目を覚ますとお日様がすっかり登って暖かい日差しが差している。ゆっくりと体を起こすと私の左右には可愛い可愛い天使たちが寝ていらした。今回のこと、とても心配をかけてしまった。ごめんね。優しく頭を撫でてゆっくりと背伸びをする。
「良く眠れた?」
「ひっ」
突然の人の声に短く悲鳴を上げると何その悲鳴。傷つくなぁ。といって御幸がわらう。あれ。なんで御幸が。という言葉を飲み込んだ。ああ、そうだ。昨日また御幸に醜態を晒してしまったのだ。恥ずかしい。御幸は立ち上がりゆっくりと私の前に来ると私の脇に手を差し込み、抱き上げて先ほど自分が座っていたハンギングチェアに私の膝に乗せて座る。そしてゆらゆらと少し揺られながら何も言わず私の頭を優しくなでる。ちゅ。ちゅ。と優しくキスをされる。まるで不安をすべて取り払うかのように。するりと御幸の手が服の中に入ってきて突然のことにまたひっ。と短い悲鳴を上げた。だめ。そう言って押しのけようとしても御幸はクスクス笑うだけでやめようとしない。全身に這っていくその手に翻弄され体が熱くなる。ああ、ここがどこだか忘れてしまいそうだ。でもすぐそばに栄純くんと暁くんがっ。だいじょーぶだって。声出さなきゃ起きねーよ。でも。ほら、いいからこっちに集中。やっ。
「何朝からふざけてことしてんだこのエロメガネ!!」
急に腕を引っ張られて現実に戻ったような気分になる。く、倉持。お前も危なくなったら悲鳴でも上げろばか!は、はい。危ないって、俺達恋人なんだけど。倉持くんわかってるよね??は?恋人が触れていい理由になると思うなよボケ。え?だったらなんだったら触れていいの??
倉持に身の安全を確認され、そのままわしゃわしゃと頭を撫でられた。よく頑張ったな。そう言われてまた泣きそうになったのをぐっとこらえる。泣いてばかりはいられないのだ。まだ問題が解決したわけじゃない。私がそう言うとケロッとした顔で倉持がもううちの球団にも周りにも話してるから時期に解決する。あ、お前のとってきた証言とか勝手に使わせてもらったからな。と言われた。驚いて何も言えない。とりあえずお前は休養。とにかく休め。見張りは御幸と沢村とか一年のやつ交代でやらせっから。い、いいよ!別に休養なんてしなくたってなんともないし。仕事も探さないとだし。お前がなんと言おうともこれは決定事項なんだよ。あんなに心配させて、こっちの意見はまるっと無視すんのか。なんて言われるとおとなしくしたがうしかない。ああ、私貯金いくらあるかな・・・。これからの生活どうやっていこうか。
とりあえず今日は御幸と約束通りデートに行くことになった。デート。デートだ。珍しく倉持が御幸と出かけるようにいうので正直驚いている。御幸が変わらずご機嫌だ。少しの変装をして私の隣を手をつないで歩いている。倉持曰今日一日その手を離すと何かが爆発するらしい。うそだ。と言いたくてもそう言えないほど真剣な顔をされたのでとりあえずしたがっている。となりの御幸はそれをうまく利用していつものように甘い言葉を散々私の耳元で囁いた。ああ、もううるさい!と文句を言わせるほど。
一緒に動物の感動モノの映画をみて、帰りに久々にボーリングなんかもしてみて、久々にハメを外した。だから夜なんてあっという間に訪れた。今日も一日が終わっちゃったね。と私が言うと御幸はそうだな。といってギュッと私の手を握る自分のそれに力を入れる。痛くはないけど、存在感を先程までよりは強く放っていた。
「もなはさ、なんで俺?」
「へ?」
「なんで俺の恋人になってくれたの?」
俺さ、今回のこといろいろ昨日ひと晩考えてたんだ。最初、あの女が黙認の条件を出したとき、俺は迷わずにそれの受け入れた。お前がどんな思いをするかなんてわかりきってるのにそれでも、おれは頷いたんだ。自分でやってることなのに、お前との距離ができるたびに勝手に苛立って、八つ当たりして、お前の大事な夢まで奪った。仕事も、居場所も、何もかも奪って、それなのに勝手に戻ってきて、もう一度チャンスをくれって・・・ほんとに身勝手すぎる。そう、自分でも思った。でも、それでもやっぱ離したくない。お前のことを誰かに奪われるくらいならいっそ・・・・。そう考えるような男だよ、おれは。切なげに御幸の目じりが下がる。ああ、ほんとに可哀想。かわいそうなくらい不器用な人だ。天才?この人はそんなのじゃないよ。だって、ほんとになんでもできるタダの天才ならこんな顔、することもなかった。
「御幸は、いつも一人で無理をしてね、傷ついて、でもその傷をひたすら隠す。私は最初それを自分と重ねたの。御幸みたいにりっぱな覚悟があるわけじゃなくて、私は怖くて、すべてが怖くて人を助けてた。一人で無理してたの」
だからこそかな。御幸のとなりは居心地がよくて生まれて初めてこの人とは同じ傷を負いたいと思った。一緒になんでも背負って、一緒に生きていきたいって思ったの。初めてだった。誰かが傷つくのはとても怖いのに、一緒にそれを背負いたいと思ったのは。
「きっと私には御幸が必要で、御幸にも私が必要だった。それだけだよ」
私がそう言ってギュッと手に力を入れて握り返すと御幸は驚いた顔をして目をぱちくりとさせる。いいよ、御幸にこの気持ちがわからなくても、その代わり一緒になんでも背負っていこう。今回のことも。そりゃずっと願ってた夢が叶いそうだったのにダメになったのは悲しい。仕事も気に入っていたのになくなってしまった。けどまだ先はあるのだ。もう終わりということじゃないのだ。だからまたここから始めればいい。御幸がいれば私はまだ頑張れるから。だから。これからもずっと・・・・
「ずっと俺といてくれ」
「もちろん。言われなくてもずっと、一緒にいるよ」 

だって僕らは同じだから


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