※高校生

 好きな人ができたからって彼氏にフラれた。いつから私はあんたの好きな人じゃなくなったのよ。私はちゃんと、あんたのこと好きだったのに。あーあ、しかも何でそれをわざわざ生理痛が重い日に言うかな。元々よくない気分はもはや最悪。面倒くさい女になりたくはなかったけど、ただの八つ当たりとしてさっきまで彼氏だった男の頬を思い切りビンタしてやった。男は気が済んだかよ、みたいな顔していなくなった。むかつく。突然すぎんのよ、一昨日はまだキスしてくれたくせに。目の前が涙でぼやける。情けない、悔しい、あんなに好きだったのに。鼻をぐずぐずいわせながら溢れる涙を乱暴に拭っていたら、携帯の着信音が鳴り響いた。メールじゃなくて電話だからいつまでも止まない、こんなときに一体誰だとろくに名前も見ず出た。

「今取り込み中!」
『えー、マジか』

 あ、なんだ不動か。タイミングいいじゃない、たくさん愚痴ってやろう。ぶちまけてすっきりして、また新しい恋を探したい気分。失恋の傷は新しい恋で癒すのが一番だって誰かが言ってた気がする。

「不動聞いてよ」
『聞くけど、何、お前泣いてんの?』
「彼氏にフラれた」
『…あーね』

 不動の反応は薄いけど、ただ話を聞いてくれるだけで私はすごく楽になった。長々と愚痴を言っていたらいつの間にか涙は乾いた。

「もうほんっと腹立つ!」
『まあ、小鳥遊が怒るのも分からなくはねぇな』
「でしょ」

 さっきまでズゥンとお腹を苦しめていた生理痛も気にならなくなっていて、不思議だなあと思った。不動のお陰かもしれない、今度会ったら何か奢ってあげようかなって考えるくらいには機嫌が良い。

「聞いてくれてありがと、気持ちに整理ついた」
『どーいたしまして』
「で、あんたは私に何の用だったの?」

 不動はあーとかんーとか唸って、それから少しだけ早口に言った。

『今度の日曜どっか行こう』
「…別にいいけど」

 今まで二人で出掛けたことはない、だから何となくこっぱずかしい感じがした。時間と待ち合わせ場所を決めながら、お互い変に緊張してるのが分かった。

『かわいい格好して来いよ』
「何それ、デートみたい」
『じゃあデートってことで、またな』

 一方的に電話を切られた。何よそれ、じゃあデートでって、そんな風に言われたら。

「嫌でも意識するわよ…」

 胸がざわつくような感覚、恋の前兆?まさか不動に?ありえない、そう思いながらもわくわくしてる。元彼とお揃いのストラップ。それを見てももう何も感じない。悲しさも悔しさも苛立ちも、どこか遠くに行っちゃった。するりとストラップを携帯から外しゴミ箱に放った。ばいばいさっきまでの私。さて準備はできた、あとは恋をするだけね。初デート五日前の出来事。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -