「お前って鬼道のこと気持ち悪いくらい好きだよな」
「ああ、勿論」

 そう即答すると不動は心底嫌そうな顔をした。俺の答えくらい予想するまでもなかったんだから、わざわざそんな顔しなくてもいいと思う。そもそも、不動こそ鬼道のことを好きなくせに、人のこと言えないじゃないか。本人に確認した訳じゃないが、見ていて何となくそうなんじゃないかと推測できる。鬼道と話している時の不動は、見たこともないような笑顔を見せたりするから。

「不動も鬼道のこと好きなんだろ」
「おま、変なこと言ってんじゃねぇよ」

 否定はしないのか、これはほぼ確定かもしれないな。失恋決定だ。鬼道はたぶん不動のことが好きだから、ああ何という青春だ、反吐が出る。最初はいがみ合っていたくせに、サッカーの力ってか?笑わせるな。俺だって、本当は不動のことが好きなのに。鬼道への好きの何万倍も、俺は不動のことが好きなのに。真・帝国の頃から一緒で、鬼道が不動に惹かれる前から俺は不動に焦がれていた。それなのにこう易々と鬼道の手に渡ってしまうかと思うと、非常につまらない。鬼道への深い敬愛も、一気に冷めていきそうだ。

「鬼道くんのどこがそんなに良いんだよ?」
「逆に悪いところがないだろ」
「あーはいはいそぉですね」

 誰一人俺の気持ちを知らない。みんなして、俺は鬼道に心酔してると勘違いしている。まあ俺も周りに感づかれないように振る舞ってはいるけれど、ここまでバレないとは思わなかった。

「不動、実はな、」
「何だよ?」
「俺、鬼道より好きな奴がいるんだ」

 不動は少しだけ目を見開いてから、すぐにつまらなさそうにへぇと言った。俺なんかには興味もない、か。

「鬼道よりも不動のことが好きだ、って言ったら、どうする?」

 不敵に笑ってみせたが、内心今すぐ逃げたいくらいだった。何で言ってしまったんだ馬鹿か自分は。鬼道と不動が幸せならそれでいいと思っていたのに、人間というのは欲の塊だ。全てを自分の思い通りにしたくて、自分の幸せが最優先で。

「んー…驚く」

 まったく驚いてないように不動は答えた。冗談としかとられてないのかもしれない。やっぱり言うべきじゃなかったよなー、今更引き下がるのは勿体ない気がするけど。

「嘘じゃない」
「何が」
「俺は、鬼道より不動が好きなんだ。お前が一番なんだよ」

 不動は顔色一つ変えない。なんだよそれ、脈なさすぎだろ。相手にもされないとは思ってたけど、俺は真剣に恋をしていたわけだからそれなりに心臓がきゅうっとなった。

「あのさぁ、」

 口を開いた不動にびくりと怯えてしまった。何を言われるんだろうか。こっぴどくフられたりとか。あーあ、これは源田に慰めてもらうしかないな。

「俺の好きな人、佐久間なんだけど、って言ったら、どうする?」

 その言葉を頭の中で反芻させた。そしてやっと理解して不動の顔を見ると、してやったりという風に笑っていた。

「嘘じゃねーぜ?」

 俺は何を言えばいいか分からずにぱくぱくと何度か口を動かして。

「お、驚く」

 結局それしか出てこずに、不動はおかしそうに笑った。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -