試合も終盤になり、九回裏相手チームの攻撃で最後だ。2点こちらがリードしたまま楠木先輩がアウトになり、ワンアウトノーランだ。勝てる!飲み持ちはいいとして一週間のお触り禁止はイタすぎる。だからたとえもなが相手だろうと、本気でやる。そんな気持ちが降谷とシンクロし、今までにないほどのいいバッテリーになった。負ける気なんてかけらほどもしねーよ。大人気ないって?知るかよ。あいつのことがかかってんだ。
「なにやってんのよそっちの男どもは!!負けちゃうじゃない!!」
璃那のその発言にその場にいた全員が目を点にする。そりゃそうだよ。お前敵に何言ってんだよ。みんなその言葉を突っ込みたくなっただろう。もなちゃんが初マネしてくれて、その試合で負ける?!そんなことあっていいはずないでしょ!!いやいや、お前の発言があっていいはずない発言だっての。狩場交代!代打わたし!!!そうたかだかに叫んでバッドを握ってなぜかバッターホムに立った。お前、本気?御幸、あんた見えないの?もなちゃんのあの必死な顔。そう言われて横を向くとベンチからもなが祈るように両手を合わせて、ギュッと目をつぶっている。なるほど。あの姿にこいつはやられたのか。そういや何気なくもなのこと気にってたしな。上等。誰にも負けるかよ。ては抜かねーからな。というと必要ない。とはっきり言い切った。おいおい、一応相手はプロ野球選手だぞ。とりあえずミットを構えると降谷がさっき以上に気合を入れているのがわかった。ああ、そういうやこいつ高校の時璃那にボロクソ言われてたっけ。コントロールとかのこと。しかも打たれてたし。そりゃ気合い入るよな。サインを送り、降谷が投げ込んだ。勢いのある剛速球が俺のミットめがけて飛んでくる。もう少しでミットに収まる。というところで璃那は思いっきりバッドを振り、たまにバッドをかすらせた。さすがにそれには俺も驚く。いや、普通かすりもしねーんだけど、今の球。野球選手じゃない限り。そこはやっぱり哲さんの嫁ってことか・・・。
打つつもりでいた璃那も不満だったらしく降谷も璃那もお互いに怖い顔になる。その殺気飛ばすのやめてくんないかな。もなが見てたら泣くぞ。
「璃那さーん!えっと・・・頑張ってください!」
その声援を聞いた瞬間、2投目のボールを地面に叩きつけ、一塁ベースを踏んだ。おいおい。お前ホントに女かよ。こっちは冷や汗ものだ。続く東条のバントで璃那は二塁に進む。次って好打者の小湊弟だし。こりゃ気を引き締めねーとマジでヤベェな。タイムをとって降谷に声を掛けようと立ち上がると首を横に振られる。まぁ、あいつもどういう状況かわかってるか。座り直し、次の打者をちらりと見てまっすぐ降谷の目を見た。サインを送り、投げたボールに1球目から手を出してきた。が、ゾーンいっぱいを使ったボールにはかすることもなくミットに収まる。ナイスボールといってボールを返すと降谷はすぐに次に集中する。気負ってるっぽいから今ならボール球にも手を出してくれっかな。サインを送り次のボールを降谷が投げる。思ったとおり小湊はバッドを思いっきりふる。予想外だったのはしっかりとたまを捉えていたことだ。そのままファーストに滑り込まれ、璃奈は三塁に進む。ツーアウト一三塁。五分五分ってとこか。ん?そういや次のバッターって・・・。ちらりとバッターを見るとそこには沢村とかいてバカと読むオトコがいた。敵チームがもな以外悲しそうに頭を抱えている。こいつバッティングセンスはピカイチでないからな。何も知らないもなだけが希望をいっぱいいっぱい沢村に向けていた。ま。とは言ってもこいつももうプロ野球選手だ。そう簡単に討ち取らせてくれるわけじゃねー。気を引き締めろよ。そういった意味で自分の胸を二回叩いて見せれば降谷はこくりと頷き構えを取る。そして投げた瞬間、小湊が走った。あいつが?!なんて驚いてる暇はない。すぐに二塁にボールを投げたがどこぞのチーターさまと組んでたっていうのは伊達じゃない。上手く滑り込まれた。とは言ってもこれでストライクいっこ。あと二つでこっちの勝ち。ツーアウトワンストライク二三塁。次のたまはボールになったがその次はまっすぐな綺麗な球がみっとに収まる。これで後ひとつ。栄純くーん!がんばれー!その応援の声が自分に向けられないのがこうも腹立たしいことなのか。別にほかの誰が俺じゃないやつを応援しててもいい。けど、あいつは俺だけを応援してればいいのに。なんて考えた。
さぁ。これで仕留めるぞ。変化球のサインをだし、ストライクゾーンスレスレの場所にミットを構える。ここはボールになるけど、こいつならこの状況なら無理しても打ちに来る。そして降谷がボールを投げ綺麗にボールの軌道が変わる。いける。そう思ったときには沢村のバッドが動いていた。おいしょー!という叫び声とともに。ボテヒット。普通のチームなら意味を成さないようなものだ。だけどそれと同時にスタートをきった璃奈と小湊が一気にホームに滑り込んでくる。すぐにバックホームと叫び、ボールが返投された。だが一瞬間に合わず、小湊弟が滑り込んでしまう。迷いなく滑り込んできたからこそ、セーフだったんだ。この時どちらかが一瞬でも沢村の事を疑っていればアウトを取れたのに。最後の最後で沢村という人柄を見せつけられた気がする。ここでゲームセット。そのコールを聞いて敵チームがやけに盛り上がる。ちゃっかり璃那まで紛れ込んでるし。
「俺の言いたいことわかった?」
突然亮さんに後ろから声をかけられて言われた言葉に苦笑するしかない。自分がしていたことが何かを思い知らされたような気分だ。敵チームにもながいて。俺じゃない誰かを必死に応援する。目の前にいる俺に目もくれず、真っ直ぐな瞳は他人ばかりを見つめる。俺がしていた行動はそうなっていてもおかしくはなかった。つまりはそう言いたいのだろう。これからはもうちょっと後先考えて行動するように。一人で考え込むのはお前の悪い癖だよ。・・ああ、お前ら、のかな。俺とくくりつけられたのが誰かすぐに理解して苦笑を漏らす。あいつも大概馬鹿なんです。なんて俺の返事に亮さんは呆れた顔をして知ってる。とだけ返した


君も僕もあの子も馬鹿


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