数日後、御幸と売り出し中のモデルの熱愛報道があった。その報道を見て青道関係者の人たちからいっぱい連絡が来ていたけれど全部にいつものように大丈夫です。なにか理由があると思うので、御幸を責めたりしないでください。と言い続け、やっと連絡の嵐が止む。この次仕事の報道が起きたりなんかしたらどうしようか。なんでも昨日の生徒は売り出し中のモデル。いろいろややこしいことになっているらしい。やはり穏便と言うのは嘘だった。同期情報によれば。もちろん仕事仲間たちはみんなわたしのことを疑ってないけど相手がどういうことをしてくるかわからない。だそうだ。いや、わかりきってる。本当は
でっち上げでもなんでもして、悲劇のヒロインになって。有名になろうっていうあれじゃないか。その足踏みだいにされるのが私。私が何をしたんだ。なんとも理不尽な世界である。そういえば御幸とそんな関係になった時も同じようなこと思ってたっけ。なんだかあの頃が懐かしい。あの頃と今、どちらがましだっただろうか。あの頃だったらそばに御幸がいてくれたな。なんて、馬鹿なことを考えた。
なんとなく、この先自分がどうなるのか察してきた。この女優の土台にされたあとの結末を。御幸がどうしていきなり態度が変わったのかなんて私にはわからないけどきっと理由があるのだと思う。もし仮に違う人が好きになったと言うなら彼は素直にそれを私に言うだろう。けど、一度も御幸からそんなこと言われてないし、聞いてない。世間がなんといおうともやっぱりわたしはあの人の口から言われることを信じたい。目の前でどれだけ傷つく言葉だとしても、その言葉だけを信じたい。なんて、ほんとはただ怖いだけなんだけどね。事実を知ってしまうことが。
携帯のバイブがなる。画面の文字を見て大きくため息をついた。あーあ、せっかく・・・。せっかくもらえたチャンスだったのにな。出る前に一度深呼吸をして、自分を落ち着かせる。この電話に出て、自分が泣いてしまわないように。通話が終わった瞬間。わたしはぼろぼろと汚く涙を散らかす。ああ、散ってしまった。淡い淡い夢だった。いい夢を見れたと思うべきなのだろうけど今だけはただ、泣いていたい。悲劇のヒロインを気取って
熱愛報道のおかげで御幸のマンションの周りにはマスコミの人やパパラッチ的な人たちが囲っていた。だからか、あの人があれから帰ってくることはない。連絡もない。一人、誰も帰らない家でただずっと自分がこれから落ちていくのを理解しながらぼーっとソファーに座っていた。テレビをずっと付けて、きっと映されるであろうと思っていた報道はとうとう私の予想通り画面に大々的に映される。御幸一也選手との熱愛で話題のあの女優が。そんなセリフから始まり大まかな情報だけが流される。報道では作ったものの中に何かしらの科学物質が混じっていた可能性があるとして調査中とのことだ。これも私が入れたことになるんだろうな。ひとごとのように見ていればやっぱり携帯は遠慮することなく鳴り響いている。でも一度だってあの人の名前はうつされない。そしてとうとう電池がなくなり携帯は静まり返った。それを見てホッとしてしまったことが悲しい
さて、今から何しようか。どうしようか。再就職先なんて決まるだろうか。うーん、それよりも今だけは現実逃避でもしてみようか。そうと決まればある程度のお金と必要最低限のものを握って家を出る。そのまま裏から出てとりあえず駅を目指して歩き出す。海、行きたいな・・・・。ちょっと今じゃ寒いけど。でも久しぶりに行きたい。大まかな目的地も決まり、少し気分も上がってきて鼻歌交じりに歩道を歩く。すると突然車のクラクションがとなりで鳴り響いた


大きな騒音


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