「…なあ小鳥遊、ほんとにここですんのかよ?」
「別に誰も来ないわよ、授業中なんだから」

 理由はない。何となく不動を部室に引きずり込んでそんな雰囲気にしてみた。突然のことにたじろぐ不動を床に押し倒して上に跨る。満更でもないのかあまり抵抗してこない、これはなかなか、いい眺めかも。

「なんつーか…学校でするのってちょっと…な」
「いいじゃない、背徳感とかスリルがあって」
 
 最近は暑くて制服の上着は着ていない。自分のブラウスのボタンを上から順に外していく。目のやり場に困ってる不動の姿は見ていて何だか可笑しかった。ブラウスを脱ぎ捨て下着とスカートだけになると不動が唾を飲み、私はそんな男のカッターシャツのボタンを外してやる。

「自分で脱ぐ」
「やだ、私がやりたいの」

 シャツの下に半袖なんか着ていて少しだけ冷めた。ボタンを全部外して、中の半袖の裾から手を入れる。

「ちょ、ちょっと待て」

 脇腹に手を這わせていると不動が手首を掴んできた。興醒めもいいところよ、一体何が気に食わないのか。

「どうしたんだよ、発情期?」
「どーでもいいじゃない。いい加減黙って流されなさいよ」

 睨みつけると不動は諦めたように手を放した。半袖をどんどん捲り上げると白い肌が露になった。不動が肘を付いて半身を起こそうとしたから一度腰を浮かし、起き上がった不動の足の間に座り直す。不動は自分で半袖を脱ぎ去ると顔を近づけてきて、私はその顔の前に手を出して拒絶した。不満そうに眉間に皺を寄せているけどそんなの気にせず目の前の左鎖骨に指を滑らせ、唇を落とす。何度も口付けながら偶に甘噛みすると不動が息を詰めるのが面白い。

「てめぇ、遊んでんだ、ろ」
「遊んでないわよ、鎖骨フェチなだけー」

最後にもう一度指でなぞり、そのまま手を下に伝わせていく。ゆっくり、わざと煽るように。不動の手が私の腰を怪しい手付きで触り始めて、漸くその気になったらしい。でも結局私たちは中学生なわけで、お互いの妙なたどたどしさが恥ずかしかった。不動の胸の辺りに触れたとき、その鼓動が伝わってきた。普段より速いであろう脈拍、手を当てたまま不動の顔を見る。

「ドキドキいってる」
「当たり前だろ、ばか」
「…ねぇ、不動」

 不動が私の下着のホックを片手でぷつりと器用に外す。慣れたような手付きだけど少しだけ震えていた。

「あんたの心臓を突き刺すのは私だったらいいのにね」
「はあ?」

 肩紐をずらそうとしていた不動の手が止まる。きっと私が何を言いたいのか理解できないんだろう、私だって分からない。ただ、この心臓を止めるのが私だったらいいのにって、そう思っただけ。心臓の位置に爪を立てると痛みから不動が顔を顰めた。ガリっと小さく引っ掻けば皮が剥けてうっすらと血が滲んできた。そこに唇を寄せると、やっぱり心臓は動いていた。

「いつか止めてあげる、私が」
「意味…わかんねぇし」

 お互い手が止まってしまって、何とも奇妙な空気が流れる。

「続きすんのかよ」
「お好きにどうぞ?」

 笑ってみせれば不動が覆いかぶさってきて、私はされるがまま後ろに倒れる。

「不動の心臓、私に頂戴?」

 唇が重ねられる直前に強請ると、不動は少し間を置いて答えた。

「俺の全部をやるから、小鳥遊の全部を寄越せよ」

 ああ、そういう等価交換は好きじゃないって言いたかったのに、唇を塞がれて何も言い返せなかった。あとはもう、快楽に溺れるだけ。




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