止、だもんね。くすくすと楽しそうに笑い抱き着いてきた。ここで口にキスでもしてくれたら落としてやれるのに。
一也さん。一也さん。もなはずっと嬉しそうにそう何度も俺の名前を呼んだ。何がそんなに幸せなんだ。そう聞きたかったけど聞かない。聞いたらきっとやめてしまうだろうから。俺の名前だけを呼んでそんな顔をすることを。ほんと、かわいい俺の恋人。
「ねぇ、好きです一也さん」
「どうした。なんか不安にでもなった?」
「いいえ。ただ好きだと、いとおしいと思っただけです」
そういってもなは俺の胸に顔を埋め目をつぶり、何度も俺の名前を呼ぶ。そこにいるのが俺だと確かめるかのように。もなには今も夢のように感じるのかもしれない。俺と一緒にいることが。結婚なんて話を嫌がったのもきっと始まりの関係や友達を裏切ったっていうのももちろんあるだろうけど、実感できないんだろう。俺と一緒になるってことが。一瞬で変わる。そう思っているんだ。喜びも悲しみに、楽しい時間も幻に、そう思わせたのはやっぱり俺か。俺が情けないばっかりに、もなにはつらい思いばっかりさせてるよな。
「なぁ、もな」
好きだよ。誰よりも。お前が、お前だけが。そう何度もささやいた。この一ヵ月、いい機会なんだ。俺にとっても。触れ合わなくたって、俺の気持ちを伝える。きっと結婚したらもっと不安な思いをさせる。心無い記事や、嫌がらせもあるかもしれない。それでも不安にならないくらい俺の気持ちが伝わればいい。俺がどれだけもなのことが好きで、愛してて、必要としてるか。


君と僕だけの世界に行こう


prev next

 

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -