走る度、風丸の長い髪が揺れる。いつ見ても綺麗だなーって、そんなことを考えていたせいで豪炎寺の放ったシュートが俺の脇をすり抜けゴールに吸い込まれた。しまった、今は練習中じゃないか。

「何ぼーっとしてる」
「わ、悪い豪炎寺!」
「風丸に見惚れすぎだ」

 苦笑う豪炎寺に俺は赤くなるしかなかった。風丸も豪炎寺も他の奴も、俺はみんな好きだ。けれど風丸への好きは他の人へのそれとは少し違うと気付いたのはつい最近のことで。その気持ちを風丸に正直に伝えると「俺も円堂と同じ気持ちだ」って言ってくれた。嬉しくて抱き締めたら今まで見たことがないくらい顔を真っ赤にして、すごく、かわいかったなあ。風丸のことばかり気にしてなかなか集中が続かないまま今日の練習は終わってしまった。キーパー練習に付き合ってもらった豪炎寺には悪いことをした、シュート練習になんてまったくならなかっただろう。

「お疲れ、円堂」
「風丸もお疲れ!」

 グローブを外して大きく伸びをしていたら、風丸が俺の傍に走ってきた。最近はどうしてか、近くにいるだけで心臓が速くなる。変なんだ、こんなのは初めてで、俺はどうしたらいいんだろう。

「円堂?どうかしたのか」
「え、いや、何でもない!」

 お前のことばかり考えてサッカーにさえ身が入らない、なんて言えるはずもなく。

「練習中も心ここに在らずって感じだったじゃないか」
「ちょっと考え事しててさ」
「そうか、相談ならいつでも乗るからな」

 風丸はタオルで額に滲む汗を拭った。何ていうか、綺麗だ、それに色気もある。こんなことを思ってしまうのはおかしいのかもしれない、でも俺だって健全な中学生男子だし…あ、男に色気を感じるのは健全じゃないのかも。長い髪が少し張り付く首筋を汗が伝った。うわ、えろい。

「ひッ!」

 風丸が小さく悲鳴を上げた、どうしたんだ、と他人事のように思ったけど、冷静になれば原因は自分にあった。無意識の内に俺は風丸の首に、キスしてたんだ。啄むようなキスを何度も、どうしよう、止まらない。汗と風丸のにおいがして、頭がクラクラしそうだ。

「ぁ…え、んど、待っ……え、円堂!」

 肩をぐっと押されて、俺は漸く離れた。風丸は恥ずかしがりながらも怒ってるみたいだ。それもそうだろう、みんなのいる前で俺が突然首にキスをしたんだから。

「何してっ…こんなとこで、しかも、汗とか……汚いだ、ろ…!」
「あ…えと、ごめんな。でも俺、やっぱ風丸が好きなんだよ、すっげー好き」

 風丸は何か言いたげに口を動かしたけれど上手く言葉は出て来ずに、細く長く息を吐いた。

「……そんな風に言われたら、怒るに怒れないだろ…」

 ああ俺は、風丸のそういうところが好きだ。というより嫌いなところがないんだと思う、本当に。なんだかもっと困らせたくなってきた、うん、今度はその口にキスがしたい。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -