綱海さんは、とても綺麗な人だと思う。容姿も内面もすごく綺麗で、だからこそ汚したくなってしまう。
「どうした立向居?ぼーっとして」
「あ、いや、…何でもないんです」
綱海さんはよく、用もないのに俺の部屋に来る。別に嫌ではない、というか俺は綱海さんのことが恋愛対象として好きだからむしろ嬉しいのだけれど、何というかまあ、襲ってしまいたくなる。と言っても俺にそんな度胸があるわけもなく、無防備な綱海さんに悶々とするしかない。
「わり、ちょっと水もらうぜ」
綱海さんはごく自然と、床に置かれているペットボトルに手を伸ばした、中身が半分ほど減っているのは俺が飲んだからだ。飲み口に当てられた唇に目がいく、間接キス、なんて、同性間では気にしないのが普通だ、でもさっきも言った通り俺は綱海さんに一方的な恋心を抱いているわけで。その唇が、飲み込む度に動く喉が、全て俺を煽る要素でしかない。ペットボトルにキャップをしながら舌で唇を舐めた。その赤い舌を見たとき、俺の中で何かが切れた。
「っ、ん!」
荒々しく唇を重ね舌をねじ込む、俺、相当余裕ないんだなあと他人事みたいに思った。逃げようとする舌を絡め取り、うっすらと目を開ければ綱海さんはぎゅっと目を瞑っていて、その姿にまた欲情した。苦しいのかドンドンと胸を叩かれ、名残惜しく唇を離せば綱海さんは涙目になっていた。やっぱり、綺麗だ。
「い、きなり、何、すんだ…よ、」
「俺、綱海さんのこと好きなんです、友情とは違う意味で」
「……へ」
「だから、すみません」
俺からの突然の告白に驚いている綱海さんを押し倒す。頭を打ったらしく痛そうにしているところに覆い被さり、首筋に顔を埋めた。強く吸って痕を残せば体がびくりと震えて、それが面白くて何度もキスを落とした。Tシャツの上から胸を弄ると甘い声が出て頭がくらくらした。
「ふあ、ゃ……ちょ、…待っ、たち、むッ、」
鎖骨を噛んだり舐めたりしていたら渾身の力で引き離された、首筋の痕が何とも卑猥だ。綱海さんは上がった息を落ち着かせながら俺をじっと見つめてくる、そんな目で見たってもう止まらない。
「あ、のさ、………俺が下なの?」
その一言ではっと目が覚めた、俺は、何をしようと、ああ……馬鹿だ。
「す、すすすみません綱海さん!俺、その、うわ、ほんとすみません!!」
「や、別に俺も立向居が好きだからいーんだけどよ、まさか自分が下とは思ってなくて」
あれ、綱海さん今、俺のこと好きって?頭が着いて行かなくてとりあえず上から退こうとすれば首にするりと腕を回された。いつもの太陽みたいな笑顔じゃなくて、ずっとずっと大人っぽく微笑んだ綱海さんは、とても綺麗だ。
「続き、シてくんないの?」
「い、いいんですか?」
返事の代わりにキスをされて、明日の練習に響かない程度に抑えないとな、とか、少しでも負担を減らす為にベッドに移動しようか、と思ったけど、欲に揺れる綱海さんの瞳を見てそんなことは全部考えられなくなって。今からこの綺麗な人を汚すのかと思うと、どうしようもなく興奮してしまう自分が気持ち悪かった。