短編 | ナノ




怒鳴っても、ひでぇこと言っても
いつだってかえってくるのは笑顔だった


「もう少しましなもんつくれねぇのかよい」


「すいません。次は、もっと頑張ります」


「ったく、いつになったらマシなもん作れるようになるんだよい」


俺の冷たい言葉もなまえは笑っていつだって謝った


ホントは、不味くなんてない


上手いと思ってる


だけど俺は素直に褒めれるような器用なヤツにはなれなかった


「マルコ」


「なんだい、サッチ」


さっかの会話を聞いていたであろうサッチは呆れた顔をしていた


自分でだってわかってるよい


でも、どうしても


あいつの笑顔をみるたびにそれがてきなくなるんだ


あの笑顔が俺じゃない誰かに向けられるのをみるたびに、感情がおさえきれねぇ


「ガキか、俺は」


情けなさすぎる自分


それがまた歯がゆく、そしてなまえにまたあたっちまう


あいつは自分が悪くないのにいつだって謝って


こんな俺に笑いかけてくれるんだ


俺の方が年上なのに…

まるで立場が反対だ







荷物の確認のため倉庫に向かって歩いていると声が2つ聞こえてきた


「おっ!今日のは新作か?なまえ」


「うん。軽くおつまみにでもできるチーズ&ベーコン入りクッキー」


こっそり覗いてみるとそこにいたのはなまえとエースだった

「これいいな!上手い!」


エースの言葉を聞くとなまえは嬉しそうに微笑んだ


そしてありがとうと言った


その顔を見た瞬間俺の胸がひどくざわついた




結局、整理を終わらせたときには夜中になった


家族はすでに見張り以外寝静まって妙に俺の足音が大きく聞こえた


「腹、減ったな…」


一人つぶやいて昼間のことを思い出して眉間にしわがよった


こんなにイラつくのは空腹のせいだと無駄に誰も聞かない言い訳を言って誰もいないであろう食堂に向かった


そう、誰もいないはずの食堂に


「あ、お疲れ様ですマルコ隊長。」


ニコッと笑顔を向けてきたのは他の誰でもなく、なまえだった


なまえは「お腹すかれてますか?」と聞いてきて動揺した俺はすなおに「よい」とかえした


それを聞くとすぐに用意を始め、あっとゆうまにチャーハンをつくり俺の前に持ってきた

「どうぞ」


ニコニコ笑うなまえを見て少し不思議に思いながらもチャーハンを食べた


「!」


「どうてすか?今回はベーコンを甘めに煮てから焼いて、ガーリックを隠し味にしてるんです」


期待の含まれたその瞳をみて、また昼間のことが思い出された


俺が、少しでも素直になれてたら…


あんな温かな笑顔を俺に向けてくれるのかよい?


「まぁまぁだな」


何言ってんだ俺っ


せっかくのチャンスを…


自分に呆れていると「ふふ」と笑い声が聞こえてきた


ちらりとなまえを見れば穏やかに、優しく微笑んでいた


「次はもっと頑張りますね」


そういって今までで一番眩しい笑顔を俺に向けた


君の笑顔をみるために
(もっと素直になれたら…)

(サッチ隊長!初めて「まぁまぁ」って言われました)
(!そりゃよかったな)
(はい!)
 


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