私は不動と体の関係を持ってる、いつからなんてことはもう忘れた。ただいつもみたく口喧嘩になったときに「犯すぞブス」って言われたのが癇に障ったから「犯せば童貞ちゃん」って言い返したら本当に犯された。抵抗しても無駄だった、不動は男で私は女だから力じゃ敵うはずもなく。それに不動は巧かったし。童貞だったのか違ったのか知らないけどすごく気持ち良くて、それが悔しかったから私は不動の背中に深く爪を立ててやった。初めて行為を終えた後、奴はにやりと意地の悪い笑みを浮かべて「お前処女だったんだな」、やっぱり分かるものなのかと思いながら苛ついて無視したけど、それさえも楽しむように笑う不動が私は確かに嫌いだった。

 その日から私は日常的に不動とセックスをするようななった。ヤる場所はいろいろだったけど大抵は校内。これもあの人のいる部屋のモニターに映っているんだろうか、あんまり嬉しくないな、なんて他のことに気を取られていたら奥深くを抉られて、喘ぎ声が出そうになるのを必死で耐える。自分の嬌声ほど気持ちの悪いものはない。

「他のことを考える余裕なんてあるのかよ」
「う、るさ」
「余裕あんならもっとヒドくしていいのか?」

 不動はよくそんなことを言うけど、実際酷くされたことなんて一度もない。私のナカにあるモノにはいつもゴムがつけられているし、そういうのにあまり知識のなかった私にピルもくれた。挿れる前の愛撫でだってくすぐったいほど優しいもので、薄々気付いてはいたけど不動明王という男は見かけによらず優しい人間らしい。

 そしてこれはただの笑い話なんだけど、私は不動をすっかり好いてしまっている。恋なんてものは知らない、ただ私は無性にキスをしたり抱き締めたり手を繋ぎたいと思ってしまう、愛してほしいと思ってしまう。不動は私が処女だったからかキスをしたことがないと思ってるみたいで、……いや、したことないんだけど、そうだからかキスをしてこない。大事にされてるのかされてないのか分からない、この生温い関係が心地好くて嫌いだ。

「く、…ッ」
「んっ、…ふ、」

 息を詰めて不動がイったのと同時に私も果てた。余韻に浸ることもなくナカから不動が出て行くのを寂しいと感じる私の脳みそは腐ってしまったらしい。

「不動」

 少し掠れた声で呼べば、不動はゴムの処理をしながら青みがかった深い瞳で私を捕らえた。

「もう止めよう、こういうの」
「はっ、何だよいきなり。好きな奴でもできたのかよ」
「うん、あんたが好き」

 正直に言えば不動は一瞬驚いたような顔をして、そして私をまじまじと見つめた。ああ、早く手酷くフってほしい、面倒な女だと、最後くらい優しくしないで捨てられたい。そうじゃないと私はいつまでも、この胸焼けのするような感情に支配されたままになってしまう。

「そういうのはさー、もっと早く言えよな」

そう、それで明日からは何もなかったようにと、そう願ったのに不動は私の頬に手を添えて唇を重ねた。それは舌を絡め合い貪るようなキスじゃなくて、ただ軽く触れるものだった。どうしてこんなことをするのよ、柄にもなく涙が出そうになる。何て残酷な男だ、何て優しい男だ。

「泣くなよブス」
「…ブスって、言う、な、ハゲ……」
「好きでもねぇ女とセックスなんてするかバーカ」

 涙が溢れた、吐き気がするほど幸せで、怖くて、涙が止まらなかった。

「泣いたら更にブスだな」

 親指で涙を拭ってくれる目の前の男がこんなにも愛おしくて頭がおかしくなりそうだと思った、だけどそういえばとっくの昔におかしくなってるんだった、ならばどうでもいいか、と。幸せを噛みしめるのも、悪くない。




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