さっきのひと、すごくもなさんに似てたなぁ。あんなに化粧をたくさんすることはあの人にはないけれどしたときはあんな感じかもしれない。なんて思いながらもっち先輩の待ってる個室に戻る。いまだに御幸は先輩やサポーターの人と話をしているようだ。そのうちにさっきのこと話しちまえ。御幸がいたら絶対に呼びたがるだろうから。
「もっち先輩聞いてくださいよ!さっきもなさんに似た人がいたんす。あの人が濃い目の化粧したらこんなんかなぁ。みたいな感じで」
「あいつがこんなとこいるわけねぇだろバカ村」
そういいながら先輩は携帯を取り出し、電話を掛ける。相手なんてわかりきってる。俺も話したいっす。というとあとでな。と言われた。最近試合やらテレビやら取材やらで会えてないけど元気にしてるかな。久々に聞ける声が楽しみで鼻歌を歌ってしまう。まだですか?と聞くともっち先輩は顔をしかめてうるせぇ。と不機嫌な声を出す。もう一度かけなおしたのか一度耳から話した携帯をもう一度耳にくっつけ、眉間にしわを寄せる。そしてすぐにボーイを呼ぶとこんなやつはいるかともなさんの写真を見せた。少し困った顔をしたボーイがご指名ですか?と聞いてきてああ。ともっち先輩がどすの利いた声で言うと少々お待ちください。といってボーイは一度立ち去る。どうせ上司のところに指示を仰ぎに行ったんだろうけど、まさか。ほんとにあれがもなさんだったとでもいうのだろうか。あいつだったときはお前ちょっと黙っとけよ。口開くな。といわれ何も言えなかった。なんだか一気に危ない雰囲気になってきた。だけどもなさんがこんなところで働くわけがない。でも確か今は仕事がないって・・・としたら可能性はないわけではない。でもはずれてますように。そう必死に祈ったけどやってきたのはあの人本人で、すぐにやってきた御幸に連れていかれた。あんな状態の御幸と一緒にさせたら絶対に危ないってわかってるくせにもっち先輩は助けようともしない。なんで?!といえば一度痛い目見ればいい。といい店のほうに話してくるからここにいろ。と言われたけどついていった。
店の一番偉い人の前に行き、怖い顔をしたままあれは自分たちのものだ。と言って金輪際関わらないように言っていた。その言葉を聞けば本気で心配してたのはわかったけど、でもだからってあんな力ずくでわからせなくても・・・・。しばらくすると御幸がもなさんを横抱きにして歩いてくる。俺は急いで駆け寄ると彼女の意識はなく目元は痛々しく赤くはれていた。何したんだよ!痛い目見せただけだ。しばらくこいつの外出禁止にした。連絡も誰ともとらせねぇから。なんていわれてなっとくなんてできない。御幸のところなんかに置いとけねぇ。それなら俺んところに連れていく。御幸と俺が言い合いだすともっち先輩がこの責任はてめぇにもあんだからな。といって御幸先輩をにらみつけ、それよこせ。ともなさんを引き渡すように請求した。もっち先輩の言葉には言い返せず、しぶしぶ引き渡すとそれはそれは大事そうにもなさんを抱き上げてもっち先輩は歩き出した。荷物とって来い。店のほうに話は通してある。何一つおいてくるな。そういわれて御幸先輩は慌てて走り出した。なぜあんなに慌ててたのかわからなくて首をかしげるとここに働いていたっていう証拠全滅のため。と先輩は教えてくれた。タクシーを捕まえ、中に乗り込んで御幸先輩をまつ。しばらくすると戻ってきた先輩の手には彼女の荷物と数枚の書類が握られていた。あれ、なにか知らないほうがいい気がする。俺は何も見てない聞いてない。
「とってきたからもな返して。」
「これで残ってたらてめぇ本気でしばくからな。」
もっち先輩は中身を確認し終わるともなさんを御幸に渡し、タクシーの運転手に目的地を伝える。俺は納得できないまま、結局御幸がもなさんを連れて帰った。二人と別れた後倉持先輩はすぐに誰かに電話をかけもなさんのことを大まかに話した。そしてなにやらすぐに要件が伝わったらしく話がついた。最後にお願いします。といって電話を切った。とりあえずすんげぇ顔になってるからその顔で彼女さんに会ったら泣かれますよ。とだけ教えておいたのは後輩のやさしさだ。けっしてもなさんのことを御幸に引き渡したことを根に持っているわけじゃない。


僕のでもあるのに


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