緊張のあまりうまくいきができない。まさかこんなことになるなんて、思いもしなかった。変な汗ばっかり出てきてああ、汗臭くなったらどうしよう。なんてどうでもよさげな事を考える。いや、私からすればかなり重要な問題なんだけど。どうしようどうしよう。何か話したほうがいいのかな?いやでもこれといって話題が・・・・。あ、とりあえずこの前は急なメールしてすいません?いやメールに急もなにもかな。え、でもなぁ・・・。あ、変なこと頼んですいません?いや、これは図々しいよね。お前誰だってなるよあの内容だし
「久しぶりだな。倉持の彼女の紹介の時以来だな」
「は、はい!クリスさんお元気そうでよかったです」
「お前も元気・・・とはいかないか」
目の下。クマできてるぞ。そっと目の下を指でなぞられてびくりと体が反応してしまう。そ、そんなにひどい顔をしているのだろうか。思わず苦笑をするとクリスさんは困った顔をして頭を優しく撫でた。久々の優しさに思わず涙腺が緩み、涙がこぼれそうになる。必死で歯を食いしばって耐えていると泣きたい時は泣けばいいんだ。と優しい声で言われてとうとう涙がこぼれた。御幸のこと、何があったんだ。わかりません。ただ突然帰ってこなくなって、それから変わってしまって。見苦しいって思われるかもしれませんが、わたしまだ御幸を信じたいんです。理由があるんだって思いたいんです。そうじゃないと、苦しくて死んじゃいそうで。身勝手ですけど、本人の口から別れたい。出て行け。って言われるまで待ちたいんです。こんなことになってもまだ、御幸が好きで。まだ可能性があるならって、縋ってしまって。そういうともう一度頭を優しく撫でられる。見苦しい訳無いだろ。お前が信じてくれるから、御幸もお前を信じれるし、頑張れる。大丈夫だ。きっとなにか理由がある。俺だってそう思う。あいつが、あんなにひとりの女に執着するのを俺は初めて見たんだ。あんなに優しい顔を出来るんだと、初めて見た時思った。御幸にとってお前はとても大切な人間だ。それは誰の目から見ても明らかだ。あの鈍感なさわむらですら気づいていたんだ。自信を持て。
優しい励ます言葉に何度も頷いて涙を流す。こんなふうに人前で泣くのは最後にしよう。みっともない姿を晒すのも、最後にしよう。御幸だってきっと何かを頑張ってるのだから。それなのに私がこんなふうに泣けば同情の目があつまる。そんなのおかしい。御幸の頑張りに誰も目が行かなくなるのは、おかしい。だからもう、泣かない。泣いちゃダメだ。泣くならせめて・・・御幸の前だけにしよう。
「そういえば倉持がとても心配していた」
「あー・・・最近返事してなくて。心配かけちゃったんだと思います」
「いま連絡したらどうだ?」
「携帯の電池、なくなっちゃって・・・」
既に動かなくなったそれを見せればクリスさんは苦笑してなら宿泊所についたら携帯をかそう。といって前を向く。宿泊所?そういえばわたしどこに向かっているのだろうか。歩道を歩いていたら、車のクラクションが鳴って、何かと思えばクリスさんで。乗るように言われて断るに断れずに今となった。あの、今何処に向かって?ああ、話してなかったな。俺が帰国中に暮らしてる仮の家だ。え、えぇ?!い、いやそんなところお邪魔できませんから!しばらく家事を頼む。いろいろ忙しくてな。まともなご飯を最近食べていないんだ。そんな言い方をされるとまた断りづらくて、もう一度あざといような角度でダメか?と聞かれればこちらが降参する他なかった。


イケメン様とは強者のことです


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