短編 | ナノ




好き、だったんだ。ちょっと大人っぽい雰囲気を持ちながら、子供っぽさの抜けないあどけない笑顔とかイタズラをするときの楽しそうな顔。面倒見の良さとか、すごかった。後輩に慕われて、仲間に慕われて、同期にも慕われる。そんな黒尾を見つめてもう3年目に突入した。
恋人がいた。カワイイ子。その子と別れてもまた恋人ができた。綺麗な人。モテモテの黒尾に毎年隠れた好意を渡せるのは義理チョコと称したバレンタインのチョコと、誕生日だけ。この気持ちはずっと私の中にしまってる。
好きだったんだ。すごく。大好きだった。嬉しそうな顔をしてたら私も笑った。一人で悩んでる時は背中を叩いた。試合に勝ったら声を一緒になってあげて、負けたら一緒になって悔しがって次につなげた。いい先輩がいなかったから、自分たちはいい先輩になろう。そういえるところがカッコ良かった。
「でも、もう潮時なんだろうな・・・」
「やめんのか?」
「うーん、なんていうか」
「なんだよ」
「馬鹿らしくなったんだよ。」
「は?」
いつだったか私の気持ちに気づいた夜久はよく話を聞いてくれた。この気持ちを知ってるたった一人の友人だ。ぶれずに一途に思っていたことを知ってるから今言った言葉に納得がいかなさそうな顔をしている。
でもね、ほんとに馬鹿らしかったんだ。ずっとほんとにずっと同じなんだ。私はあいつの友達以上にはなれない。そう、わかったから。
「あいつがね、この前言ったんだ。ずっとお前とは友達でいれる気がするって」
「それは別に本心で思ってることだろ」
「わかってる。だから、辛かった。わたしはずっと友達なんかでいたくなかった。」
せめて私が男の子なら、バレーが上手かったら、観察眼に優れていたら、仲間って言ってもらえたかな。友達じゃなくてさ、恋人になりたかった。それが無理なら仲間になりたかった。マネージャーやって3年目だけど、私は友達にしかなれなかった。
黒尾にまた今日新しい恋人ができた。小動物を思い浮かばせるような女の子。カワイイ子。その報告を受けた時に言われた言葉はあまりにも残酷だった。悔しかった。
この窓からはよく見える。新しい恋人と仲慎ましくお昼を過ごしている黒尾が。やっくん。なんだ。私はやっくんの仲間?狡い聞き方だ。優しい夜久はそんなのyesとしかいえないだろう。それでもこの言葉を肯定されたかった。
「んなわけあるか!」
「えっ」
「最高のマネージャーさま、最高の仲間だろ!」
「っ夜久・・・!」
「言っとくけどお世辞じゃねえからな!俺はそんな嘘言わない」
「うん。ありがとう。・・・夜久、あのね」
「なんだよ」
「わたし、本当に黒尾のこと好きだったんだよ」
「おう。それもしってる。」
苦しくてもう耐えれない。だから逃げていいかな。初めて吐いた弱音に夜久は一緒に逃げてやる。とニシシってイタズラするような顔をして笑う。だから私も笑って夜久に部長に渡す用の休部届けを預けた。

ラストレターフォアユー
この恋心を捨てるためのお休みをください


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