それはほんとに突然のことだった。今晩帰らない。突然そんなメールが来た。夜は一番遅い映画を見に行こうと約束していたのに。残念。そう思いながらも無理しないでね。とメールを打って携帯を机の上に置く。なんだろう。胸がざわつく。もう一度メールを見るとなんだか違和感を感じた。どこか、いつもの御幸と違う・・・・?何かあったのだろうか。そんなふあんに襲われる。きっと気のせいだ。そう自分に言い聞かせた。けどそれから一週間御幸は家に帰ってくることはなかった。
あの日、朝出て行くまでは普通だったのにな。なにかしちゃったかな。そう思いながらも今日も一人で大きなベッドに寝転がる。いつもなら隣にあったものがない。この喪失感はなんと言えばいいのだろうか。倉持にはもう彼女がいる。気軽に頼るのはよそう。栄純くんたちは必要以上に心配をかけてしまう。先輩たちに頼れば御幸の面目が立たないだろう。これはわたしと御幸の問題。自分たちで解決しなきゃ。でももし御幸の身に何かあったのなら・・・・。あの人に頼ろう。そう胸の中で決意した
久々に御幸が家に帰ってきた。お帰りなさい。と声をかけてもそっけなくああ。と返事か帰ってきて胸がずきっと痛む。晩ご飯できてるよ。とそれでもめげずに声をかければ外で食ってきた。といわれ、個室にこもられた。やっぱり、なんだかいつもとちょっと違う。ドアを軽くノックして御幸。と声をかける。なに。といつもとは違う冷たい声が帰ってきて言葉が喉で突っかかる。どうしたの?なんて私が言っていいセリフじゃない。なんとなくそう思った。何かあったら、周りをちゃんと頼ってね。私はいつもそばにいるよ。その言葉に返事はなかった。
それからしばらくたっても御幸は冷たい御幸のままだった。最近では声すらきいてない。話したくない。お前とは。そう言われれば声もかけれなくて書き置きするのが唯一の手段だった。ご飯。置いてあるからね。そうかきおきしてもキッチンに置いてあるご飯がなくなることは一度もなかった。そのご飯を見るたびに悲しくなって泣きそうになってうずくまった。なにがいけなかったのかな。ひたすらそればかり考えた
お前、御幸と最近どうだ?純さんの突然の言葉に一瞬驚いて肩をびくりとはね上げた。どうせうっとおしいくらい引っ付いてくんだろ。といつもの調子で言われて私は苦笑してみせる。もう随分と触れてないし、声も聞いてない。だんだんと視線すら合わせてくれなくなった。嫌われたのだろうか。何度もそう思ったけれど、いくらたっても御幸が出て行け。や嫌いだ。なんて言わないからバカみたくそれをいいことに別れという選択肢に目をやることはなかった。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます純さん」
お礼を言うと純さんはなぜか私のことをじっと見る。そしてなぜかわしゃわしゃと撫でられた。無理すんなよ。何かあったら頼れ。そういって去っていく。その言葉に思わず泣きそうになって唇を強くかんだ。まだ、まだ頑張れるもん
今までが幸せすぎて突然のできごとに心と頭が追いつかないだけだ。もう少ししたらちゃんと整理が付くよ。そう自分に言い聞かせてマンションのエレベーターに乗り込む。カバンから鍵を出して鍵を開けると部屋の中に明かりが灯っている。珍しい。いつも私より遅いのに。ただいま。そう声をかけるとひどく鋭い目をした御幸がいた。びくり。と肩をはね上げてしまう。まるで拒絶しているようだ。これじゃ。
「彼氏以外の男とこんな時間まで随分楽しんだんだな」
「ちがっ、今日は純さんがいつものお礼にってご飯に連れて行ってくれて」
「へー。それでホテル行ってきた?どう?よかった?俺以外は初めてだろ?」
「なに、・・・言ってるの・・・?」
言ってる意味がわからない。純さんはそんなんじゃない。そんなこと、御幸が一番知ってるはずだ。もし私にそういう気持ちがあったとしても、大事な後輩の恋人とそんなことするような人じゃない。ちょうど溜まってたから俺の相手もしてよ。いきなり乱暴に手を引っ張られ、大きめのソファーに押し倒される。いたっ。といってもお構いなしに御幸は私の服を剥ぎ取る。いつもの御幸じゃない。そうわかってても振り払うことも拒否することしなかったのは、御幸の目が苦しいと訴えているように見えたからだ。どうしたの。あのときやっぱり私はそう聞くべきだった。その時あのとき勇気を出さなかったことを初めて後悔した


苦しいって言って


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