「なあ源田、何で男同士は結婚できないんだ?」

 後ろから不動の腹に手を回し抱きしめる格好で座り、二人で大して面白くないバラエティー番組を見ていたら不動がそう言った。

「アメリカでならできるぞ」
「そういうこと言ってるんじゃないって」

 少し拗ねた口調になって不動はチャンネルを替えた。今の時間帯は特に何もあっていないようで、次々と画面が切り替わっていく。

「だっておかしいだろ。好きになった相手が同性だろうが好きなのは同じなのによ」

 不動は自分の左手を口元に持っていき親指の爪を噛んだ。考え事をしているときや苛立っているときの癖で、小さい頃からなかなか直らないらしい。俺が不動の左腕を掴んでやめさせると、指摘されたのが気に食わなかったようで俺の指をガジガジと噛んできた。

「痛い」

 甘噛みでも犬歯を立てられれば痛くないわけもなく、しかし不動はやめる気配がない。仕方なく別のことに意識を移そうと未だ不動の右手に握られたままだったリモコンを奪った。その瞬間さっきより更に歯を立てられて鋭い痛みがはしった。

「……わりぃ、」

 不動が謝罪したところをみるとたぶん血が出たんだろう、今度は舐められたり唇が押し付けられている感覚がする。俺は手を見ることなくテレビ画面に視線を向けチャンネルを替える、そういえば今日ニュースを見てないなあ。不動はようやく俺の指に飽きたようで、最後にペロリと一舐めされた。そこを見てみれば人差し指の第二関節あたりにうっすらと血が滲んでいて、地味にヒリヒリと痛む。指に付いた不動の唾液を拭き取ろうとティッシュを探したが生憎手が届かない位置にある。不動が俺の胸に背を預けているから立ち上がるのも何となく気が引けて、こっそりと不動の服になすり付けておいた。

「何で結婚できないんだ」

 そうだったその話をしていたんだ。ニュースのチャンネルにするとちょうど天気予報をやっていた。今日は一日曇っていたから、明日は晴れると良いんだが。

「不動は結婚したいのか?」
「結婚したいってか、これからも一緒にいれたらって、思ってんだよ…」
「結婚なんて紙切れに名前書いて判押すだけじゃないか。そんなことしなくたって俺はお前とずっと一緒にいるつもりだ」

 不動は突然俺の方に体を向けて、あっという間に俺は押し倒されていた。勢い良く倒れた所為で背中が痛い。太腿に跨って不動は俺を見下ろした。

「源田って天然タラシだよなー」
「……よく分からないんだがとりあえず退いてくれ」
「やだ、シたい」

 強引に口付けされ舌を絡め取られる、いつもこいつはいきなりスイッチが入ったみたいにがっついてくるから困ったものだ。どうやって形勢逆転しようか。不動の服の裾から手を差し込んで脇腹を弄る。予報によれば、明日は晴れらしい。




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