金丸君の車に乗って何処か遠くを目指す。そういえばプライベートで御幸や倉持以外の男の人の運転に乗るのは初めてだ。タクシーとか以外で。えっと、今からどこ行くのだろうか。何も言わずにとりあえず外行きましょうと連れ出され、初対面の人とふたりっきりである。今更ながらこれ御幸にバレたらひどい目に遭う気がする。
「あの、さっきはすいませんでした」
「え?なにが?」
「あのバカ、じゃなくて沢村が好き勝手言ってたじゃないですか。悪気があるわけじゃないんです」
「ああ、それはよく知ってるよ。ほんと、びっくりするくらい真っ直ぐだから・・・」
こっちが悪いってわかってるのに、ぶつかるのが怖くなる。逃げたくなる。そう、悪かったのは私なのだ。ちゃんと話せば良かった。そうわかってる。けど・・・・、言えなかった。この感情を誰が理解してくれるかなんてわからないけど、言えなかったのだ。つまるところ私も不器用なのかもしれない。あの人と同じで。ううん、同じなんだよね、私たちは
「えっと、金丸君は・・・・栄純くんの高校の同級生・・・?」
「はい。今は社会人野球に所属しながら普通に働いてます」
「社会人野球・・・・ほぉ」
「あの、もしかして野球全然知らない人っすか?」
あはは。お恥ずかしながら。苦笑気味に言うと驚いた顔をされる。御幸先輩の恋人っていうからってっきりそういう話も合う人かと思ってました。金丸君も素直な人だねぇ。残念ながら知らないんだよね。なんというか私ってかなり知識が偏っててね。あまり興味のないことってほんとに知らないのよ。気分を害したらごめんなさいね。いや、なんかこっちが勝手にイメージしてただけなんで気にしないでください。ほら、御幸先輩とやっていくくらいの人だから同じような性格か、よっぽど趣味が合うんだろうなって同期とは話してて。趣味?あー、確かにあの人いい趣味してるよね。だけど女の趣味最悪よ?元カノたちの性格の悪さ知ってる?もうほんとねって・・・これ後輩に話したらあの人の威厳なくなるわよね。ごめん、聞かなかったことにして。あー、それはみんな知ってるんで大丈夫です。え?うわぁ。さすが御幸って言うべきかな。一度自分たちの同窓会でもそういうのあったんで。何その楽しそうな話!聞きたい!楽しくないっすよ。もう何が起きたんだって感じになって。当人の御幸先輩すんげぇ機嫌悪くなるし。ふはは。さすがすぎ。そういうとこ嫌にならないんですか?うーん・・・なんていうか、そんなところも呆れちゃうけど理解できるっていうか。ほんとああ見えて不器用な人だからさ。私もそうだからかな?なんか、許しちゃって。許すことで自分を許してるような感覚になれるって言えばいいのかな?カッコ悪いけど、そんな防衛本能の一種だよ。だから私栄純くんの思うような、いい人じゃないんだよね。さっきも、困らせちゃって。ほんと、情けないな。ちょっと落ち込んでしまう。それをごまかすように笑ってみせると俺もそういうのわかります。といわれてへ?と間抜けな顔になる。俺も、沢村みたいに強い人間じゃないんでそういうのわかります。人頼るの、苦手ですよね?わ、わかる?沢村に言われた言葉に困ってたように見えたんで。御幸先輩もあんまり人に頼るとこ見たことないですし。あー、あの人は頼るって言葉も知らないかな。私はやり方がわからないというか。何をどういって頼ればってかんじでね。別に深く考えずに思ってること、あったこと全部言ったらいいだけだと思いますよ。なれないことをするのは難しいと思いますけど。
着きました。そういわれて降りた場所は最近あまり行くことのなかった場所。海だ・・・。太陽の光を反射してキラキラと光る。いつの季節でもここはキラキラしてて、いつもわたしは心が躍る。靴を脱ぎ捨てて浅瀬に足をつける。冷たっ!寒!そう一人で騒ぐと金丸君が風邪引くから上がってくるように言う。でもいいじゃないか。たまにはこういうところではしゃぐのも。金丸君もおいでよ!そう誘うと彼は困った顔をするけど悩んだ末に靴を脱いで入ってきてくれる。金丸君面倒見いいってよく言われるでしょ?と私が言うと嫌味ですか。と嫌そうな顔をされた。まさか。褒め言葉。そういって手を取って浅瀬を走る。バシャバシャと水音が響く。足にまとわりつく水が心地よい。ここに来たのって、元彼の彼と以来だ。海が好きなんて、言ったことあったっけ。そう私が聞くと匿名希望のお坊ちゃんが教えてくれたらしいっす。と教えてくれる。やっぱり彼か。テレビで見たのかな。彼にも心配をかけただろうか。かけてしまったんだろう。
よし。自分に気合いを入れ直すために両手で頬を叩く。もうくよくよするのもやめよ。亮さんのお怒りは、怖いけど。ちゃんと受けよう。戻ったら栄純くんにとりあえず謝って、倉持たちに交渉して仕事探しさせてもらわないと。お金ないとこのご時世何もできないし。とりあえず最初の目標は再就職。それで、また夢を叶えるチャンスをもらえるように努力する。振り出しに戻っただけだ。ううん、何も知らなかった頃に比べたらいろいろ有利だ。大丈夫。今からでもまだ大丈夫。やり直せる。
「金丸君。今日はありがとう。関係ないのにこんなことに折角の休み使わせちゃってごめんね」
海から上がってタオルで足を拭いてる時にそういうと金丸君はほかでもないクリス先輩の頼みですし気にしないでください。と言ってくれた。優しい後輩だな。羨ましい。それに俺も個人的にもなさんにあってみたかったんで。え?沢村がよく話してたんで、ちょっと気になってました。あれ?金丸君ってもしかしてカネマールくん?は?あれ違う?栄純くんがよく話してくれたカネマールくんって人に似てるなぁって思ったんだけど。いや、あってますけどそのあだ名はやめてください。なんで?可愛いよ?全然嬉しくないっす!てか、あいつ俺のことなに話してるんですか。口と顔が怖いけどすっごいいい人って。私が素直にそう答えると金丸君は飲んでいたコーヒを吹き出し顔を真っ赤にしてむせ込んだ。

真っ赤なコーヒー


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