最近夜になると必ずと言って良いほど不動が私の部屋に来るようになった。チームのことで相談があると言われれば無碍に追い返すことはできない、と自分に言い訳をしながらドアを開けてやる。ほら、今日もノックの音が響く。ドアに近づき少しだけ開けると不動は中学生には似つかわしくない笑みを浮かべていた。

「何の用だ」
「監督サンに相談があって」

 まるで合い言葉のようなそれを聞いて部屋に招き入れると、不動は私のベッドに直行した。私が思うに、不動は一人で眠れないんじゃないだろうか。不動のまだ15年も経っていない短い人生は消して平坦なものではなかった。それ故に情緒不安定で夜はなかなか眠れず、夜中にこっそり部屋を抜け出し風に当たっていたのを私は知っている。しかし日本代表となってからの練習は厳しくなるばかり、さすがに睡眠をとらないと体が保たない。倒れでもして選手に自分の弱いところを見られるのが嫌だから、仕方なく私に頼っているようだ。

 ただ眠れないから私の部屋に睡眠をとりにくるのだったら案外幼い一面もあるじゃないかと微笑ましく思うだけなのだが、不動は少し厄介だった。

「道也ぁ、」

机で仕事をする私の首に後ろから腕を回し、耳元で甘ったるく名を呼ぶ、そう、こいつはいつも私を誘ってくる。大人しく寝ていればただの子供と何ら変わりないはずなのに、不動はこういうことをしてくるから困りものだ。

「お前は何処でこういうのを覚えるんだ…」
「誰の扶助もなく自分の力だけでガキが金稼ぐのってさ、結構難しいんだぜ?こういうことスるのが一番簡単に金が手に入る方法だったんだよ」

 聞かなければ良かったとすぐに後悔した。知ってはいた、こうして誘われて初めて不動と行為をしたとき、明らかに慣れているようだったから。それでも私は不動の口に、そういう事実を言わせたくなかったらしい。

「なあ、道也」

 理性?そんなものはとっくにない。既に私はペンを置いてしまっている。

「俺を、愛して」

 不動の"愛して"は体を重ねることと同意のつもりなんだろう、だが俺にはそうは聞こえない。散々煽るような表情で名を甘く囁き巧みに誘ったとしても、不動の言う"愛して"はいつだって、純粋にただ愛してほしいと言っているようにしか思えない。一人の子供として、不動は心の何処かで誰かに愛されたいと願っているんだ。そんな不動を私は、本当に愛おしく思う。けれど絶対に言葉には出さない、言葉で表せるような安い愛情なんていらないだろう。だったらとびきり重く深い愛情を与えてやろうと、私は今夜も熱っぽい目を向ける子供をベッドに運ぶのだった。




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