クリスさんの仮住まいに着くと手を引かれて家の中に案内される。中にはなぜか栄純くんがソファーに俯いて座っていて慌てて声を掛けようとするとクリスさんに止められる。沢村。クリスさんがそう呼ぶとバッと顔を上げてこちらをみる。視線が合わさると栄純くんは号泣し出してごめんなさい。となぜか何度も謝った。どうしたの。と聞いてもなかなか栄純くんは言葉にできずにただ子供のように泣く。わけがわからないまま抱きしめて膝の上に座らせて抱えるような状態で慰めているとしばらくして大人しい寝息が聞こえた。
「沢村がな、御幸になにかあったとすぐに気づいたのに何もできなかった。お前が苦しんでいるのに気付けなかった。そう悔しがっていた」
「そんな・・・・。そんなの栄純くんのせいじゃ・・・」
「たとえそうであろうと、それでも気にするのが沢村だ」
沢村の話を聞けば、ホントに急にお前の言っていた通り態度が変わったらしい。だからきっとなにかある。俺たちがあいつを信じてやろう。その言葉にまた涙が出そうになった。お前の頼みでもあったが俺個人としても御幸に用事があるから今度会ってくる。なにか伝言はあるか?そう聞かれて出てきた言葉はずっと言いたかった言葉だった
クリスさんのひとつの部屋を案内されてその部屋にある大きめのベッドに栄純くんと二人並んでその晩はねた。久しぶりに感じる人の体温があまりに暖かくて・・・。その日はなんだかとても安らかな眠りだった。次の日起きると栄純くんはまだ隣にいて少し冷えるのか私の方に擦り寄ってくる。それが可愛くて優しく抱きしめながらここがどこかも忘れて穏やかな朝を過ごす。
「ずいぶんと穏やかな朝を迎えてるじゃねーか。」
なぁ、もな?恐ろしく低い声が聞こえて驚いて体を起こすと部屋の入り口には倉持が怖い顔をしてたっている。ひっ。と思わず情けない声を出す。ひ、人殺しそうな顔だよ!!あわあわとしていると倉持はゆっくり近づいてきてがしっと頭を掴まれる。全部話せ。あいつについて知ってることも、お前の身に起きたことも全部。話せ。隠し事なく話せ。わかったか?その言葉に恐怖のあまりこくこくと必死で首を縦に振った。するとよし。といって解放され頭をわしゃわしゃと撫でられる。隠し事しやがったら御幸のこと隠してることひとつにつき一発殴っからな。恐ろしい脅しに思わず苦笑を漏らした
突然御幸が約束を破ったこと。それを機に変わってしまったこと。ただ帰ってきたときに一度悲しそうな顔を見たこと。だから何かあると思ったこと。仕事で問題を起こしていること。その問題が御幸と熱愛報道されている女優とのこと。起きた出来事。だいだいすべてはなした。純さんのことを変なふうにいった以外。きっとバレないと信じよう
「お前の前に話してた、憧れの人との仕事ってのは。大丈夫だったのか」
あまりに倉持が悲しそうな顔をするから思わず嘘をつきたくなった。大丈夫だよ。心配ないよって。だけど、きっとばれる。だって日程とか全部教えちゃってるから。きっと勘のいい倉持を騙すのはそう長くできない。話し、なくなっちゃったんだ。精一杯笑ってみせよう。せめて大丈夫って意味を込めて笑顔を向けよう。そんな気持ちで笑みを作って倉持にでも大丈夫だよ。というと倉持は苦しそうな顔をしてばかやろ。といって優しく抱きしめてくれた。友夢ちゃんに悪いよ、こんなの。そう思った。思ったのにそれとは裏腹にわたしは倉持の服を掴んで何も言わずその胸に顔を埋めた。やっぱり、悔しいよ。それが精一杯強がった言葉だった


悔しいよって強がって

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