家に帰ってやけ酒をしていると携帯に留守電が入っていることに気づいた。誰だろうと思って確認すると予想外の人間の名前に驚いて思わず吹き出しそうになる。なんだろ。何言われるんだろ。突然の連絡に怖くてなかなか留守電を聞く気になれない。別れ話だったらどうしよう。そんな不安もある。けどきかないわけにもいかないのでとりあえず限界近くまでお酒を飲んでから聞くことにした。もしもの時、泣いたのはお酒のせいにするために。
「この間はゴメンな。俺が悪かった。もうもな不足で俺死んじゃう。早く帰ってめちゃくちゃに抱かせて。」
留守電のメッセージに思わず赤面してしまう。久しぶりの優しい声に本当に泣きそうになった。わたしも会いたい。そうすぐにメールを入れた。会いたい。会いたいよ。さみしいよ。直ぐにかかってくる電話に通話ボタンを押してもしもし。と声をかける。よぉ。と聴こえてくる声がひどく切なく思えた。会いたい。ただその言葉が漏れる。会いたい。もう一度同じ言葉をタダ言い続けた。お酒のせいにしてしまえ。そんな考えもすっかり忘れて同じ言葉をなんどもなんども繰り返す。あと10分待って。やだ。え。やだ。待ちたくない。会いたい。今すぐがいいっ。おま、そんな可愛いことなんでこういう時に言うかな。どんだけ頑張っても5分かかる。だけど全力で行くから。会いに。
そこで通話が切れてひたすら分けもん分からなく泣いているとガチャガチャと乱暴にドアの鍵を回す音が聞こえてすぐに見知った人間が顔を出した。御幸っ。すぐに飛びついてぎゅぎゅうと抱きつけば優しく抱き上げてくれる。ああ、もう。なんでこんな可愛いことしてくるかな。お前は。酒の力って恐ろしいわ。違うもん、お酒のせいじゃないもん。わたしの意志だもん。わかったわかった。とりあえず手洗うからおとなしくしとけよ。抱き上げられたままキッチンに行ってそこでみゆきは手を洗い、簡単にうがいを済ませるとすぐに私にキスをする。食べられるようなキス。深くて息することすら忘れてしまうほど、よってしまいそうな甘いキス。酒くさいな。くちんなか。貰い物のワインあけてたんだもん。なんかよく見たらワインボトル2本転がってるな。つか缶も結構転がってんだけど。あーあ、これそんな度数弱くねぇのに。明日ツライの自分だぞ。仕事お休みだもーん。もんもんって、子供に戻ってんのか。呆れたような口調なのにひどく優しい顔をする。もっともっととキスをねだればその表情とは裏腹にひどく荒々しいキスをされる。
「な。会いたかった?」
「会いたかった」
「そっか、俺もすげぇ会いたかった。もう今日優しくやれないわ」
「しなくていい」
しなくていいから、お願いだから離さないで。ぎゅっと抱きついてそうねだれば御幸は黙って寝室に向かいベッドの上に私を下ろす。すぐにまたキスをされ、服の隙間から温かな手が私の肌を這う。その感覚がくすぐったくて身を攀じれば抑えるように体重がかけられた。欲望をやどした目と視線が絡み合い、どちらともなくキスをして体を抱き寄せる。それを合図に御幸は宣言通り、優しくはないけどとびきり甘い夜を過ごさせてくれた
朝。気だるいからだを動かすとすぐにぎゅっと体に巻きついた腕が私の体を縛る。おはよう。と声をかける前にちゅっと項にキスをされた。
「たとえお前と野球を天秤に図ることがあっても、俺が好きなのはお前だけだから」
だから、誰に何を言われても俺の言葉だけ信じて。俺の言うことだけを真実だと思って。それはきっと私が昨日ねだった言葉への返事だろう。当たり前だよ。私はたとえ御幸の言葉が嘘で他人の言葉が真実だとしても、御幸の言うことだけを信じるよ。自ら擦り寄れば優しいお日様の光と御幸のぬくもりに挟まれた。





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