女のマンションに呼び出されて部屋に招き入れられる。俺は無言のまま女の指示通りソファーに腰がけてただ前を見てた。女は俺に擦り寄って女特有の膨らみを押し付けてくるが何も思わない。いや、嫌悪感を抱くくらいだ。誰のでも興奮するような安い男じゃねぇんだよ。あいつが、特別なんだ。自分でも驚く程。なんの反応も示さない俺に愛してる?と問いかけてくるこいつは馬鹿なのだろうか。愛してる?んなわけあるか。吐き気がする。俺が何も答えずにいると女は顔を崩しその自信満々な鼻へし折ってあげる。といってテレビをつけた。別に今更何をテレビで叩かれようと怖くねーよ。そんなことがあいつを傷つける以上に怖いわけがない。
「速報です。女優の海上麗華さんが数週間前に病院に搬送されたことがわかりました」
情報によりますと御幸選手との交際のことで嫉妬したファンによる悪質な嫌がらせの可能性があるそうです。現場は。そのあとに出された現場に驚いて俺は目を見開く。そこはもなが働いていた料理教室だった。一度迎えに行ったから見間違うことはない。女はとなりでくすくすと笑いどう?鼻へし折られたんじゃない?と笑いながら自分のしたことを話した。わざと教室に行き、もなの生徒になったこと。料理中の鍋に薬をわざと盛ったこと。それを全部もなのせいに仕立て上げたこと。鼻高々く語る女の声なんて半分くらいしか耳に入らず俺はすぐに荷物を持って立ち上がり走ってそこを出る。後ろで女が何か言ってたが耳に入らなかった。自分の家にはマスコミが張り付いていて裏口から入ったら家は真っ暗で誰もいなかった。すぐにクリス先輩に連絡を取ってあいつどこいるかしりませんか?!と聞くとうちにいる。といわれて頭の中が真っ白になった。誤解するなよ。うちで保護しているだけだからな。といわれホッと胸をなでおろす。今から行きます。と言い切って電話を切る。車を走らせて仮住まいとしてると前に聞いておいた住所までいく。駐車場に車を止めてすぐにエレベーターなんて待ってる余裕もなく階段を使っていそいでもなのいる場所に走る。はやくはやく。ただひたすら走った。インターホンを連打するとなかからクリス先輩と倉持が顔を出す。何か言いたげな顔をしていたが今はとにかくもなだ。すいません。といって先輩を押しのけ、おいっ。と倉持の止める声も無視してもなをさがす。どこだ。どこにいる。奥の部屋のドアを開けるとソファーに腰がけているもなを見つけた。その周りには沢村や小湊、降谷が張り付き眉を下げてもなの様子を伺っていた。
俺を視界に入れるともなは一瞬驚いたがすぐに笑を作りお帰りなさい。と俺に笑を向けられる。その顔を見た瞬間すぐに飛び出してもなの前にでて直ぐにその体を抱きしめた。そんな笑い方して欲しかったんじゃねぇ。いつものように無邪気に笑ってて欲しかった。表情をころころと変え百面相するこいつの顔が好きだったんだ。
俺の前でだけは、強がんないで。そんな都合のいい言葉さえもなは受け入れぼろぼろと涙を流す。仕事、クビになっちゃったの。大好きだったのに、職場の仲間に嫌な顔されて・・・私何もしてないよ。なのになんで?那賀さんとの話もっなくなっちゃったよ。問題起こした料理人は使えないって上の人が言ったんだって。それに、近いうちに調理師免許だって剥奪される・・・。もう、もう何もなくって。覚悟してたのに、いざ報道とかされたら怖くなって。もうっ・・・どうしたらいいかわからないよ。
震える体を片腕で抱きしめて片方の手をもなのほほに沿わす。そして噛み付くようにキスをした。もなの怖い物全部を俺が絡めて取り外す。そんな気持ちで口づけた。なぁ、好きだよもな。愛してるよ。ごめんないっぱい傷つけて。ごめんないっぱい泣かせて。ごめんな勝手な嫉妬ばっかして。ごめんな。なぁ、俺のことまだ好きでいてくれてる?俺のことまだ愛してるって言える?お前がもし、まだ俺のことを思っててくれるならもう一回チャンス頂戴。頼むから、もう一回お前と一緒に居させて。俺がそうすがるともなは切なげに目を細めて好きだよ馬鹿。といって抱きついてきた。うん。ほんと馬鹿だよ俺。ごめんな。お前の怖いもん全部退治してやるから。だからちょっとだけ寝てて。やだ。御幸いなくなっちゃう。じゃぁ約束するから。目を覚ましたらちょっと出かけようぜ。ほら、この間行けなかった映画。まだやってるから。
一緒に行こう。俺がそう言うともなは泣きながらこくこくと頷く。優しく抱き上げて初めて沢村たちが席を外してくれていたことに気づく。自分の膝の上に横抱きにして座らせてまぶたや額。どこらかしこにキスの雨を降らせる。愛してるよ。何度もそう囁くとやっともなはホントに安心したように微笑んでゆっくりと眠りに就いた。そんなもなを俺はもう一度強く抱きしめ愛してると唱えた


本当なんだよハニー


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