起きても御幸の姿はなかった。床に散らばった服を拾おうと体を起こすと自分の体からパサりと布が落ちる。なんだろうとてにとるとそれは御幸が昨日着ていたシャツだった。それを引き寄せてだきしめるとまだ御幸の残り香がして涙がこぼれる。苦しいの。悲しいの。何があったの。おねがい・・・泣かないで。携帯を出してつい最近登録したばかりの人のアドレスを出し、メールを送った。私はそれからしばらくそこから動けずにいた。
しばらくして倉持に飲みに行こうと誘われ断るのも不自然かと思い了承する。倉持は何か知ってるのかな。人のことよく見てるし、気づいたのかも知れない。飲み屋に入ると既に座っている倉持をみつけアルバイトの女の子にあそこと同席のものです。というと直ぐに中に入れてくれた。よぉ。と声をかけられ久しぶり。と返事を返し向かいに座る
「何かあったのか、お前ら」
やっぱり何かに気づいたんだろう。でもこの質問の答えは決まっている。何もないよ?それ以外ない。だってほんとに私には何もなかったのだから。倉持はもちろん納得していない。けど事実だ。そう繰り返すと大きくため息をつかれ、一人で抱えんなよ馬鹿。と言われる。違うよ、これは人を頼っていい問題じゃないだけだ。きっと御幸もなにかと戦ってる。その何かがわからないけど。
「あのさ、お願い事してもいい・・・?」
「ああ。あの馬鹿殴れってとこか?」
「ちょ、全然違うからね!ダメだよそんなことしたら!」
冗談かと思えば本気で舌打ちされた。どれだけ恨み買ってるのよあの人。あのね、多分これからいろいろな事が起きると思うけどね。倉持はどうかあの人の親友のままでいて。周りが何を言っても、御幸を信じてあげて。あの人、大事なことはひとりで抱え込んじゃうから。支えてあげて。チームメイトとして。お前、ほんとにそれでいいのかよ。うん。いいよ。・・・・わかったよ。お前がそう言うならそうしてやる。つか、親友なんかじゃねぇよ。今更そのことか。なんて言いながら笑うと倉持もどこか安心したような顔をした
そのあとはくだらない話と友夢ちゃんの話を聞いてごちそうさま。といって店を出る。悪い。今日これから用事あっから送れねぇ。用事?こんな時間から?・・・ちょっと離れてるところで友夢が会社のやつらと飲み会してんだよ。その迎えだ。恥ずかしそうにそっぽを向く倉持に思わず吹き出してしまう。ほんとこいつも友夢ちゃん大好きだな。行っておいで。私は大丈夫だよ。電車でちょっとの距離だし。悪いな。なんかあったら連絡しろよ。夜おせぇんだからな。そのまま別れて駅の方に向かって歩く。いいな。なんだか幸せそう。羨ましい・・・。なんてちょっとだけ妬んでしまった。いやだな、こんな自分。ちょっとこの近くは下品なホテルもあるので警戒しながら歩いていると見覚えのある背中を見つけた。だけどその隣には見知らぬ女性もいる。そのふたりを目で追っていると二人はそういったホテルに肩を組んだまま入っていった。ああ、ヤダな。なんで・・・なんで今そんなの見ちゃうかな。
その背中にかけれなかった名前が頭の中で響く。何度も何度もよんだけど彼がそこから出てくることはない。それからしばらく私はその場を動けずにただひたすら泣き続けた
次の日、きみとその女性はテレビで熱愛報道されているだろう

呼べなかった君の名前


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