ゆっくりもなが寝たのを確認して額にキスをひとつ贈る。そしてそっと離れて頭を最後に優しく一度なでた。どうか、夢の中では幸せでありますように。柄にでもなくそんなことを願う。クリス先輩に一言断って奥の寝室を借りてベッドに寝かせ部屋を出るとすぐ入口に倉持と沢村と降谷がたっていて俺と交代するかのように中に入っていく。きっとあいつの様子を見に行ったんだろう。その間に俺はクリス先輩に呼ばれて来ている先輩たちに話すべきことを話そう。倉持に話すのは先輩たちと相談してからだ。どこまで話していいのか、正直俺にはわからない。あいつには・・・。
「そんなん全部話すに決まってるでしょ。馬鹿なのお前?」
「す、すみません・・・」
一刀両断といったぐわいに亮さん言い切られ謝るしかなかった。この人に勝とうなんていうのがまず無理な話だ。倉持。ちょっとこい。そう亮さんは未だに心配そうに寝室でもなの様子を見ている倉持を呼び出し、俺の隠していたことを全て話した。ちょこちょこ大袈裟に言うもんだからむしろ訂正を自分で入れてしまうほどだった。話を聞き終わると倉持は拳を握り締めて俺を睨みつける。
「お前がしたことは間違いじゃねーよ。でも正しくもねぇ。あんなにもなをボロボロにして、正しいわけがねーんだよ」
「ああ、わかってる」
「わかってねーよお前は!お前は間違ってない!あいつはきっとそう言い切る。何も間違ってない、正しいことをした。あいつならそう言うだろな!けど、けどよ・・・」
それじゃ、あいつがそのせいで傷ついたのはしょうがねぇっていうのか?そのせいで大事なもの失って、夢も壊されて・・・・そんなのが、しょうがないことだなんて一言で片付けられんのかよっ!!!倉持が俺だけに怒っているわけじゃないのは分かっていた。行き場のない怒りをどこにぶつけることもできず、叫ぶことしかできないのもわかっていた。けど俺には何も言えなかった。何を言っていいのかわからなかった
「先輩たちちょっとうるさいっすよ。もなさん起きちゃったらどうするんですか」
せっかく寝てくれたのに。むすっと拗ねた顔で顔だけだした沢村は俺たちを咎めるような口調で話す。いい意味でも悪い意味でも一瞬にして空気が変わった。というかね、今更過ぎたことごちゃごちゃ言っててもしょうがないじゃないっすか!もっち先輩のこととかかばった御幸だっていろいろ考えてたんだろうし。もっち先輩の気持ちも分かりやすが、でも一番悔しい思いをしたもなさんはきっとここにいる誰かを責めることなんて望んでないと思いますよ。むしろそんなの知ったら悲しむんじゃないですかね。これ以上悲しませてどうするんですか!まったくもう。てことで静かにしてくださいよ。ケンカするなら外でやってくだせぇ。それだけ言うとまた沢村はもなのもとに引っ込んでいく。俺たちは何も言えずにぽかんとそれを見ているだけだった。
そこから誰だったろうか。一人が吹き出し。ほかのやつもつられて笑う。ああ、ほんとお前の言うとおりだよ。これ以上悲しませるつもりなんて微塵もなかったのに。また悲しませるところだった。まぁこれだけのものがあるんだから潰すのは簡単なんだけどさ。俺のものに手を出しといてそんな安く返すわけにはいかないじゃん?その度胸、高く買ってやんないと。そういって楽しげに亮さんが笑うとそこにいた全員が一瞬だけ相手に同情した。喧嘩を売った相手が悪すぎる。しばらくもなは休ませといてね。ああ、あとでもちろんあいつにもお仕置きするけどさ。え?そりゃ俺に隠し事してたんだよ?生意気だよね。ほんと意地悪したくなっちゃうくらい生意気でかわいいよ。誰もその言葉に何も言えず心の中でもなにも両手を合わせていた。せめてモノ償いに一緒にバツを受けよう。



君の罪は一緒に背負ってあげる


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