最初に言うと、自分の父はあまりいい父親ではなかった。正直に言えばよくない父親だろう。勝手なことをした挙句に勝手に出ていった。わたしには姉がいるのだがなにかと母も祖父母も姉びいきだったため、自分に一番甘かった父のことをきっと家族の中で一番愛していたんだと思う。それも全部父のせいで壊れたが、それでもわたしはやっぱり父が消えたとき少なくとも寂しいとは思った。たとえどんなに最低な親だろうと子供にとって親とはそういうものなのだ。よくテレビとかでも虐待の話とか出るでしょ?なんで子供は逃げないんだろう。って昔友達が言ってたんだけどさ、逃げれる逃げれないじゃなくて『逃げる』なんて選択肢が存在してないんだよ。そんな選択肢を知らないし、知るすべもない。すでにそういった洗脳をされてるんだ。無意識のうちに。どんな親であろうと親だから、無条件に求めてしまう。そういうものなんだよ。
そんな事情をいろいろとしている親友には口酸っぱく言われてきた。男には気を付けろ。男の家に一人で上がるな。男遊びなんて言語道断。あんたは父親がダメな男だったから、ダメな男をそうだと思わないところがある。だから人一倍気を付けろ
「付き合ってもない人と、そういうことなんてするな」
「お前ら今付き合てんだろ?」
「御幸と初めてそういうことしたのはずいぶんと前だよ。たぶん倉持に会うより前」
あの日、御幸は疲れ果ててた。すべてのことに。もう何もかも捨てるような目をして、私に襲い掛かってきた。その時のことは今も覚えている。けど最中に許しを請うような悲しい声と目を見て私はただこの人を守りたいと思ったのだ。私と同じように、理不尽な世の中に苦しんでるこの人を、助けたいと強く思った。そうすることで自分も救われる気がしたんだ。実際、御幸が笑うと私も笑った。
「そんな関係を何年も続けて、ずっと隠してきた。最初は御幸のことを支えれる人ができたらそっと離れてなかったことにするつもりだった」
「けど、お前らは付き合いだした」
「そう。いつの間にか同情とかじゃなくて好きになって付き合って、今は恋人。」
こんなの過程で他人から見れば何の問題もないかもしれない。けど私の中には大きな一つの事実があるのだ。その幼馴染であり、親友を裏切った。約束を破り、すべてをずっと隠し続け、嘘をつき続けてきた。結婚するってこと親にもみんなにも知られる。御幸は有名だから私を知らない人まで私を知る。きっと私の親友だって知ると思う。その時、彼女はどう思うだろうか。裏切り者。そう呼ばれるのが嫌なのだ。彼女にばれたくない。あのころ、子供のころ私の手を引いてくれた彼女に嫌われたくない。そう、私にとっては親のような存在だから、その人に嫌われたくないのだ。
「すごく勝手な理由だと思う。でも・・・・」
「わからねぇこともねぇよ。」
え。と驚くと俺だって友夢に嫌われたくないって思ってた。とまっすぐ目を見ていい切られる。だけどそれでも前に進めって言ったのはお前だ。そのダチも御幸もどっちも捨てれないから逃げ出したんじゃねぇのかよ。的をついた言葉に言葉を返せない。倉持はほんとにわたしのことをわかるんだね。類は類を呼ぶ。ということなのだろうか。
「もっかい、ちゃんと話してこい。御幸と」
「・・・うん」
「そのうえで何かあったらいつでもここに来い。間違っても薄着で外うろつくな。携帯おいてきてもポケットに十円入れとけ。公衆電話から掛けて来い」
「お兄ちゃん話聞いてくれてありがと・・・・」
「出来の悪い妹持つと心配で夜も寝れねーよ。」
「じゃぁ、今度友夢ちゃんとサンドウィッチにして寝てあげる!お兄ちゃん具材ね」
「それもっと眠れなくなるだろ俺が」


君に睡眠妨害


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