沢村から話を聞いてから俺たちは青道のOBに連絡を回し、情報を集めるのを手伝ってもらうことにした。もしかしたら目撃証言があるかもしれない。あの女の本性を知っている奴が居るかも知れない。もなにはバレないようにいつももなのそばには誰かをおいてもながおかしくなったりしないかを見張っていた。これだけのことがあって正気でいられる方がホントはおかしいくらいなんだ。けどもなは自分の弱さを周りに見せようとはしなかった。友夢の前でも俺の前でも、クリス先輩の前で一度泣いたきり。あいつは泣かない。
ちょっと出かけてくるね。明日。突然そんなことを言われればいやでも何かあるんじゃないかと疑う。それを分かってかもなは困った顔をしてちょっと買いたいものがあるだけだよ。と言われたがそれすらも信じられなかった。俺がまだ怒っているのを理解して大きくため息をつくと過保護。といって頬を膨らませる。そりゃそうもなる。お前みたいに弱音をちゃんと言わない奴ならなおさら。すると携帯を取り出しひとつの日付を指差す。それをみて何を買いに行くのか理解して俺は顔を歪めた。あいつの生まれた日だ。そんなもの買う必要あるのか。俺が言いたいことがわかったのだろう。もなは困った顔をしておねがい。とつぶやいた。わかってる。俺にこれを止める権利はない。けど、けど原因はっ・・・。わかった。俺がそう言うともなは嬉しそうに笑いありがとうとお礼を言った
なんて言ってみても心配なのは心配なのでついつい後をつけてしまう。時間があるのが俺と純さんだけだったので二人で追尾することになった。もなは最初普通に雑貨屋などに行って一人でぐるぐるとお店を見て回る。それにちょっと安心したのも束の間。知らない男とカフェで落合い、何かを話し出す。なにか封筒を受け取るとその中身を確認し、もなはその人に頭を下げる。その相手も頭を下げてそのまま別れた。少し移動した場所でまた違う男ともなは落ち合った。そいつともカフェに入り何かを話し、また何かを受け取って同じようにして頭を下げてお別れ。次に落ち合ったのは綺麗な女だった。その女は途中で泣き出し、もなはその女を慰める。そして落ち着いてからその女ともわかれる。そして最後に一人の男と会う。その時だけは顔が少し険しかった。なにやら少しだけ立ち話をすると男のほうが去っていく。もなは少ししてからその場を歩き出す。俺と純さんはそこを押さえに行った。おい。と声をかけるともなは少し驚いたけどどこか悟っていたのか諦めた顔をしている。戻ってからでもいいかな?話すの?ああ。逃げないようにもなの手を握ろうとすれば一瞬びくっとしてよけられる。俺が驚いて固まるともなはもっと驚いた顔をして固まって今にも泣きそうな顔をする。何かにおびえるような顔
俺が無理やり手をひったくって反対の手は純さんが握った。すると少しだけもなは落ち着いてありがとう。といってやっと歩き出した。その手が震えていたことに俺も純さんも少しなからず驚いている。だけど、今はそれを聞き出す時じゃない。こんな状態のまま何があるかわからない外なんかに出しとくわけには行かない。安全な場所に入ってからゆっくりと聞けばいい。だから焦るな。そう自分に言い聞かせる。
クリス先輩の仮住まいにつくともなをソファーに座らせてホットミルクを入れた。それをもなに飲ませて少し落ち着かせてから話を聞き出す。もなはカバンから最初に今日受け取ったものを出して俺たちの方に見せる。そこにはあの女優が写っていた。その写真ん状況を一枚一枚説明され、俺たちはそれを聞いてもなが何をしようとしていたのかわかった。こいつは御幸を助けたかったんだ。写真は俺たちが調べようとしていた女の悪事がうつされている。だけどそれをどうやってお前が。ときくと最後の人覚えてる?と聞かれああ。と返すとあの人前に私のことストーカーしてた人なんだよね。といわれてますますわけがわからなくなる。前にその話は聞いた。なんでそんなヤツと会ってた。その人が教えてくれたの。あの女優がしてきたこと。その被害者との連絡先も。一目見れればいい。そうストーカーの人はいった。それで御幸を助けることが・・・ううん。取り戻すことができるなら安いものだって思ったの。その言葉を聞いて俺はもなと同じ高さになるまでしゃがんで背中にそっと手を回し、自分の方に引き寄せた。純さんも同じようにしゃがみこんで優しくそっともなの頭を撫でる。怖かった。きっともなの本心はそれだ。こんなにも震えて、顔を真っ青にして。本当は死ぬほど怖かったんだ。けど、御幸のために。そう思って必死に耐えてあんな男に会いに行ったんだ。助けたい、なんて身勝手な言い方ではなく取り戻したいというところがホントにこいつらしい。
「よく頑張ったな。もう、あとは任せろ」
「っ・・・でも御幸が」
「大丈夫だ。これだけのものと、俺らには青道のたくさんのOBがいる。」
「倉持の言うとおりだ。青道野球部の底力なめんじゃねぇぞオラ!」
正直、どんな理由だとしても御幸のしたことを全て許せるわけじゃない。けど、それでも一番辛かったこいつがあいつのことを本気でずっと信じてやってんだから。だから俺たちがあいつを攻めることはできない。けど、全部終わったら文句の一つや二ついってやる。大事な妹をこんなふうにされて黙っていられるほど俺は優しくない。例えそれで御幸が傷つくことになろうとも。


君が傷つくくらいならさ

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