どうして女という生き物はこんなにも柔らかいのか不思議でたまらない。向かい合って座る音無の腕の感触を確かめるように撫でる、ふにふにしていて気持ちがいい、特に二の腕が。

「あの、二の腕はちょっと勘弁を…」
「何で」
「お肉が、その、」
「普通だろ、むしろ細ぇ」

 何で女ってのは大して太ってなくてもすぐに体重を気にするんだ、意味が分からねぇ。だいたい女の二の腕が骨と皮だけなんて気持ちわりいだろ。

「柔らけー」
「ほ、ほら!」
「あのな、二の腕が柔らかいのなんか当たり前だろ」

 俺は音無の腕を少し持ち上げ、制服のシャツの袖に隠れる二の腕の内側に唇を寄せた。

「ひっ!」

 突然のことに色気のない悲鳴を上げた音無は無視して、しっとりとした肌を強く吸った。

「痛っ、い」

 唇を離せば白い肌に赤い痕がくっきりと残って、何かが満たされた気がした。

「うわ、ばっちり痕付いちゃってるじゃないですか…」
「服で隠れるだろ」
「そういう問題じゃなくてですね…むぐっ!」

 こいつは理屈を言い出すと止まらないのを俺は知っているから掌で口を押さえてやった。音無は心底不服そうな顔をしている。

「お前は黙ってりゃあカワイイんだよ」

 そう言えば眉間に皺が寄る。こんな表情は微妙に鬼道くんと似てるところがあるかもな…なんて考えていたら掌に痛みがはしった。音無が噛みついたらしく歯形が薄く残って赤くなっていた。何すんだと睨めば仕返しだと。嫌がらせに深くキスしようとしたが、舌を噛み千切られたらたまったもんじゃない。代わりに俺より少し小さな体を抱き締めた。

「何だか今日はやけに触りたがりですね」

 だって知らなかった、人の体温ってのがこんなにあったかくて心地良いなんて。小さい頃、親の腕に抱かれたり頭を撫でられた記憶はある、だけどそれはこんなにあったかくなくて、もっと冷たいものだった。もしかしたら俺が、若しくは親が冷めていただけかもしれないが。とにかく、もっと音無の温もりを感じたいなんて、柄でもないことを思ってしまったんだ。首筋に唇を触れさせれば音無が息を呑んだのが分かった。悪戯心から痕が付かない程度に吸いつく、背に回る音無の手が俺の服をぎゅっと握った。

「ふッ、ぅ」

 声が出ないよう耐えているのにムラっときて床に押し倒すと、音無は慌てて俺の体を退けようとした。

「何するつもりですか!」
「何かしてほしーの?」
「違います!」

 ケラケラと笑い何もしねーよと言って退くと、音無はホッと息を吐いた。少し乱れた髪を手櫛で直す手首を掴み、そのまま顔を近づけキスをし、噛みつかれないようすぐ離した。

「俺、お前のこと案外気に入ってるぜ?」
「…そんなの、私だって同じです」

 隣の部屋はこの女の兄貴だ。俺が妹を部屋に連れ込んだなんてバレたら殺されるんだろーなと思いながら、俺たちはもう一度唇を重ねた。




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