飛び出してったもなを追いかけることもできず、その場に座り込む。わかってる。なんとなく原因が。あいつがきにしてるのは始まり方。俺はともかくあいつは女だ。あっちの親からすればそうやってつながったのか不思議でしかないだろう。ましてや俺は有名人。そういった関係が始まりでお付き合いをすることもあるわけだ。疑われる確率は高いし、あいつ嘘苦手だからな。自分に罪悪感があるとすぐに顔に出る。あっちの身内には俺のことも、この関係のことも何も言ってないはずだ。だからこそ余慶に困ってるんだ。とりあえず薄着で出ていったはずだ。しかも携帯ここにある。こんな時あいつが頼りたいと思うやつは多分あいつだ。俺以上に信頼を勝ち取っている男。
電話を掛けると数コールしてやっとつながる。こんな時間に何の用だてめぇ。いやー、頼みがあるんだけど。ふざけんな。お前の頼みなんか聞く義理はねぇ。そういって通話が切られる。ひでぇ。今度はもなの携帯から(暗証番号知ってるからロック画面の意味ないんだわ)倉持に電話を掛ける。するとツーコールででた。まぐれかもしれないけど扱いに差を感じる。どうしたもな?なんかあったか?心配そうな声にどもー。と俺が声を出すとぶち切りされた。ちょっと待って!という暇もなかった。
かと思えば突然俺の携帯にあいつから電話がかかる。通話ボタンを押してすぐにあいつに何したてめぇ。と怒ってる声が聞こえた。どんだけ野生の勘が働いてるんだチーター様。そのことでさ、あいつ飛び出しちまってて。俺じゃどうしようもないからお前に捜してほしいんだけど。んで、話聞いてやってほしい。何したんだてめぇ?プロポーズ。は?プロポーズして振られた。・・・・。笑えない冗談やめろボケ。いや、マジだって。だから早いとこ保護してくんない?風邪ひくからあいつ。
それだけ言うと通話が切れる。たぶん探しに行ってくれてるんだろう。あー、一応連絡はした。てことで今から落ち込んでもいいかな。強がってみたが、結構落ち込んでるんだよね俺。さすがにあんなに泣くほど拒否られるとは思ってなかった。誰ともする気ないっていうのがせめてもの救いだったけどさ。でも要は俺とも結婚したくないってことだろ。なんてグダグダ考えて余慶に落ち込む。こんなの、俺じゃねぇ。前までなら女のことなんて考えてなかった。彼女とかできてもその機嫌気も、薄着で寒空の下でてこうがなんも気にしなかった。野球ができて男として溜まる性欲を解消できればいい。そのほかなんてどうでもよかった。過去の俺が今の俺見たらきっと馬鹿だって笑うだろう。けど、どうしようもないほど溺れてるんだよ。
「あー・・・・もう結婚あきらめるから。だからほかんとこ行かないでくれねぇかな」
形がほしかった。あいつは全然俺のことを俺を通じた知り合い以外に話したりしない。だから余計に形がほしかった。誰にも横取りされない決定的なものが。俺のだって印をつけたかった。あと俺にもあいつのだっていうしるしがほしかった。まぁ、全部無駄だったわけだがな。それがあいつを俺から引き離させるなら、いらねぇよ。
玄関のドアがどんどんと大きな音を立てる。こんな時にだれだと思って扉を開けると沢村がちょっと失礼しやす!と言って振り上げていた手のひらをおいしょー!という声と同時に振り下ろされ、俺の頬にダイレクトに当たる。は?なに?これどういうこと?ジンジンする頬に手を当てて沢村をにらみつける。
「倉持先輩から聞きやした!プロポーズ断られたって!」
「で、なんで俺がはたかれてるわけ?」
「もうひとつ言付かってます。あいつがふぬけた顔してたら爺さん直伝のびんたとやらをしてやれって」
すべて倉持にはおみとおしってか。でもこんなのへこむだろ。お前同じ立場だったら同じことなってんだろ。イライラして無意識に沢村をにらみつける。沢村は前に一度本気で怒ったから俺の子の顔が苦手らしく一瞬ひるんだ。だけどすぐにあんた自分がだれに言ってるか分かってるんすか!と言い返してきた
「もなさんは俺らの姉ちゃんみたいな大事な人ですよ!それを、ほんとはあんたなんかに渡したくないけどあの人があんたのことすきなら仕方ないって認めてあげようとしてるんす!」
「ずいぶんと上から目線な言い方だな」
「そりゃ弟なんすから!身内なんですからあたりまえっすよ!」
あんたのいいとこなんて顔と野球しかないけど、それもいいってあの人が言うから許可してるんすよみんな!ほんとはあんたなんかよりもっと性格が良くて優しくて素行のいい奴のほうがいいけど、あんたが好きだってあの人が言うから、だから何もみんな言わないんす
「そうやってみんな我慢してるんだから一回くらいでめげんな!あきらめたらそこで試合終了だろ!あんたそんな簡単にあきらめんのかよ?!」
「うるせぇな!失うくらいなら、形なんざにこだわらねぇよっ」
「そんな弱気だったらいつかほんとにもなさんに逃げられますよ!」
「っ・・・そんなこと」
俺が一番よく分かってんだ。あいつがどれだけ自由な野良猫かなんて。だからこそ、俺のだっていう首輪をつけたかったんだ。いつもそうだ。俺がどれだけ手を伸ばしても、あいつはひょいひょいってそれをかわす。それで振り返りながら俺をちらっと見る癖に前に進む足を止めない。
「もなさんが断ったのは何か理由がある。別れ話をしないで逃げ出したってことは、ほんとはあんたと一緒にいたいんじゃないですか。ちゃんと理由聞いてきてください」
じゃないとあんただって納得できないでしょう。じっと沢村に見つめられて俺は大きくため息をつく。ああ、その通りだ。諦めれねぇよ。諦めれたらこんなに苦労してない。馬鹿で
単純で、だまされやすいあいつの傍にいるのは、俺自身がいい。明日もっち先輩が送り届けるまでちゃんと待っててくださいね。という言葉に苦笑しながらうなずいた

やっぱり君じゃなきゃダメだよ


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