紅明と名も無い姫

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「あなたはとても素敵なお人ですよ、紅明さま」

そう言ってくれた彼女は今日、命を絶たれることになっていた

理由は家全体で反逆を企てていたから

見せしめとして一族皆殺しだそうです。

私は昨日、訪れた牢屋の出来事を思い出した

牢屋に入って彼女の前に行くと彼女はゆっくりと顔を上げた

「最後にもう一度問います。どうしてあのようなこと企てたのですか」

あの企ての主犯は彼女となっていた

そう、家元が自白したからである

「ほんに、美しいお人です紅明さま。どうかあなたが汚れることがありませんように心から願っております」

そう言って彼女は微笑んでそれ以上何も言わなかった

ゆっくりと彼女は死刑台を登る

その姿はとても凛々しくて、やはり姫なのだと思いました

「好きです、紅明さま」

最後にそんな小さな声が聞こえた

その瞬間振りかざされた腕に私は咄嗟に体が動いた

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