インターホンが鳴る。ごくりと唾をのみ、御幸と目を合わせて頷く。お互い、覚悟はできた。御幸あけてよ。いやもなが出てよ。やだよ開けた瞬間何が起こるかと思うと怖いよ。たぶんお前には何もない。あるのは俺に対しての悪意だけだ。そんなことないよ!私この間すっごく怒られたばっかりなんだよ?!絶対やばいって!なんて擦り付け合っていると固定電話に電話が入り画面に浮かび上がった名前に息をのむ。すぐさま二人そろって玄関のドアを開けに言った。
「まったく人のことなんだと思ってるのさ。ねぇ、増子」
「う、うが」
悪魔です。なんて口が裂けても言えない。黙ってすいませんとひたすら頭を下げた。本日やってきたのは亮さんと増子さんに哲さんそして璃那さん。御幸は頭を抱えて自室に引きこもりたがった。私も同じ気持ちだ。増子さんはうれしいけど、亮さんこわいし、璃那さん悪乗りするし、哲さん天然だし。どうなるんだ今から。
「ああ、もなはこれに着替えといで」
「へ?」
「いい子に文句言わずに着替えてきたら今日はやさしくしてやるよ。お前には」
その言葉を聞いて速攻で受け取り着替えに言った。裏切り者―!と誰かが叫んでいたような気がする。ふっ。世の中そういうものだよ自分の身が一番かわいいのさ。なんて思いながら紙袋を開けると中身はとんでもないものだった。ふわふわもこもこした猫コスプレの服だ。露出などは控えめだがこれはこれで恥ずかしい。手袋に肉球までついてる。凝りしょうか!猫耳やしっぽももちろんついてるけどこれ我慢したら怖い思いしなくて済む!ということだけを信じて!着替えて鏡でその姿を見ると恥ずかしさのあまり出たくないな。このままひきこもろうかな。という悪魔のささやきが聞こえた。でもこの囁きに耳を傾けると本物の悪魔がもっと恐ろしいことを起こすだろう。恐る恐る戻ると璃那さんが机をバンバンたたいて何やら興奮状態になっている。恥ずかしくてうつむいているともな。と今までにないくらい亮さんがやさしい声で呼び、ポンポン。と自分の隣をたたく。すぐにそこに座るとやさしく頭をなでられていい子。と褒められた。それはそれはやさしくまるでほんとに自分のかわいいペットをかわいがっているような・・・・。うん。いいんだ。いいんだよ!だってそれでこの幸せが手に入るんだもん!安いもんさ!プライドもへったくれもあるもんか!
ぎゅうっと抱きしめられてさすがに恥ずかしいが暖かいぬくもりが気持ちよくてついついすり寄る。亮さん、なんだかいい匂い。すんすん。と匂いを嗅ぐとほんとにペットにでもなったつもり。といってくすくすと笑われる。そのまま両脇に手を入れられ持ち上げられ増子さんの膝の上に乗せられる。増子さんにも撫でられてうれしくてギュッと抱き着くとやさしく抱きしめ返される。かなり幸せ。
宣言通りその日亮さんはひどく優しかった。どうやら今日は嫌がらせをしに来たわけじゃなかったらしい。変に身構えたけど気が緩む。すっかり絆されて自分から亮さんのほうにすり寄るくらいだった。すっかり忘れていたのだ。亮さんがどういう人なのかを。
夕方になるとみんな明日も仕事があるからと帰っていく。またいつでも来てくださいね。と笑顔で見送っていると次は、お前が来るんだよ。と笑顔で言い切られた。
「へ?」
「次の時は迎えに来てやるからお前だけうちの実家に来てもらう。春市も一緒だよ。御幸はおとなしく留守番」
じゃぁね。といってそれは楽しそうに去っていく後姿にやっぱり亮さんだと言わざる得なかった。どどどどどどどどどどうしよう?!亮さんのご両親って、やっぱりああいうタイプなのかな?!亮さんが3人とかやだよ!!御幸に助けを求めようとしたら笑顔で遊ばれて来い。と不機嫌そうな声で一刀両断された。


招待状は送っておいた


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