いろいろなことが落ち着いて、生活がだんだんと戻っていく。それでもやっぱり過保護な周りにはまだ出かけるときは誰かと一緒にという約束を付けられている。今回のこと、いろいろありすぎたから余計に心配をかけたのだ。途中、勝手なこともした。純さんや倉持には迷惑かけてしまった。二人はあの事をほかの誰かに話したのかな。わからないけど、何も言われないところを見るとあまり広まってないのかな。じゃぁ、御幸にも言わないでくれたかな。無駄に御幸を傷つけたいわけじゃない。
久々に、いつもの家に帰って御幸と一緒にソファーに座る。そのまま手を握られてゆっくりと口づけた。このまままた毎日馬鹿みたいに平和でやさしいものだとうれしいな。ゆっくりと押し倒され口づけが深くなる。こうやってたまには温度を分け合って、笑いあって、手と手がつなげる距離。ここが一番、好き。ここが一番居心地がいい。これ以上は近づけないから。ここにずっといたいと思った。
今回のことの詳細について親に簡単に伝える。仕事をなくしてしまったこともつたえたけどそれについては貯金と、次の仕事の目安もついているからと嘘のようなホントのようなことを言って何とか納得してもらった。御幸とのことは結局誰にも私の身内や友人にはばれなかった。そうして、今日も同じような毎日が始まるのだと信じていた



「結婚しよう」
「い、ま・・・・なんて・・・?」
「俺と結婚してほしい。もな」
だから御幸の言葉が信じられなかった。結婚、今そういった。結婚っていうのはあれだ。戸籍を入れて家族というつながりを作るものだ。えっと、えっと・・・・。つまりどうなっているんだこれは。ど、うして?わたしたち恋人でしょ?だから恋人から夫婦になりたい。お前と家族になりたい。球団がそんなこと許すの?御幸。いやな話だと思うけど顔もあって女性ファンが多いじゃない。そんなことしたら。それも含めてすべて話し合って許可をもらった。だから俺と結婚してほしい。手を握って真剣に言われる言葉を信じたくなくて目をそらす。なんで。なんでなの。
「恋人のままじゃ、今のままじゃだめ・・・?」
「いや?」
「いや、ってわけじゃなくて・・・今のままがいいというか」
「それは俺と結婚したくないてこと?」
「それはっ」
悲しそうな顔をされて胸がずきりと痛む。そんな顔しないで。だってそれは許されないことだよ。あのね、私は何も言ってないの。家族にも友達にも何も言ってないの。今回のことで、どれだけみんなに心配をかけたか。それで突然こんなこと、言えるわけない。ずっと友達に嘘ついてきた。親友には散々注意されてたことを無視して、今の御幸との関係を作った。これ以上の関係になるためにはどうしても今までずっと隠してきたものを知られてしまう。ずっと隠してきた人たちに見つかるんだ。それに御幸に隠してたことも隠せなくなるかもしれない。もしかしたらあの人が、出てくる可能性だってある。世間的にも喜ばれる相手じゃないと思う。それに私は・・・・
「ご、めんなさい・・・・。わたし、誰ともそうなるつもりなかったから」
「それは俺も含めて?ねぇ、何がダメ?」
教えてよ。と言われても応えれない。だってそれは身もふたもないことだよ。始まり方が間違いだったなんて言ったら・・・・。どうしようもないじゃないか。もっと、もっと違う出会い方をしてたらまた違ったかもしれない。ずっと友達のままだったかもしれない。もしくは夫婦になっていたのかな。でも今の関係じゃ無理だよ。御幸との間にあったことを隠し通せるわけがない。恋人のこともいってない。幼馴染にはきっと私の嘘も通用しない。黙っていすぎたんだ。いろいろなことを私は。亮さんの言っていたことはこういうことだったのかな。こうやっていつか行き詰るって意味だったのかな。だったら大当たりだよ。だって、私はこの人の手を取れないもの。これ以上は一緒に歩めない
「ごめん・・・ごめん御幸っ」
「もな?!」
「ほんとうにごめんなさいっ」
亮さんの忠告の意味に気づくのがあまりにも遅すぎた。もう少し早く分かってたら、この関係だってつづけれたのに。せめて付き合う前に、問題を起こす前に、気づいていたかった。わたしは背を向けてその場から逃げ出す。ごめんなさいと何度もなんどもつぶやいて

これこそ終わりの世界


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