「きっどぉくーん!今日も愛してるぜー!!」

 不動の朝の挨拶は決まってこれだ。登校した途端にそう言いながら抱き付いてくるから今では学校のいい見世物になっていて、もはや一種のネタだ。ひとつ厄介なのが不動が本気だということ。

「鬱陶しい、離れろホモ」
「今日もつれないねぇ鬼道くんは」

 いつも冷たくあしらってるが、事実俺は不動が好きだ。ただ毎日嘘を重ねているだけで。そうしていたらいつの間にか、本当のことを言い出せなくなっていた。つくづく自分も馬鹿だとは思うが、そんな俺に性懲りもなく好きだといい続ける不動も大概だ。


 そして今日はエイプリルフールという日であって、つまり普段嘘つきな俺は本当のことを言えるというわけだ。なんて自分に理屈を言い聞かせて不動に気持ちを伝えようとしている。いつまでも不動が俺を好きでいてくれる保証なんてない、だから早く、真実を。

「鬼道くんおっはよー、今日も世界一好きだ!」

 その笑顔が何よりも好き。毎朝抱き付いてくる行為も嬉しいし、帰り際の少しだけ寂しそうな顔も全部全部、本当は大好きで。不動に後ろから抱き付かれた状態のまま、俺は小さく呟く。

「俺の方がお前のことを好きだ」

 不動は素早く俺から離れて、すぐに納得したような表情になった。

「あぁ、エイプリルフールだからか。本気にするとこだったじゃんかよ」

 あまりに切ない笑い方に心臓が苦しくなる。俺が嘘をついていると思っているらしい。今日がエイプリルフールだから。今日はエイプリルフールなのに。嘘つきな俺が唯一正直になれる日なのに。

「でもまぁ、嘘でも嬉しいかな、役得役得!」

 馬鹿じゃないのか、こいつはなぜ気づかない。やっと初めて言えたというのに。

「いつか絶対まじで好きって言わせてみせるから、覚悟しとけよォ?」

 どうして、どうして。「嘘じゃない、本当だ」の一言が口から出ない。柄にもなく泣きたくなって、腹いせに不動の足を踏んでやった。




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