短編 | ナノ




「いらっしゃい。」
出迎えてくれたのは予想通り燭台切さんだ。俺は警戒しながらも失礼しますと言って中に入る。入って1番驚いたのが子供のような笑みを浮かべて俺の作った抹茶のガトーショコラを頬張って食べている鶴丸さんを見つけたことだ。
「なんで、鶴丸さんが?」
「あれ?ちゃんと僕、鶴丸さんも一緒って言ったけどな?」
いつだよ。聞いてない。そんな俺の心の声に答えるようにお茶と共に待って言ったじゃないかと言われる。ん?つまりお茶って言うのはガトーショコラのことで、ガトーショコラを食べてるのは鶴丸さん。食べさせる約束をしたいた。つまりお茶は鶴丸さんのことを指していたのか。いや、わかるわけない。俺は探偵か。
「思い出の場所ってどういう意味ですか?」
「ここには主の私物が詰め込まれてるんだ。君とのやり取りをした手紙とかね。」
「・・・いつ知ったんですか?俺の事。」
「歌仙くんに話しただろう?」
「歌仙さんは言いませんよ。あの人は全て自分の胸の内に秘めて終える気ですから。」
和泉守兼定達は知らなかった。俺の話を聞いて初めて知り、それでも堀川は疑っていた。歌仙さんは俺の身元を完全に信じていたからもし聞いていたとするなら疑われることは無かったはずだ。
「どうして俺の事、知ってるんですか?」
「簡単なことだよ。今日、君が作った甘味は主が作ったのと同じ味、同じ手順だった。」
「そんなの、同じレシピを見てればそうなりますよ。」
「抹茶のガトーショコラ、あれ抹茶のパウダー多くて作り方難しいよね。僕も作ってみたくて主に作り方を聞いたんだ。その時に言ってたよ、『これはオリジナルレシピ』だって。」
「下手なことをしたのは俺だったってことか。気をつけます。」
自分の軽率な行動に大きなため息をつく。そんなんでは今後どうする。姉を助けると誓ったくせにそんな簡単にボロを出してしまうなんて。
少しの間自己反省してから切り替えて、姿勢をその場で正して改めて挨拶をする。此処にやってきた見習い審神者としてでは無く、彼らが愛してやまない審神者の弟として。
「改めて初めまして、文通の相手をしていました弟です。真実を知るために来ました。」
「ようこそ弟くん、改めて歓迎するよ。」



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